第10話 続けろ

 ブレイブロワイヤルに初めてログインした、次の日の朝。

 僕は大きなため息をつきながら登校していた。


 昨日は結局、誰からも勇陽のことを聞き出すことができなかった。

 あいつが馬鹿にされてると思うと、つい熱くなってしまう。

 反省しないといけない。


 わかったことは、間違いなく勇陽はあのゲームを1ヶ月前までプレイしていたこと。

 カナホと組んで大会を勝ち進んでいたということだけだ。

 

 僕の前からいなくなって、のんきにゲームをしていたという事実には複雑な思いがあるが、少なくとも1ヶ月前までは無事だったんだ。

 今はそれでよしとしよう。


「おはよう、心野君」


「おはよー、委員長」


 前の席に座っていた委員長がにっこり笑って挨拶してきた。

 それだけなのに、周りからうらやましそうな視線が浴びせられる。

 やれやれだ。


「ん?」


 席に着いたところ、机の中から折り畳まれた紙切れが一枚出てきた。

 学校から配られたプリント類では無いはずだ。

 昨日はたしかに机を空にして教室を出た。

 つまり昨日の放課後から今朝の間に誰かがこれを入れたんだ。


 ラブレター……なわけないよな。

 そういうのは、勇陽か委員長の専売特許だ。


「委員長、誰か僕の席いじった?」


 そう尋ねると、彼女は不思議そうな顔をしていた。


「いいえ? ……どうかしました?」


「いや、ならいいんだ」


 ともかく、何の飾り気もないコピー用紙にラブレターを書く女の子なんかいないだろう。

 怪訝に思いながらも紙を開くと、書かれていたのはたった2行。




『そのままゲームを続けろ』




 心臓が飛び出そうになった。


 ……意味がわからない。

 いや、書いてあることの意味は明白だ。


 『ブレイブロワイヤル』をそのままプレイしろ、ということだ。


 ……だが、待ってくれ。

 混乱する頭を、必死に落ち着かせる。


 僕は昨日のことを誰にも話していない。

 僕があのゲームをプレイしたことを知っている人間はいないはずだ。


 ゲーム内で会った人たちも、僕がユウヒを操作していることなど知らないはず。

 そもそも、知っていたとしても現実の僕に干渉する術など無いのだ。

 まったくわけがわからない。


 そして手紙の2行目を見た瞬間、今度こそ心臓が止まるかと思った。




決勝大会ブレイブチャンピオンシップスで優勝すれば、親友に会わせてやる』




 僕に、『ブレイブロワイヤル』というゲームを真剣にプレイする気にさせるには、充分な内容だった。

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