第4話 孤独の中の暖かさ
翌日。
夜中に連絡が来たらしく、寝ぼけてみたスマホには通知が光ってた。
『明日の朝迎えに行くから』
玄関先に停めた彼女にの車に押し込まれ、着いたのは彼女の住む家だった。
「このノートパソコン使っていいから」
それは素人の僕が見ても分かるほどの高性能パソコンだった。
試しにスマホのイラストをスキャナーで取り込み加工してみる。
難しいと思ってたけど、何度かやっているうちにコツはすぐ覚えた。
「へえ、さすが男の子覚えるのが早いね」
「嬉しいからもっとおだてて」
僕は褒めて伸びる子なんです。
「なにそれw」
*
「できた!」
結構時間がかかったけど良しとしよう。
「後は私がやるね」
そう言うと、さっき僕が取り込んだイラストを動画サイトにアップしてみた。
新曲の動画とは別に、画像を入れたバージョンてことで、同じ曲を2曲アップしたらしい。
「どうかな」
自分が書いたイラストがネット上にある。何だか変な感じがしたけど、嬉しかった。
「どう?出来たかな?」
「出来た。自分のスマホでも見たけど何だか夢見たい」
それに彼女の声がとても切なくて悲しくなる。
「じゃあ、完成記念で今ここで歌ってあげる!」
それは陳腐なセリフかもしれないけど、天使の歌声だった。時に情熱的に、時に優しく。
彼女は歌い続けた。
歌い終わっても僕は動けなかった。
「あの・・・どうだったかな?」
少し心配そうにこちらを伺う姿に、キュンとなってしまった。 やばい
「・・・良かった」
「それだけ?」
「ものすごおおおく、良かった!」僕は両手を広げてみせた。
「あはは、そうなんだ。良かった、よ気に入ってもらえて」
「ねえ、この曲の主人公って僕?」
「そう!大正解」
「それじゃあ、僕もこの曲のように頑張らなくっちゃね」
「ええ、期待してるから」
*
それからの日々、僕たちは毎日会って曲の話をしたり、パソコンの使い方や登校のやり方を特訓して過ごした。
「何だ、案外簡単なんだ」
それは沢山やったからでしょ。最初は酷かった。
「それはもう良いでしょ!しつこい男は嫌われるよ」
「それは困るかも」
「でしょう。だから」
どうぞって自分の頭を僕に向けてくる。
「ちかはいい子。何でも出来るすごい子だよ」
「あー癒やされる」
最近彼女はすぐに甘えてくるようになった。
「君が甘やかしているんだよ。あたしそんなに甘えん坊じゃなかったのに」
「それじゃあ、責任取らなくっちゃね」
「どうやるの?」
はいこれって僕は小さな箱を彼女に見せた。
「ちょっと!まだこんなの早いわよ。えっと、どうしよう」
そう言いながらも頬が緩んでます。 うん可愛い。
「これはね、僕から君への約束なんだよ」
そう言って箱を開けて中のものを取り出す。
「僕はちかちゃんを病める時も 健やかなる時も 富める時も 貧しき時も 妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓います」彼女の左手を取り、震える指先に指輪をはめた。
「あたしと結婚したいの?」
「うん、君といつまでも一緒にいたいから」
彼女はそっかーと言いながら顔を真赤にさせてブツブツ言っていた。
「よし、いいでしょう」
「もう抜け駆けは出来ないからね」
はい、覚えています。
それからガサゴソとドレッサーの引き出しからとあるものを取り出した。
「こほん、あたしは病める時も 健やかなる時も 富める時も 貧しき時も 夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓います」彼女は僕の指に女性物の指輪をはめた。
「うそ、ぴったりだよ」 うわ地味にショック、僕の指って小さかったんだ
「それよりも早く」 彼女はもじもじしながら僕に顔を近づけると、目を閉じた。
忘れてた
「それでは誓いのキスを」 僕はそう言ってゆっくりとその唇をふさいだ。
誓いのキスは焼き魚の香りがしたけど、僕の大好物の味だったので良しとした。
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