第4話 亜人の能力は近くにいるだけで発生するものもある。

 あれから1週間が経った。気力も溢れんばかりにたぎっている。

 実際、勉強の集中効率が格段に上がっているし、記憶力も増している。


 そしてハルトくんは吹っ切れたようで毎晩私の誘いに応じてくれるようになった。

 10代後半の性欲は素晴らしいと思う。

 しかし、思うのは、私の、この体、生理というものをしたことがないのだ。

 齢19にして初潮すらないとは、全く摩訶不思議であるぞ、我が体よ。


 もしかして淫魔って妊娠しない?

 と思って検索してみても、そもそも亜人は異性と交われないので意味がない。

 そりゃあ、子作りイコールイコール犯罪なのはわかるけど、ちょっとぐらいあっても良くない?


「むむむ……」

「あの……」

「どうしたの? ムラムラしちゃったのかな?」

「いえ、その、そろそろ運動とかしてみたくて……」

「却下!」


 何を言い出すんだハルトくん!

 転ぶだけで頭蓋骨が折れる種族に運動なんてさせるわけないだろ!

 運動なら毎晩やっているじゃないか!

 ほら、腰回りとか結構筋肉ついてきてるし……。


 私を持ち上げてる時もあるから結構筋トレになってると思うし。

 何より酸欠でも普通に死ねちゃうわけだし……。

 ん? というか待てよ……あれ? 亜人保護特区って確か……?


「あああーー!! そうだ! 空気循環エアロゾル!」

「急になんですか!?」

「確定! えぇ!? うっそぉ! いや、まだ仮説段階だ……」

「えっと……?」

「来週! 私の友達の家に行くよ、『悪魔』の!」


 私の急な発言にハルトくんは困惑の表情をする。

 そしてじっくりと言った言葉を噛み締めると、『悪魔の家に行く』の意味を理解したようだった。


「淫魔ではなくて?」

「悪魔だよ。悪い魔の者と書いて悪魔だよ」

「いやでも、淫魔と悪魔じゃ性質が違いますよ! 僕死んじゃいます!」


 ここまでは概ね予想通りの返答をしてくれた。

 最後の詰めと参りますかね!

 私は微笑み、語り始めた。


「実は亜人保護特区では空気の循環・浄化が特区内で行われているんだ。

なんでかわかるかな?」

「知ってはいましたが……この『外層』も範囲内なんですか!?」


 亜人保護特区は聳え立つ『塔』を中心とした結構大きめな地区。

 市町村で言えば市を名乗れるぐらいの大きさと人口がある。


 そしてその『塔』におわす特区内の亜人にも名を知られていないヤバイお方の能力で空気循環を特区だけで完結させている。


「そう、何が言いたいかというと、ハルトくんは悪魔の能力、『瘴気』を1週間受け続けても、私とエッチできるぐらいには元気なんだよね」

「しょ……『瘴気』」


 悪魔の能力のひとつ、『瘴気』。

 触れたり一定範囲内の亜人以外の動物の『魂を吸い取る』。

 そして一定量吸っても正気を保った人物にあらゆる願いを叶える、それが悪魔。

 この能力ゆえに悪魔は特区第二層以降に住むことを義務づけられている。


 第二層以降の層では全員、瘴気に似た能力をデフォルトで持ってる。

 『第一層』……外に露出しているから、通称・『外層』はこれを持っていない亜人が住める。


「で、でも! 範囲に被ってないだけとかって……」

「確かにその可能性はあるね。でもさ、そうじゃない可能性の方がよっぽど高い」

「……わかりました」

「よし! じゃあ掛け合ってみるよ!」


 さすが日本人、頼みこまれたらNOとは言えない国民性を持っておりますな。

 私はスマホを取り出して『彼女』にメッセージを送る。


 今思ったけど、なんで亜人って女しかいないんだろうね?

 まあ、亜人の男が生まれていたら今頃人間の女の子は怯えて過ごす羽目になるか。


「よし、送信完了! じゃあ来週、行こっか。第二層へ!」

「……」


 ハルトくんは行きたくなさそうな顔だったけど、もう約束しちゃったからね!


【あとがき】

次回はハルトくん視点になります。

良ければ、星、フォロー、ハートでの評価をお願いします!

モチベーションにつながります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る