第11話 事の重大さ

その後私は禁術の本を係員さんに渡し

その係員さんに悲しみのアヤについても伝えた。

係員さんは驚きながらも私の身を心配してくれた。優しい。

そして私は、改めて事の重大性を思い知ったのだ。




寮部屋の自分の机に紙と羽ペンを置き

これから起こるイベント整理をする。


まず、一番最近起こるであろうイベントは「四天王襲撃イベント」

攻略対象との親密度がそれぞれ30を超えた辺りで発生する襲撃イベントで

四天王が一人「快楽のイリ」が、将来魔王の敵となるであろうヒロインを殺すために、この学園にたった一人で攻め込んでくるのだ。


快楽のイリは四天王の中では最弱だが

肉体戦よりも魔法戦を得意としており、私たち人間が生涯をかけて学ぶ大魔術を

これでもかというほど使いまくる。

魔族は元こそ人間だが、魔族となった瞬間に人間以上の体力・魔力を授かる。

快楽のイリはその中でも特に多くの魔力を保有しており

接近戦こそ苦手だが、その魔法のコントロール力や大魔法で

数々の勇者が打ち取られてきた。

この時攻略対象の中で最も親密度の高い人が致命傷を負い

ヒロインであるレンが光魔法の才能を開花させ、攻略対象の傷を癒し

快楽のイリを撃退する。


そしてこのイベントで、スイは初めて四天王と出会うのだ。


(悲しみのアヤが禁術の本を持っていた…スイちゃんが闇落ちしたのは

魔王軍の作戦ってこと?)


スイちゃんが禁術に手を出してしまったのも

スイちゃんが魔王に認められたのも

全部、魔王の作戦だった―――?


『ヒータさんの髪色は、きれいですけど?』


正直なことを言ってしまうと、私はあの言葉が信用できなかった。

それは前世の私の人間不信と、ヒータ・レカリウルの過去のせいだ。

それでもスイちゃんは、私と仲良くしてくれた。

前世も含め初めての「友達」になってくれた。


(友達も守れなくて―――何がレベル99だ)


私は確かに決めたはずだ。

一年前、レベルを上げる理由を。


攻略対象全員を幸せにするために。

本当のハッピーエンドを目指すために。


(スイちゃんが禁術に手を出さないだけじゃだめだ。

魔王に合わせたらいけない。

スイちゃんを守るんだ。私が。

スイちゃんだけじゃない。攻略対象全員を、私が守る)


決意を固め、改めて紙を見直す。

(ところで…襲撃イベントっていつだったかな)

今が春の月の40日。

月は全部で4種類…春の月、夏の月、秋の月、冬の月。

それぞれ50日構成で出来上がっている。

(えーっと、たしか襲撃イベントは…)


春の月の43日。




(三日後じゃん!)


なぜもっと早く気付かなかったのか。

ヒータは過去の自分の能天気さを恨むのであった。

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