第3話 亜人の学生は基本的に通信教育でしか学べない。

 そんなこんなで『朝ごはん』をもらった後、パソコンを立ち上げ大学のサイトにアクセスする。今日見る講義の時間帯はっと……などと思いながら後ろを見ると、ハルトくんが真剣な面持ちでスマホと睨めっこしていることがわかった。


「どうしたの?」

「えっと……退学する手続きを……」

「んふふ」


 律儀に約束を守ってくれているようでよかった。


「ハルトくんはさぁ……」

「え? なんでしょうか」

「何回、出せるの?」

「出すって……」

「そこら辺も実験してみよっか。ね?」

「うぅ……はい」


 かわいい♡ ハルトくんと出会えて本当によかった。

 そして私はパソコンの方へ戻り、講義を受け始めたのだった。


 普段は退屈で単位を取るためだけの講義もハルトくんを養うためなのであればやる気も段違い。ヒモになって欲しいと言った手前、働けとは言えないからね。


「12時……ハルトくん。お昼ご飯にしよっか」

「は、はい」


 ハルトくんは私の体質を知っているからか赤面する。

 料理を作るのはハルトくんの分だけ。けれど2人で食卓を囲む。

 今の私は別にそういった欲求は無い。どれだけ我慢できるかの実験でもあるのだ。


「いただきます」

「召し上がれ♡」


 味見すらできなくなった味覚だけど大丈夫かな?

 いっつも目分量だから、味が薄かったり濃かったりしないかな?

 計量カップとかレシピ本だとか買えば良かったなぁ……。


 なんて大学入試以上のドキドキをしながら感想を待つ。


「美味しいです」

「ホントに!? 濃くない? 大丈夫!?」

「はい。というか今までがコンビニ弁当だったので……」


 『美味しい』という言葉を聞いた瞬間、私の心が幸福な気持ちて溢れ返った。

 ハルトくんは食べ終わった食器類をシンクに置いて、水に浸してくれた。

 すると、なんだか顔を赤くしている。


「ははーん?」


 私はテーブルの下を覗き、彼の股間辺りを見る。


「へぇ〜?」

「あ、その……」

「想像しちゃったんだ。『お昼ご飯』って言ったから」

「別に良いので……勉強、戻ってください……」


 私は、気味悪くニチャアとゲスな笑みを浮かべ、そのままテーブルをくぐる。

 そうして私は『お昼ご飯』を食べたのだった。

 まあね? ハルトくんが大変そうだったしね? 我慢できなかったとかじゃないよ?


 そんな夢のような時間は、アラームと共に終わり現実へと引き戻される。

 つまりは、学生の本分をしないといけない時間なのだ。


 私の通っている大学は亜人のみが入れる、『国立亜人大学』だ。略称は亜人大あじんだい

 亜人保護特区から出られない都合上、学歴社会である日本を生き抜くためには、

 ここに入学するしかない。というかここにしか入学できない。


 と言っても入学条件は『亜人である』。ただそれだけ。

 学力とかは一切必要なく、入試の順位に応じてクラス分けが行われる。

 私が所属しているクラスはAクラスと呼ばれる、

 上からふたつ目に頭のいいクラス。


 亜人大における学歴とは、このクラスによって決まる。

 履歴書に書くのであれば『国立亜人大学 普通科 Aクラス 卒業』となるわけだ。今までの私であればそれで良かったのかもしれないが、今はハルトくんがいる。


 つまるところ、私の進路はこれで確約されたようなもの。

 テレワークができて、ハルトくんを養える程度に給料が高い職場。

 それを目指すためには最上級クラスの『Sランク』の壁を突破しないといけない。


「よしっ、頑張るぞ!」


 年に1回ある必修受験の昇格試験。そこでクラス上位10%になれば昇格できる。

 そして、下位10%は1つ下のクラスに降格する。

 最下位のクラスであるFランクは降格しないが、就職がとてつもなく不利になる。


「とにかく、勉強に次ぐ勉強をしなきゃ。他の淫魔の助けを借りることになっちゃう。これだけは絶対にダメ。バレたら最後、拡散されて独占できなくなっちゃう」


 何より彼は2回で終わった。精力的には普通の人間と同じかちょっと少ない程度。

 彼が単純に淫魔に耐性があるだけの一般人でしかない。

 創作物によくある無限の精力を持っているわけでも無く、力が強いとかでもない、普通の人でしかないんだ。だからこそ、信頼できる人だけで共有するしかない。


 淫魔以外の友人か……確かに数人いるけど、ハルトくんの耐性がどう言った作用で起きてるかもわからないし、そもそも淫魔以外の亜人の能力が効かないとも限らないしなぁ。

 などと思いながら講義の内容をノートに取ったり、覚えておくべき図が出るとスクショしたりする。


 亜人大で学ぶのは基本的な必修科目に加えて『人間と亜人の差異Iいち』が追加で加わっている。あとは進級・卒業できるように単位を計算して選択して終了って感じ。まあ、普通に暮らしてたら難なくこなせる内容だ。


 そうして、今日の講義が終わって、お風呂に入って、夜ご飯を食べて、お風呂に入って、朝焼けが見えるぐらいに寝たのだった。


【あとがき】

フォロー数と星の数が合わせて30以上になったので、ランキング入りの条件が満たされました! 嬉しい! 


1番見てもらえる時間帯を模索中ですので、投稿する時間帯がバラバラになります。ご了承くださると嬉しいです。引き続き、良ければ評価もお願いします!

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