第2話 淫魔は性的栄養を摂取するとそれ以外を受け付けなくなる。

 あれから一夜が経過した。

 横には名前も知らない彼がスースーと寝息を立てている。


「やっちゃったんだなぁ」


 不思議とみなぎる体を起こして、朝食を作りにキッチンへ向かう。

 エッチをしても彼は生きている。それだけで私は嬉しくなっている。

 学校に通っているのであれば退学させ、社会人であるのなら退職させよう。彼はヒモになり続けて欲しい。私無しで生きられない体にしてあげたい。


「ふんふんふ〜ん」


 陽気に鼻歌を奏でながら2人分の朝食を作る。


(今思えばあれって完全に強姦だったよね?)


 などと自問自答してはみるが、現状の日本国では女性からの強姦は無罪だ。男女が協同してヤるのは罪になるが、女だけであれば罪に問われない。だから大丈夫。

と、思いたい。


「おはよう……ございます」

「おはよう! どうだった、私は?」


 名も知らない彼は顔を赤く染め、口をモニョモニョさせている。かわいい♡

 出来上がった朝食を皿に乗せ、テーブルに運ぶ。

 彼を席に促し、ちょっとした世間話も兼ねての朝ごはんが始まった。


「いただきます」

「いただきます……」

「でさぁ、聞き忘れていたんだけどぉ……貴方の名前を教えて?

 あっ! 私は雪宮セナ! 19歳の大学生!」

「……」


 むぅ……手強い。まぁいいや、ならばこちらも持久戦に徹しよう。

 適当にトーストでも齧りなが……ら?


「!? ちょっとごめんなさい!」

「え?」


 急いでシンクの方へ向かって齧ったパンを吐き出す。


「ぺっ! えっ!? まっず……は?」

「だ、大丈夫ですか!?」


 彼は心配して私の下へ来てくれたようだった。好き♡

 いや、惚気のろけている場合じゃないぞ雪宮セナ! どういうことなんだ?

 その時、私の中に浮かんできた殺人犯の死因……。


「もしかして、精液以外食べられなくなっちゃった?」

「え!?」


 彼は口を半開きにして驚いた表情を固めた。

 いやでも、水は飲めるし、目覚めのコーヒーもいけたのに。ご飯だけ?


「そりゃあ餓死するわ。とんでもねぇ贅沢をしちまったようだなぁ、私は」

「一体何が起きたんですか!?」

「君にさぁ、良い話あるんだけどぉ、聞いてみない?」


 私は事の顛末を話した。予想できる範囲で放つ言葉に、彼の顔が青ざめていく。

 そして、『良い話』の内容を彼に伝えた。


「だから、貴方は学校か社会人かどっちか知らないけど辞めてもらいます」

「嫌です。ようやく大学でも友達ができ始めたんです。『同じサークルに入ろう』と約束しているんです。それに……」

「それに?」

「学費は全部僕から出しているので、お金の無駄だと思うんです」

「何万? 私立? 貯蓄あるから全額出せるよ? 吹っ掛けても問題ないぐらいには」


 拒否する反応を一蹴する。貯蓄があることは嘘ではない。亜人保護法の支援金が結構余っているからだ。


「あとさ、本当に学生なら学生証見せてよ……」

「はい」


 えーと、大学名は……スルーして容赦なく名前を見る。

雲原くもはらハルト』くん。これから旦那様になる人の名前。

 年齢は18歳、誕生日は3月23日。血液型はO型。なるほどね。


「ありがとう。君が学生ということは理解できました」

「じゃ、じゃあ!」

「でもダメ。ハルトくん、私は貴方を一生養ってあげます。なので学歴とかも心配しなくていいんですよ。食べたいものがあるのでしたら買います。欲しい娯楽があるのでしたらそれも買います。ムラついたら勝手に私を使って下さい。ヤらせろと言ってくれれば対応します。むしろ淫魔なので使って下さい自慰だけはやめてください!」


 大学の所在地を見たところ隣の市にある大学であることがわかった。

 電車が運行止めになったらその時点で私はその日は絶食を余儀なくされる。


「自分で言うのもアレですが、私は美人の部類に入ると思います。ですよね?」

「……まあ、はい」

「つまり貴方は働かず、好きなことだけして、私の体を自由にできるんですよ」

「……」

「私はこの時点で寿命が30年減りました」

「え?」

「貴方以外を喉が受け入れなくなってしまったんです。貴方の性欲が尽きたら私はその1週間後に餓死してしまうの。なので、どうか、どうか、お願いします!」


 もはやなりふり構ってられない。地面に額を擦り付けて赦しを乞う。

 恋心的な意味合いもあるが、死んでしまう可能性があると言うのがどうしても怖い。


 ……あと単純にエッチしたい。男性器以外の異物を全て溶かしてしまう私の体が怖い。

 それと他の亜人に自慢したい。

『お前らはダーリン捕まえられましたかぁ〜?』って自慢したい。


 ……っと私利私欲も混じってしまったが、どうだ?


「顔を上げてください。わかりました! 大学辞めます!」

「っっしゃあ! よろしくねぇ!」


 私は彼氏候補を獲得した! 夢のイチャラブ生活への一歩を踏み締めたのだった!




【あとがき】

1話にして二桁フォローを獲得しました! 嬉しい! しかも応援ハートまで!?

モチベーションがすごいことになっているので隔日投稿のところを1章の間は毎日投稿にします! 良ければフォロー、星、応援ハートでの評価をお願いします!

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