その色に触れる度に君を想うということ
燿羅
A
その色に触れる度に君を想うということ
ねえ、そこのアナタ。私と同じ匂いがするわ。ちょっと話、聞いてかない?
私は冬が嫌い。理由とかは特にないけれど、何だか、こう、寂しく感じてしまう。それとやっぱり寒いしね。野生の動物達なんか見てると凄く
そういえば、自己紹介がまだだったわね。
私は吉野。仲間たちからはヨッシーやよっちゃんなんて呼ばれているわ。それにしてもアナタ、私と会話が出来てるなんて珍しいわね、稀にいるんだけどね私と話せる人。
まぁこれも何かの縁だし
話は最初に戻るんだけど、冬が嫌いな理由はもう一つあったわ、長いのよ。あまりにも長いじゃない?十月の半ばから最近では三月後半まで寒いでしょ?たまったもんじゃないわよね。それのせいで私が一番好きな季節が中々来ないのよ。それが最も腹立たしいのよね。そう私は春が一番好きなの。仲間の中には春が嫌いって言う奴もいる、信じられない。一年でこんなにも素敵な季節は他にないっていうのに、同業の中でも春が嫌いな奴がいるなんて。理由は聞いてる。最近になって増えたんだけど、街を汚す人達が増えたじゃない?あれが原因。確かに気持ちは分からなくもないわ、ここ十数年で酷くなって来ているのは明らか。ゴミを持ち帰らないし、ゲロは吐くしでもう最悪。だけどそんな事は目を瞑ればいいだけ、最高の季節には変わりないわ。
私の仕事?私の仕事はただ立っているだけなんだけど、とてもやりがいは感じているわ。けれど最近、同業者が年々辞めていっている、辞めるとゆうより失踪あるいは殺されている。って言えばいいのかしら、都会にいる仲間は恐らく大丈夫なんだけど、地方や田舎の方では良く殺されたなんて事、風の噂で入ってくるわ。凄く残念に思うわ、人は好きだけど、いつの時代も殺しは辞めないのは変わらない、仕方のない事なんでしょうけど出来れば辞めて欲しいと切に思うわ。私は都会とも田舎とも言い難い街に居るから恐らく大丈夫なんだけど、もしかしたら近い将来私もその時が来るのかもね。私達には抵抗する手段がないから、されるがまま、従うがままこの命を終える事になる。でもそれも運命なら受け入れるわ、私ってそういう性格なのかもね。だって抗えないのなら最後まで美しく在りたいじゃない?私は誰よりも美しく、綺麗で在りたい。同業の仲間達も凄く綺麗なんだけど、私が一番綺麗よ。アナタもそう思わない?此処で足を止めたって事はつまりはそう言う事なんでしょ?けれど残念。私に見惚れるにはまだ早かったわね、確かにちょっとは化粧もしてチラッと着飾ってはいるけれど、まだまだこんなの本気じゃないんだから。もっと綺麗になるんだからね。
よく見たらアナタ見ない顔だね。ここへはいつから?へぇ最近引っ越して来たんだ。何か心境の変化でもあったの?え、私達を訪ねて?あらあら、アナタ私達のファンなのね、こんな未完成でごめんなさいね。どう?この街には慣れたかしら?私は随分長くこの街にいるけど、良くも悪くも変わらない街よ。いや、ここ数年は新しい家や、道路が整備されたりと徐々にだけど変わりつつあるわね。慣れるまで少し時間は掛かるかも知れないけれど、気に入ると思うわ。私はこの街好きよ、まぁ生まれて此の方、この街から出たことがなくて、他が分からないから何とも言えなけどね。いつかは出てみたいけれどそれは難しい話ね、私長く居すぎて別の街や場所に行くには荷が重たすぎるもの、お金や人の力も沢山借りないといけないし、やっぱり私はこの街が好きだからね。あと、これからはアナタが話を聞いてくれるんでしょ?なら尚更、出ない方がいいわね。
あら、もうこんなにも時間が経っていたのね。暗くなるまでごめんなさい。今日はもう帰りましょうか、またお喋りしましょう。私はいつでも大歓迎よ。気を付けて帰るのよ。では、さようなら。
あら、こんにちは。一週間振り位かしら?こんな昼間に会えるなんて、どうしたのかしら?お姉さんが聞いてあげよっか?ふふっ、もうお姉さんなんてゆう歳じゃないわよね。そういえばアナタ何の仕事しているの?
物書き?小説か何か?へぇ凄いじゃない。私あんまりそう言うの詳しくないけれど、なんだか大変そうってイメージはあるわ、やっぱり大変なの?なるほどね…。小説家になれるのはほんの一握りって訳ね。
で、これからどこへ行くの?お、そこの喫茶店に行くのね確か、『喫茶 ひふみ』だったかしら、あそこのコーヒーは香りがとても良くておすすめよ。落ち着いて執筆出来ると思うわ。じゃあ今日はここまでね、頑張って。
こんばんわ。この間のお昼ぶりね。どう?小説の方は順調?あともう少しで完成するのね、凄いじゃない。かなり無理したんじゃないの、目の下のくまがとんでもない事になってるわよ。ほらこっち来て、私の隣でゆっくり休みなさい。人って丈夫そうに見えて実は結構脆い生き物なんだから、そんな生活を続けていたらしまいに体調崩すわよ。何事も焦らずにね、まだ若いんだから。けど今此処で寝ちゃだめよ、まだ冬なんだから風邪ひくわ。よく考えたらこんな夜中にどうして来たの?私に会いたかったの?ふふ、可愛いのね。正直さんなんだから、分かった。今日は沢山甘えなさい、ただし、風邪を引かれても困るからね、日付が変わる頃にはちゃんと帰るのよ。
それにしても今晩はいつもより冷えるわね。昨日が雨だった事もあって風も冷たいし、空気も冷えてる。寒さに慣れてる私ですら参っちゃうぐらい、もうすぐ三月にはいると言うのに…。あ、そうだ小説完成間近なんでしょ?もし完成したら私にも読ませてくれる約束、忘れてないでしょうね?何よ、私だって本ぐらい読めます。ちょっと難しいけどアナタが居るんだから大丈夫よ。で、どんなジャンルを書いているの?へぇ、現代ドラマを…。ちょっと意外だわ、なんかアナタのイメージ的にはミステリやホラーが好きそうな感じなのに。書くのは難しいんだ、確かに自分で一から謎解きを考えるのって大変そう。私には無理ね。けど挑戦してみたら?アナタならきっと上手く出来ると思うわ、かなり無責任な発言だけど、まぁ騙されたと思って、ね?
あら、そろそろ時間ね。今日はもう帰りなさい。また今度お話聞かせて。
おはよう。アナタ
こんにちわ。って今日はなんだかいつもと服装が違うわね。あら、デート!?
アナタ恋人がいたの?へぇそう…。知らなかったわ、そりゃ聞いた訳でも無いんだし、知らないのは至極当然の事なんだけど…。それで気合入って見慣れない服装なのね。良いじぁない、何処へ行くの?へぇ知らない場所だわ、楽しい所?それなら良かった。しっかり息抜きも出来てるみたいで何だか安心したわ。今日から少しずつ気温も温かくなるみたいだから、丁度良かったわね。だけど羽目外し過ぎないよにね。事故とか気を付けるのよ。もう時間なんでしょ?早くお行き。
こんばん…。わ。ってあれ?アナタ今日デートじゃなかった?なんでこんな所に。え?喧嘩した?何でまた…。でも別れた訳じゃないんでしょ?あら、アナタ泣いてるの?仕方ないわね、こっちにおいで。昼間は温かくなってきてるけど夜はまだ寒いから、冷えるでしょ、隣来て。で、何があったの?将来の話をしたらすれ違ったね…。それはなかなか難しい話ね。けどそれって真剣にお互いの事を考えてるって事じやないの。そりゃあ付き合ってたら意見の食い違いや、価値観の違いなんていくらでもあると思うわ、でもそんなのこれからの長い人生で見たらちっぽけな事よ。ほら、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃない?言わないか…。とにかく、何が言いたいかって、その…。慰めたいのよ。だからそんな顔しないで。私がいるから、もう少ししたら喧嘩してた事なんて忘れるぐらい良いもの見せてあげるからね、元気出して。そうね、もう一ヶ月は切ってるわ。絶対に気に入って貰えると思うし、損はさせないわ。きっとアナタの心を奪って見せる。本当よ。私、嘘なんて吐かないわ。どう?少しは気が落ち着いたかしら、ちゃんと帰れそう?そう、良かったわ。ちゃんと相手の事を想って、改めて話し合うのよ。相手の気持ちも尊重しながら、自分の気持ちもちゃんと伝える。できる?お姉さんとの約束だからね。はい。良い子ね。じゃあ今日はもう帰りなさい。またどうなったか結果待ってるわね。
こんにちわ。あら、何だか嬉しそうね。恋人さんとは仲直り出来たのかしら?良かったじゃない、ちゃんと話合えたのね。どんな話し合いになったのかしら?そう…。働く事になったの…。それって素直に喜んでいい事なのかしら?そうしたらアナタ小説はどうなるの?そう…。一時休憩って事ね。もう少しで完成だったんでしょ?残念…。
けど、アナタが嬉しそうだから、それでも良かったのかもね。私の事は気にしないで。これから仕事が始まったら、なかなかこっちにも寄れなくなるんでしょ?それは仕方がない事よ、アナタが気にする事ではないわ。仕事って大変よ、私色んな人を見てきたけど、皆体から魂が抜けたみたいに歩いてるもの、見ていて心配になるわ。アナタもそうならないといいけど…。けど、頼りたくなったらまた
もう、行くのね。気を付けてね、行ってらっしゃい。
こんにちわ。今日は凄く良い天気ね。最高の
先に伝えたい事があるんだけど聞いてくれるかしら?
私ねアナタの事が好きになったみたいなの。急にそんな事言われても困るわよね…。私ったらまだアナタの名前も知らないのに。変な事だよね、けど自分に正直でいたかった。伝えたかった、この気持ちを。私ってほら、普段アナタとしか話さないでしょ?だから、好きになる気持ちは仕方がないというか…。久しぶりにこんな感情になったのよ。どうしていいか分からなかった。だけど、伝えたいと思った。ごめんなさい。今更遅いのだけど、アナタの名前聞いても良いかしら?
さあ、そろそろ時間ね。翠、お願いが二つあるの。頼めるかしら?ありがとう。
一つは、私が開けていいと言うまで目を閉じて欲しいの。先に閉じてくれるかしら。そう、それでいいわ。翠…。アナタってとても綺麗ね。いいえ、何でもないわ。じゃあ目を閉じたまま二つ目のお願いも聞いてくれる?ありがとう。
二つ目は、
私の事忘れないでね。
翠、目を開けて。
閉じていた瞳を開ける。
目の前にあったのは、
決して忘れない。
いつしかその姿を上手く視界に入れることが出来なくなっていた。ぼやけて
その
枝先が静かに揺れている様だった。私は
「私が愛した
燿羅
こんにちは。燿羅です。
この度は、「その色に触れる度に君を想うということ」を完読して下さり、誠にありがとうございます。
こちらは、自身初の短編。恋愛小説となっております。それと、二話構成となっており、こちらの物語とは別の形で物語がございます。そちらの方も楽しみにしておいて下さい。
しかし、年内はこちらで最後です。続きのBはまた来年となります。
「赤い蕾と青の花」をお読み頂いた方は少し違った楽しみ方を出来たのでは無いでしょうか?
こちらも引き続きよろしくお願いします。
それでは今回はここまで、またお会いしましょう。
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