第5話 入学式

二年後。

あるはずだったイベントを自分の意志でスキップし、ついにセントエール学園の入学式が始まった。

順序としては、前世の入学式とあまり変わらなかった。

どちらかというと、貴族校のため両親が来る生徒が少なく、見た目としては前世の入学式よりもしょぼかった。

この学校のルール、生徒会からの挨拶、校長先生の話…

そして、レベル鑑定。


レベル鑑定とは、学校に入学してから一番最初にある行事である。

このレベルによって、クラスが分かれる。

ある意味、一種のテストのような物だ。

ほとんどの人がレベル1であり、攻略対象はレベル10を超えている。


「ヒータ・レカリウル、前へ」


言われた通り前に出ると、当たり前のように注目をあびる。

腰まで伸びた紫の髪に、視線が集まる。

(まあでも、今からは攻略対象の方が視線が集まるだろうし、問題ないよね)

正直、この世界に来てから、髪の毛に注目が集まるのは当たり前になっているし

それに対してはあまり気にしていない。


しかし、私が気にしているのは、周りの目線でも自分の髪色でもない。


今になって気づいたのだ。レベルは、魔物を倒した経験値で上がるという事実に。

私は今になるまで、永遠と光属性の魔物が湧き出るスポットで訓練を続けた。

ほとんど不死身の光属性である魔物が一度に3体出る場所に、一日一回行き

三体すべてを倒し、次の日になったら復活している光属性魔物をまた倒し…を繰り返し、今日この日まで約365×2…730日。

さらに道中に出会った魔物を属性関係なく皆殺しにしてきた約2年。

レベルの最高上限が99。平均で一週間に一回レベルが上がっていると仮定した場合…

絶対数字がおかしいことになっている。


レベル鑑定の方法は簡単。特殊な水晶に手をかざすと、魔力量・筋肉量・体力などの数字の平均値を基にしたレベルが水晶に浮かび上がる。

つまり、私がすることは水晶に手をかざすだけ。

しかし、どうしても水晶までの道のりが長く感じられ

あげる腕が重く感じられる。私の腕は鉛で出来ていたのか。

水晶を前にプルプルと震える私を見て、気を使ったのか校長先生がにっこりと笑いかけてくれた。

「心配しなくても大丈夫だよ。最初はみんなレベルが低いものだ」

違うそうじゃない。

「そう…ですね」

ゆっくりと腕を持ち上げ、淡い空色の光を放つ水晶に手をかざし―――

ピロリン♪と、ケータイに通知が来たような音が鳴ると同時に、水晶にゴシック体の数字が表示される。


(ああ…レベル上げ、レベル鑑定してからすればよかった…)


私が今更水晶に表示された数字を隠しても意味がないだろう。

暗い顔をした私を、校長先生は心配そうにのぞき込み、水晶に表示された数字を見て、たっぷり3秒も固まった。


さて、もう一度言おう。

レベル鑑定とは、学校に入学してから一番最初にある行事である。

このレベルによって、クラスが分かれる。

ある意味、一種のテストのような物だ。

ほとんどの人がレベル1であり、攻略対象はレベル10を超えている。

「ヒータ・レカリウル―――」

つまり、この数字は明らかな”異常値”なのだ。

「レベル、99」

まさか最初からレベルがカンストまでいき、目立ってしまうという事態は

前世を含んだ私の中でも、最大級の誤算だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る