第7話  もうすぐ結婚式だと言うのにドタバタしてます

大学入試を控えた僕達は、簡素だけど結婚式をすることになった。


呼ぶのは身内のみ。


「もちろん、あたしも呼ぶんだよね!」


「ええっ、来たいんですか?」


当然でしょとばかり、元カノはそう言って僕の腕を叩く。


「大丈夫大丈夫!花婿強奪はしないから!・・・まだね」


最後なにか不穏だったけど、聞かなかったことにした。

うん、僕は何も聞いていない。



*


そして、

買い物するから手伝ってと、放課後荷物持ちをする僕。

結婚式では何着ようかなーっと楽しそうに選んでいるしている。


「なに?」


後輩ちゃん出る気満々です


「結婚式って出たかったのよね」

ふひひ


変な笑い方ですが、この際良しとしましょう。


*


翌日

僕は受付に座った妹に声をかけた。


「今日はよろしくお願いします」


「当然です。これも大事な役目ですから」


そう言って満面の笑みを浮かべてます。


何故か足元にある紙袋から、太いロープと、手錠のような物が見えます。


「・・・なに?」


「いや、なんでもないです」


うん、見なかったことにします。





「準備はどうですか?」


「あーこら!こっち来ちゃ駄目だって言ったでしょ」


プンプン文句を言う母を尻目に、僕はその人に目を奪われた。

純白のドレスがこんなに似合う人っていないと思う。


「・・・綺麗だ」


椅子に浅く腰掛けた花嫁さんは、僕に気づくとぱっと微笑んだ。


「どうかなーえへへ」


照れている彼女もとても可愛くて、僕は倒れそうになりました。

まあ、今はまだ倒れないけどね。


「あと少しだね」


「なんだかドキドキしてきた」


僕らはしばし見つめ合うと、どちらからともなく笑い出す。


この人と出会えてよかった。


その出会いは大きな声では言えないけどね。僕が浮気され人生に絶望し、その結果彼女に出逢えた。


少しでも歯車がズレていたら永遠に出会わなかった2人


「2人には感謝しなくちゃね」


「何か贈れないかな感謝を込めてさ」


「それなら大丈夫、昨日プレゼント渡してあるよ」


「おおっさすが旦那様手回しがいいね」


前から欲しいって言ってたものだから、きっと喜ぶはず。





前日

「はあ・・・」

先輩も卒業しちゃうし、もう部活もやめようかな。


「あーいたいた!」


「へ?先輩どうしてここに」


もう引退したから来ることないのに


「最後にプレゼントがしたくて」


「プレゼントですか?」


「そう。色々あったけど、そのお陰で僕は彼女に出会えたんだから」


そう言いながら、バックから小箱を出してくれだ。

先輩が取り出したのは、綺麗なデザインの小さな箱だった。・・・これ、指輪が入るサイズだよね


ええっ!あたしの逆転勝利来た?


「・・・開けてもいいですか?」


「もちろん」


あたしは恐る恐るそれを手に取ると、フタを開いた。






そうして元カノにも同じ物を贈った。


「・・・やっぱり最後は幼馴染が勝つんだね」


いや君幼馴染じゃないよね。



こうして僕は結婚式前日までに、無事2人にプレゼントを渡すことが出来た。



*



「ええっ、指輪贈ったの?」


「うん、2人が前から欲しいって言ってたから」


欲しい物が良いよね。結構高かったし。


「・・・えっと、不味かった?」


「まずいというかなんというか。まあ絶対誤解してるよ」


「ええっ!」


「どうしよう」


「これも君らしくていいんじゃない」そう言いながらも口元がヒクヒクしてますよ


「まあ、あたしは高みの見物するから、自分でなんとかするのね」


「頑張ります!」


でも誰か助けて!


*


「これはどういうことだと思う?」


「もう、先輩不倫する気満々ですよね」


テーブルの上には先輩から貰った指輪がふたつ。


ひとつはあたしが貰ったもの。


もうひとつは先輩に捨てられた元カノさんが貰った物だ。


「あたし捨てられてないから!」


「ふふふふ」


「むかつく!」


「まあまあ、お二人共落ち着きましょう」


結婚式直前に、こんな危険物を元カノに投げ込む兄はやっぱり変人だと思う。


それとも、本当に不倫の撒き餌なのかも?


「・・・まあ、あの兄にそんな解消あるわけないか」



私は、大騒ぎしているふたりの女を前に、うまい言い訳が全く思いつかなかった。


うーん、どうしましょう。そうだ祈ろう!


どうか新聞沙汰にだけはなりませんように!


はあ・・・やっぱり欠席にするんだった。

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