第4話想い

モニカに結界を張ってもらい、夕食後交代で睡眠と見張りをする。

今回は私が最後だった、もう日が明ける、私はもう睡眠は必要ないと判断した。

「代わるぜダイナ」

「キース……もう日が明ける私は良い、君こそ休んで…」

「勇者が寝不足で戦えないと困るだろ?」

キースは私の申し出を受けない、私はそれ程睡眠を必要としないよう調整された。

「キース…私が女だとか気を使わなくて良い、少しの睡眠でも良いよう修行した…」

言葉を選んだ、彼は魔術師故か変に感が良かった。

私の体の事が知らればモニカと衝突するかも知れない、いや、最悪彼がモニカに殺される。

「仲間だからだ、それに次は俺の番だろ?」

そう言うと彼は私の隣に座った。

彼の気持ちが分からない、確かに私は彼の命を救った、当時の私が物語の姫騎士の様な容姿であれば一目惚れと言う可能性もあったかも知れないが、血塗れで酷い有様だったから。

「選考会はほぼ出来レース、しかも参加には推薦状が必要だ、クーンは王族を救った功績で参加したと聞いたけど君はどうしたんだ?」

「ああ……師匠に無理を言って書いて貰った」

彼は頭を掻きながら言う、推薦状が認められるとは彼の師匠は生半可な魔術師では無いという事か……

「師の名前を聞いても?」

「マーシャと言うんだ…もう婆さんのハズなんだが若作りでな歳は分かんねぇ…」

その名を聞いて私は驚いた、魔王討伐に際して優秀な魔術師を調べてる時に知った。

結局は私の意向は無視して、選考会と言う形になった優秀な若者に公平にチャンスを与えたとのことだ、表向きはそうなってる。

「魔術協会を出禁になったと言う、あの女魔術師?」

「詳しくは知らねぇけど……昔協会と揉めたとは聞いた……」

魔術協会を追放した者の弟子が、協会の推薦者を倒した揉めなければ良いが。

「凄い人なんだね」

「師匠には感謝してる、本当にすげぇ魔術師なんだぜ!」

「そんな凄い人の弟子なら、魔王討伐に参加せずともいい暮らしが出来ただろう?」

「師匠にも言われたよ、魔術師としての成功をすてる事になるって……でもよ俺は自分が素晴らしいと思う者に命を使いたかった…」

あの時の私が素晴らしい?血塗れで酷い格好だったのに?

「ダイナは皆んなを護る為に戦うと言った、それを聞いて思ったんだ、此奴が師匠が言っていた魂が美しい人間なんだなと……」

命を助けられた事と言動に感心したということか、しかし魂が美しいなんて大袈裟だ。

ふと私は視線を感じた、モニカが様子を伺ってる、誤解されると面倒なので私はテントに戻る事にした。

「やっぱり少し休むよ、ありがとう」


テントの中には入るとやはりモニカは起きていた。

「魂が美しいとか変わった口説き文句ですね?」

「違うよ、彼は命を助けられた時の事を美化してるだけ、私も休むからモニカも休みなよ」

少しだけモニカにイラッときた。


夜が明ける、私達は質素な食事を取ると歩き出す、今日もキースは荷物をもってくれている。

「魔物も居ないようだし、少し持つよ」

「いや、この辺の魔物ならダイナやクーンが剣で斬った方が良いだろ?」

私の申し出を彼は断わる、確かに下手に魔法を撃つとかえって目立つ、なるほどただ気を使ってる訳では無いのか。

「そうだね、辛くなったら言って」

「おう」

「今日は宿に泊まれる予定だから」

「田舎の安宿ですけどね…」

モニカが余計な事を言う。

「物見遊山ではないのだ、過度な期待はしとらんよ、だが手に入るのなら少々の酒は許して欲しい?」

クーンが飲酒の許可を求めてきた。

旅を円滑に進める為に時として、酒と異性の提供が必要であることは学んでいた。

「飲み過ぎないでね、あと男性はなるべく控えて欲しい?クーンも言ってだけど物見遊山ではないのだから…」

「ほう?男を控えろとは勇者殿も経験が?」

「はい、そこまで!酒と男は経費落ちませんから!」

モニカが止めに入った、神官の前で酒や男は不味かったか?

でも、飲酒も異性との行為も教義には反してないはず、金銭的な問題で釘をさしたのかな?

「あと私達はただの冒険者パーティーですからね?人の助けが必要な場合は私の神官の立場を利用しますから?」

勇者パーティーであることを明かせば歓迎されるだろうが、魔王軍に襲われるリスクがある。

困った時はイシュタル教の信徒の力を頼るといったが、立場を利用するとかモニカもはっきり言うな。

そう言えばさっきの会話に入って来なかったが、キースは酒は飲むのだろか? 

これから先には娼館があるような街も在るが、彼も金銭で女性を買うのだろうか?

可笑しい……何でこんな事を気にするのだろう、命を賭けてるのだ酒と女位許してもいいのに、心がざわつくんだ。














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