第5話 帰還命令と彼女たち
*
「・・・まずい」
朝チュンを聞きながら,僕は重大な事を思い出した。
「僕の誕生日は1月だよ」今は12月
「それがどうしたの?」そう言って僕の首をつかまえに来る。
こら毛布で隠しなさい。見えてるから
「僕はまだ17歳なんだ。だから」
「正式には結婚できないわね。でも後一月もないでしょ。誤差よ誤差」
「それじゃあ、もう少し家で大人しくしないとね」
「・・・なに心配してるの?」
心配というか、卒業と同時に彼女たちとの縁も切れるはず。
そう考えていたんだけど、
僕は事態がそんなに甘く無いことを知った。
昨日妹から連絡があった。
*
「先輩が最近色気づいてるんだけど、そう思いませんか?」
「やっぱりそうだよね。なにか女の影が見えるのよ」
「でも尻尾がつかめないんだよね」
「仕方ありません、ここは共闘しましょう」
「ええ、将を射んと欲すれば先ず馬を射よね」
「それ違うと思います」
「「妹ちゃんいたんだ」」
「・・・最近どこかに通っているようなんです。お兄ちゃん」
「あんたは彼氏の所にいたよね」
「嘘言わないで。もうちゃんと別れたわよ、アンタこそどうなの」
「こっちだって振ってやったわよ」
「なるほど。既に独り身と。御二方の本気確かに見せてもらいました。ではこれを見せてもいいでしょう」
「なにこれ」
「結婚式の招待状じゃない!」
「ぜひ兄をつかまえて下さい。 でないとあたしが寂しいんです」
「わかった。必ずあたし達がつかまえてみせるからね!」
*
「だから捕縛される前に、さっさと帰りなさいって連絡が来たんだ」
「ホントしつこいわね。まだ諦めていなかったんだ」
しかも身辺整理までして。
「ほんとすごい執念」
どうせなら、その情熱を勉強に向けてよ。
テスト前つきあわされて、ホント大変だったんだから。
「良いわ私が乗り込みましょう」
「いいの?」
「ええ。正妻の本気見せようじゃないの!」
*
数時間後
「・・・ねえ、帰ってもいいかな」
どうやら彼女は内弁慶らしかった。
僕の家が近付くにつれ、目が泳ぎだし、呼吸が荒くなってきた。
「あのー長谷川さん?」
「・・・お家帰る」
駄目だ、幼児退行起こしてる
「分かりました。今日は帰りましょう」
「いいの?」
「僕だって彼女たちが節度を持ってくれたら、それで十分なんだから」
僕は彼女の肩を抱えるようにして、もと来た道を戻っていった。
捕縛直前彼女の機転?で難を逃れた。
去ってゆく彼を部屋から見つめる二人は・・
「あー逃げていった!ねえ敵前逃亡って死罪だっけ?」
「うーん、どうなんだろう。そもそもあたし達って敵なの?」
「私は彼の味方よ。いつだって」
「・・・うん。あたしもそうだった筈よ」
二人してお互いの顔を見つめ大きくため息を付いた。
「あたし達なにやってるんだろう」
「これ以上嫌われたくないよ」
そんな二人の後ろから「ふふふ。大成功なのです」
そんなこの家に住む小悪魔の声が、聞こえたとか聞こえなかったとか。
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