第6話 断罪ルート直行ですか?
レベル鑑定が終わり、学校では学年別パーティーが行われていた。
私も真っ赤なドレスに身を包み、会場の隅でダンスを見ている…。
心の中は灰色を超えて真っ黒だ。
(目立っちゃったよ…。前世陰キャの私が…悪目立ちしちゃったよ…)
どうしよう。もしこのまま王子やヒロインに目の敵にされて
断罪ルート直行になっちゃったら…。
「すみません、そこのレディ」
「…?」
振り返ると、柔らかな金髪が目の端に映る。
「はじめまして。ヒーラル王国の第一王子、ヒーラル・ユーアと申します」
「カヒュッ…」
この国の第一王子であり、攻略対象のヒーラル・ユーアが
こちらを見て柔らかく微笑んでいた。
周りからすごく注目されている。王子様と言えば、周りからキャーキャー騒がれているイメージだが、逆に静かになっているのは、周りの者が立場をわきまえているからこそだろう。それこそ、周りの人たちは心の中でここぞとばかり叫んでいるに違いない。
もちろん私もその一人だ。
(キャー―――!!!断罪ルート直行ですかーーー!?)
なお、他の女子と違うのは、あくまでも王子の外見や地位に叫んでいるのではなく
この後自分の身に起こるであろう悲劇を想像しての恐怖の悲鳴だということだ。
周りの女子が顔を赤くしてうっとりと見つめているユーア王子を
ヒータが顔を真っ青にして震えながら見つめていると
ユーア王子は相手を安心させる笑顔で話しかけてきた。
「ヒータ嬢、どうやらレベルが99だったとか…。こんな美しく可憐な女性が
レベル99だとは、到底思えません」
美しいエメラルドの目が、不正をしたのだろう?と、私に訴えてくる。超怖い。
(怖い怖い怖い!怒ってないのに怖い!美形怖い!いや顔いいな!?
王子エフェクトかかりすぎだろ!キラッキラだわ!)
「ヒータ嬢、今一度、レベルを鑑定してみませんか?何かの間違いかもしれません」
「ハッ!レベル99なんて、嘘に決まってるだろ!どうせ不正を犯したのだ!」
後ろから元気な声がする。いやだ。振り向きたくない。
しかし、振り向かなかったら嫌な予感がぬぐえない。
恐る恐る後ろを振り返ると―――
赤黄色の目と目が合った。
ガタイの良い筋肉質な体は、私よりも頭一つ分ほど大きい。
緋色の髪は少しぼさぼさだが、これでも国の東部辺境伯の中では最も大きな土地を持っている、カララ公爵家の跡継ぎである。
カララ公爵家の跡継ぎ、ガウラ・ダーズリー。
なお、カララというのは土地名であり、家名とは関係ない。
え?なんで私がこんなに知っているかって?
…察してよ(泣)
まず大前提として、ガウラとユーアは幼馴染であり、親友だ。
ついでに、過去にユーアが殺した幼馴染とは違う人。
ゲームルートでは、ユーアが過去に犯してしまった罪を唯一知っているという設定の親友で、もう一人、エイリというキャラクターを合わせて、メイン攻略対象となっている。
ついでに、ユーア、ガウラ、エイリの三人は旧知の仲で
ゲーム内でもお互いを呼び捨てにして呼び合っているほどだ。
まあ要するに…
(ここにガウラがいるってことは、本気で断罪直行ルートなんですかぁぁぁ!?)
やばい。このままだと本格的にやばい。
(ん?待てよ…確かゲームでも、こんな感じのシーンあったな…)
確か、ヒロインがジュースを持ったまま私にぶつかって、それを私が責めているときに、ヒロインを救いに攻略対象三人が…。
攻略対象三人が…?
「ガウラ!ユーア!どうしたんです?そんなところで騒いで…」
(そうですよね!二人がいたら三人目も来ますよね!)
私より少しだけ高い身長、女性的な顔立ち。
藍緑の髪と群青色の目を持ち合わせるこのお方、間違いなくエイリである。
なんとこの方、王の相談役にもなれるという超賢い博識の家系の次男であり
ゲーム内では頭脳派担当天才系アイドルとしてファンから崇められているのである。
多少病弱ではあるが、その頭の良さはレベル99の私でも敵わない。
(どうしよう!揃っちゃったよ!攻略対象!)
ヒータの身に危険が迫っていることは、本人以外知る由もないのであった。
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