第4話  孤独の中の暖かさ

翌日。

夜中に連絡が来たらしく、寝ぼけてみたスマホには通知が光ってた。


『明日の朝迎えに行くから』


玄関先に停めた彼女にの車に押し込まれ、着いたのは彼女の住む家だった。



「このノートパソコン使っていいから」


それは素人の僕が見ても分かるほどの高性能パソコンだった。

試しにスマホのイラストをスキャナーで取り込み加工してみる。

難しいと思ってたけど、何度かやっているうちにコツはすぐ覚えた。


「へえ、さすが男の子覚えるのが早いね」


「嬉しいからもっとおだてて」


僕は褒めて伸びる子なんです。


「なにそれw」





「できた!」


結構時間がかかったけど良しとしよう。


「後は私がやるね」


そう言うと、さっき僕が取り込んだイラストを動画サイトにアップしてみた。

新曲の動画とは別に、画像を入れたバージョンてことで、同じ曲を2曲アップしたらしい。


「どうかな」


自分が書いたイラストがネット上にある。何だか変な感じがしたけど、嬉しかった。

「どう?出来たかな?」


「出来た。自分のスマホでも見たけど何だか夢見たい」


それに彼女の声がとても切なくて悲しくなる。


「じゃあ、完成記念で今ここで歌ってあげる!」


それは陳腐なセリフかもしれないけど、天使の歌声だった。時に情熱的に、時に優しく。

彼女は歌い続けた。

歌い終わっても僕は動けなかった。


「あの・・・どうだったかな?」


少し心配そうにこちらを伺う姿に、キュンとなってしまった。 やばい


「・・・良かった」


「それだけ?」


「ものすごおおおく、良かった!」僕は両手を広げてみせた。


「あはは、そうなんだ。良かった、よ気に入ってもらえて」


「ねえ、この曲の主人公って僕?」


「そう!大正解」


「それじゃあ、僕もこの曲のように頑張らなくっちゃね」


「ええ、期待してるから」





それからの日々、僕たちは毎日会って曲の話をしたり、パソコンの使い方や登校のやり方を特訓して過ごした。


「何だ、案外簡単なんだ」


それは沢山やったからでしょ。最初は酷かった。


「それはもう良いでしょ!しつこい男は嫌われるよ」


「それは困るかも」


「でしょう。だから」


どうぞって自分の頭を僕に向けてくる。


「ちかはいい子。何でも出来るすごい子だよ」


「あー癒やされる」


最近彼女はすぐに甘えてくるようになった。


「君が甘やかしているんだよ。あたしそんなに甘えん坊じゃなかったのに」


「それじゃあ、責任取らなくっちゃね」


「どうやるの?」


はいこれって僕は小さな箱を彼女に見せた。


「ちょっと!まだこんなの早いわよ。えっと、どうしよう」


そう言いながらも頬が緩んでます。 うん可愛い。


「これはね、僕から君への約束なんだよ」


そう言って箱を開けて中のものを取り出す。


「僕はちかちゃんを病める時も 健やかなる時も 富める時も 貧しき時も 妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓います」彼女の左手を取り、震える指先に指輪をはめた。


「あたしと結婚したいの?」

「うん、君といつまでも一緒にいたいから」


彼女はそっかーと言いながら顔を真赤にさせてブツブツ言っていた。


「よし、いいでしょう」 


「もう抜け駆けは出来ないからね」


はい、覚えています。


それからガサゴソとドレッサーの引き出しからとあるものを取り出した。


「こほん、あたしは病める時も 健やかなる時も 富める時も 貧しき時も 夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓います」彼女は僕の指に女性物の指輪をはめた。 


「うそ、ぴったりだよ」 うわ地味にショック、僕の指って小さかったんだ


「それよりも早く」 彼女はもじもじしながら僕に顔を近づけると、目を閉じた。


忘れてた


「それでは誓いのキスを」 僕はそう言ってゆっくりとその唇をふさいだ。


誓いのキスは焼き魚の香りがしたけど、僕の大好物の味だったので良しとした。

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