龍王が望むもの
リーズはいらいらしていた。
アラタ王から本気を出す事を制限されている為、他の人間に任せていたが、無駄に時間はかかる上にレオルのヤツが我が主に歯向かうゴミの一人を逃がした。
我が主の前では絶対に有り得ない失態。
見るからに戦いを楽しんでいた。
「レオル!この馬鹿者が!!今は力試しでも何でもない!!我が主の敵を倒す事が何よりの目的であり使命だ!」
怒られた犬のように項垂れ、謝るレオル。
「リーズ殿、申し訳無い。この前とは違い武人と戦場で戦う事を楽しんでしまった。」
「全ては我が主アラタ王の為!今一度心に刻まねば、この世界から送り返されるぞ!!」
しゅんとした巨躯の獅子の戦士とそれに説教をする白いドレスの美しい女。
戦場で見るはずの無い、あまりにも現実離れした光景に一瞬敵も味方も固まった。
だが、すぐに覇王項羽は己を取り戻し現実を再確認する。
あの凄まじい力を持った右将軍が何も出来ず遁走した。
あの力を見れば個の武力では呂布の方が自分より上だと認めざるを得ない。
それなのに、だ。
だが項羽は中華を統一しかけた覇王、そして武人である。己の誇りにかけて武功もあげず逃げるなど考えられない。
「くそ!かくなる上は一人だけでも殺してくれる!」
信じられないが、立場的にはあの獅子顔の戦士より女の方が上のようだ。
戦場では男も女も関係ない。この場で一番権力を持つ者の首を上げ、痛み分けとしてくれる。
「全軍!あの女を狙え!」
項羽の号令と共にほとんど無傷の魑魅魍魎の軍勢が未だぐちぐちと説教を続ける一点を狙い襲いかかる。
「ちょうどいい。レオルやヒゲの馬鹿者共!我が手本を見せてやる!そこで見ておれ!!」
しゅんとするレオルや狼狽える関羽張飛に言い放ち、くるりとリーズは新狼軍に振り返った。
メキメキと音を立てリーズの身体が変化する。
一瞬の後、そこには真っ白の鱗を持ち紅い瞳をもつ龍が現れた。
はじめてその姿を見る関羽と張飛は呆然と立ちすくむ。
その龍は神々しい姿を震わせ大きく口を開け炎を吐いた。
魑魅魍魎の軍が焼き尽くされていく。
白き龍は続いて魔法陣を出現させ、至る所で爆発を引き起こす。
項羽は圧倒的な力を前にただ呆然と物の怪達が逃げ惑い、倒れていくのを見ていた。
「ゴミ共め、キリが無いな。」
そう呟いた白き龍は翼を羽ばたかせ、空に浮かび上がる。
その姿はまるで神話の一枚絵のようであった。
口を開き、周りの魔力を吸う。
集めた魔力が光を帯び、リーズの開いた口の前に眩い光の球が出来上がる。
その光の球から光線が雨のように降り注ぎ、逃げ惑う物の怪に複数の穴をあける。蒸発により出来た穴から身体が燃え上がり跡形も無く消しさっていく。
最後にリーズは一際大きな光線を発射し、呆然とリーズを見ていた項羽を絶命させた。
全てが終わり地上に降りてきた白い龍は、女の姿にもどり防御魔法陣で守られたレオル達に振り返ると、口を開いた。
「ほら見ろ!簡単な事では無いか。我が主アラタ王はこのような圧倒的勝利こそ似合うのだ。肝に銘じ精進せよ。」
満足気なリーズ。
「あんたしか出来ねーよ!!」
我慢出来なかったレオルのツッコミが数分前まで戦場だった、焼け野原にこだました。
※当作品を読んでいただき誠にありがとうございます。
もし当作品を面白い!続き見たいと思って頂けましたら♡で応援、レビュー、ブクマ、★をいただけますと作者が喜び、励みになりますのでよろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます