第2話再会

「ダイナ最後の二人が決まった」

神官のモニカが私に告げる、彼女は神殿から選ばれた有能な神官であり、戦闘では回復と補助を担当することになっている。

「やはり四人で行くには資金が心配ですね……国王陛下に頼んでくれませんか?」

モニカはパーティーの会計士でもある、彼女は度々金の話をする。

「駄目だな、魔王軍との戦争中で苦しい、足りないなら現地で魔物の肉や野草食べれば…」

「確かに私や貴方は魔物の肉を食しても平気でしょう、特殊な訓練しましたからね?」

私は過去を思い出す、耐性をつける為にあえて汚染された物を食べさせられていた。

元々私は耐性が有ったらしく、魔物を食べても平気だった、今では腐肉を食べても腹を壊すことはない。

「他の人は貴方のように魔物を食べたら最悪死にますよ、足りない分は信徒を頼りますか…」

女神イシュタルの一般の信徒は善良な者が多い、上層部はあれだが……大部分の神官と信者は頼れば手を差し伸べてくれるだろう父のように…。

「そう言えば予想外の結果になりましたね、魔術協会と王立騎士団推薦者が敗北、無名の剣士と魔術師が実力で選ばれましたね」

「態々死地に向かうとは……栄光に目がくらんだか?」

「直接聞いてみては?このあと顔合わせですから……あと人々の前では勇者らしい振るまいを心掛けて、士気に関わりますから!」

私は頷く、名目上は私がパーティーのリーダーで彼女は仲間だが、おそらく彼女は私の監視も兼ねている。

モニカが選ばれたのは単に強いからではない、女ならばどこでも監視できるからだ。

父と共に幼い私を軟禁し過酷な訓練を強制した、魔王討伐の栄光を女神イシュタルの…いや教団の功績にするために、監視などなくても逃げやしないのに、恨んでないと言えば嘘になる。

それでも魔王を倒さなければならない、平和を実現する、自分が最期の勇者になる覚悟だ。


顔合わせの為に城の大広間に呼ばれる、そこには女の剣士と魔術師の男が控えていた。

「国王陛下勇者ダイナ、神官モニカ参りました」

私は国王陛下に挨拶をする。

「勇者よ、共に行く仲間を紹介しよう…剣士クーンと魔術師キースだ、二人共とも勇者挨拶を…」

「剣士クーンだ、よろしく頼む」 

銀髪の美しい剣士はクーンと名乗った、騎士団推薦者を倒しただけの事はある、立ち振舞に隙がな

い。

「キースだ、魔術師をやっている」

その名に覚えがあった魔物の返り血で赤く染まった私を恐れず、護ってやるなどと言った少年だ。

「本来であれば宴の一つでもやりたいのだが、この後も会議でな……すまぬな」

そう言うと陛下は去っていった。


取り敢えず城の中では落ち着かないので、自分達の泊まってる宿に移った。

二人の為に新たに部屋を取った、モニカは二人共女だったら安くすんだのにと嘆いていた。

そのせいか彼らの部屋は私達より安いらしい、それでも個室だから良い所もあるだろうが。

取り敢えず私とモニカの部屋に集まってもらった。

「どうして勇者パーティーに志願したの?必ず勝てるとは限らない…命を掛けるほどの思いがあるの?」

「俺は昔ダイナに助けてもらったからな、借りを返すついでに世界を救うってとこだな!」

「そう…才能ないから辞めろと言ったのに…」

「ああ、だから師匠に頼んだんだ勇者を護れる魔術師にしてくれってな……」

「借りを返すついでに世界を救うか……面白い男だな…」

クーンはキースの言葉に笑った、普通は逆だ、世界を救うために勇者を助ける。

だが彼は私を護ること自体が目的そのものだ。

「クーンはどうして志願したの?」

「魔王軍に故郷を滅ぼされた」

「復讐か……」

「約束する……私怨よりも魔王討伐の使命を優先させる…」

「二人の覚悟はわかった、明日の朝王都を出発し魔王軍との最前線に向かう」


戦線は膠着状態だった、魔王軍は魔物を主戦力とし、人間側は騎士団を主体としていた。

「あと少しの辛抱だ、勇者様がいらっしゃれば勝てる!」

指揮官の男は皆を鼓舞する、勇者さえ来れば逆転できる皆はそう信じていた。


戦場に魔物の死体が放置されている、死体に一匹の虫が卵を産みつける。

虫は力を使い果し死んだ、すると卵が羽化し無数の幼虫が蠢く、死体を食い尽くし、成虫になり、産卵をする、尋常ではない生と死のサイクル…

際限なく増殖していく、彼らに意志はない、ただプログラム通り行動する、人を喰らい尽くす、ただそれだけの為に虫たちは生と死を繰り返した。









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