第9話  披露宴で疲労するって


厳かとは程遠い中、僕たちの結婚式は終わった。

何度も邪魔が入るというアクシデントも、きっと良い思い出になるだろう。


「お兄ちゃん、なにカッコよく締めてるの?」


「はい、すみません」



ここは僕が暮らす家。

双方の家族と、友人たち。

みんなが思い思いに持ち寄った食料等で今は二次会の真っ最中だ。


今日の主賓はあくまで花嫁。決して花婿の僕ではないはず。だよね、たぶん。


「さて、宴もたけなわとなっておりますが、ここに第一回雫糾弾集会を始めていと思います」


わーぱちぱち


アチラコチラで拍手が上がる。

大人たちは向こう側でお酒飲みながら談笑をしている。

未成年の僕らはここで糾弾集会が始まろうとしていた・・・うう、帰りたい。


あ。帰るとこないわ。ここ自分の家だった


僕がそんな事考えていると、妹が立ち上がり深々と頭を下げた。

つられて僕も頭を下げる。


「この度はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。

さて、我が愚兄は知っての通り些事に疎いです」


「そうなの?」


「さあ」

でもそんなに疎いとは思ってなかった。


「でもね、でもねあたしはこれもらってすっごく嬉しかったんだよ」


「そうでしょう、そうでしょ。選ぶの大変だったんだから」


僕は元カノが指にはめた指輪を見てしみじみと語った。


「バイトもきつくってさ。半年のバイト代全部つぎ込んでようやく買えた」


「ええーやっぱりそんなにするんだ」


後輩ちゃんが頬を赤らめ、うっとりとした表情で自分の指輪を見つめる。


「でもさ、高校生だと相場は数千円から2万円くらいって聞くよ」


「え、そうなの?」

もっと早く知りたかった。


「ねえ、それでいい加減教えてくらない?」


僕がちかちゃんに贈った指輪は母が代々受け継いでいたものを再直ししたやつ。

婚約指輪は新しいのを買ったけどね。


正面に妹 右隣には元カノと後輩ちゃん。その正面に彼女の元カノ。そしてその側にちかちゃんと僕。テーブルをはさみ、集会という名の忘年会でも会った。


僕はここっそりちかちゃんに耳打ちした。


「ふんふん、ほほー」

だんだん表情が険しくなってきた。

しまいには呆れ顔で、「さされないように気をつけようね」と本気で心配された。


「これだから無自覚イケメンは・・」

とかブツブツ言ってるの聞こえてますよ。僕イケマンじゃないよ。


「給料の三ヶ月分って言ってもバイトだからそんなには出来ないんじゃない?」

流石です。お嬢様の金銭感覚だと、お小遣いですね。


「えーっと、藤原さんのが20万円で、紬希ちゃんのが21万円だったかな」


僕がそういった瞬間変な空気が流れた。

呆れ顔の者が多数で、プレゼントを貰った2人は急に真っ青になった。


「ええーそんなにしたの!」


「これ貰えないよ! 」てっきり5万くらいかと思ってた。


「いやそれでも高校生としちゃ高いでしょ。

「雫くん。これからはあたしがみっちり金銭感覚を身に着けさせるからね。当然家

計の財布はあたしが管理するから」それはいいんだけど


「おこずかいは?」


「月3千円上げましょう」

それなら大丈夫です。基本使わないし。

「へ、いいんだ?」はい、自分では使わないんです。


「あのう、これ返そか?」


藤原さんがプルプルした手で指輪を差し出した。 

ぼくは頭を振る

「それは二人に上げたものです。大事に持っていてほしいです」


これは感謝の印。ちかとの出会いを作ってくれた彼女たちに。


「いいんじゃない。もらっておきましょう。」


「そうですね。縁結びのごリア役ご利益もありそうだし」


「そうですか?」 妹よ 君は少し黙ろうね。ここいい話だから。



「じゃあ、ありがたくもらいます!」


「ありがとうございます!」


「大事にするね。後から返せって言っても嫌ですからね」


流石にそれはないから!


「えへへ、でもこれってやっぱり愛だよね!」はい、無償の愛です。


「そっか、雫の愛なんだ」確かに愛は残ってます。チロルチョコ位のには


それから彼女達は、大切にそれを付けて静かに微笑んでいた。

付き合っている時にあげることがなかったから。


『こんなに喜んでもらえるなら、もっと早くあげたら良かった。それこそ付き合っているうちに』


ぼんやりとそんな事を考えたたら、ちかちゃんに脇腹を小突かれた・・・なんで


「そういうとこだぞ!これ見て反省しなさ」・・・鏡?


鏡を見ると謎のイケメンが嬉しそうに微笑んでいた。


「むやみやたらと愛想振りまくのも禁止!」

そう言って、彼女たちの方を見るとふたりとも頬を上気させ、満面の笑顔で僕の方を見ていた。


ぱんて背中をちかさんに叩かれる。

「優しいとこも好きだけど、次からはあたしだけにしてよね」


はい気をつけます。


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