左将軍 項羽

新狼帝国の項羽こううは化け物の軍勢を纏める。


神の前に現れたあの男、チンギスは自分を事も無げに下し、神をも喰い取り込んだ。


もはや神以上の力を持つに至ったチンギスによって瀕死の重症を能力で治された項羽は、言われた通り武将として、軍勢を率いる事しか出来なかったのだ。


「チッ、この俺が左将軍とはな。」


神を喰らい新狼帝国に戻ったチンギスは自らの軍を拡大した。


戻った時に現れた男を押さえつけ、その男を右将軍。項羽を左将軍としたのだ。


その後、神から奪った力なのかどこからか魑魅魍魎ちみもうりょうの軍勢を呼び出し、さらにそれらに蒼い狼と人狼を加え両将軍に与えた。


「この項羽と並び立つ右将軍。並々ならぬ力は見て取れたな。あとは戦場での武力を見るとしよう。」


遠くの同じ様な軍勢の先頭に立つ男、呂布奉先りょふほうせんを見据えて、項羽は呟いた。


関羽と張飛を食客として迎えたアラタは、ここに来て動き出した新狼帝国を警戒する。


ジパングからドワーフ達を呼び寄せ、関所と言うには巨大すぎる防壁を造る作業を命じた。


「まるで虎牢関ころうかんみたいだな。」


三国志の時代にあったとされる、巨大な防壁に例えた張飛が口を開く。


「お主達がここに来たという事はあまり時間が無いかもしれんが、ドワル達なら間に合わせてくれるじゃろう。」


アラタの言葉に防壁作業に指示を出しているドワルが、任せろ とジェスチャーをしながら忙しく動き回る。


「我が主、アラタ王よ。あの時のように帝国の軍勢を呼び出したらどうだ?皆待っているぞ。」


「うむ。ロキとの戦いの時は呼んだが、向こうには向こうの世界があるからの。なるべく呼ばずにジパングだけで解決したくての。王になったからにはこの世界の民はこの世界の力で護らなくてはな。」


「我が主アラタ王よ。流石だ。王と言うものはすべからくこうあるべきだな。王の中の王、アラタ王が道を歩けば民は喜びに感涙するだろう。」


大袈裟に褒め称えるリーズの言葉にアラタは頭を掻きながら関羽に向き直る。


「それで、この関所が終わればわしはドワーフを連れて同じように防壁を強化する為、北の関所やジパングの街に行かねばならん。そこでなんじゃが、お主ら二人が出てきたという事は他にも向こうに武将が出てきていてもおかしくは無い。新狼帝国の兵力は分からんが、ジパングはアレキサンダーやロキとの戦いで兵がほとんど使えぬ。大軍勢相手に個人の武で戦わねばならんかもしれぬ。食客として来てくれたのにすまんのう。」


アラタの言葉に張飛が反応する。


「兵を持たない国か!俺も万人の敵と呼ばれた男、面白いじゃねーか!なあ、雲長兄!」


張飛の言葉に関羽は頷き、続く。


「我ら兄弟は遊撃隊として、充分に使ってくれ。大暴れしてみせよう。」


頼もしい二人の言葉に、レオルも賛同する。


「魔物の軍勢でも軒並み倒してやるぜ!陛下は気にせず、築城や内政に力をいれてくれ!」


三人はあの戦いより意気投合したのか、楽しそうにこれから起こる戦に向けて、話し始めた。


「リーズよ、わしが北やジパングに行ってる間、ここを頼むぞい。大軍勢が来た場合のみ本気を出す事を許可する。」


その言葉を聞き、リーズはアラタと離れる事への不満で顔をしかめたが、一瞬後に頷き、任せろ、我が主。と快諾した。



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