ドワルと来訪者

「我が主アラタよ。素晴らしい宣言であった。やはりアラタは人の上に立つべき人間。」


「まだ名ばかりの王じゃが、頑張らんとのう。」


役所の前での慎ましい宣言を終えたアラタは屋敷で久しぶりに子供達と会い頭を撫でていた。


「もうアラタは王なのに妾や子供達がいるこの家に帰ってきていいのか?」


ベルガの不安そうな質問にアラタは優しく答える。


「まずは周りの国に対する防衛じゃな。特に新狼帝国への備えをせんといかん。城なぞはそのうちじゃな。もちろん城を建てるとしたら子供達もベルガもみんな城へ引越しじゃよ。」


アラタの返事を聴き明るい表情をするベルガを横目に、リーズが口を出す。


「淫乱魔王は置いていっても良いだろう。もう魔力も多少使えるようだしな。」


「妾はか弱い少女だぞ!そんな酷い事いうと泣くぞ!」


ギャーギャーと軽口を叩き合う二人。


何かを考えこむアラタに、リーズがベルガの頭を押さえつけながら首を傾げる。


「どうした?我が主。何か心配事か?」


「ふうむ。城も防衛も、もしかしたら一気にどうにかなるかも知れんのう。」


「では行くぞ!【異界顕現いかいけんげん】」


アラタがスキルを唱えると、目の前の平原に髭面の身長が低いが、がっしりした男達が数千人現れた。


「我が主アラタよ。流石だ。主のスキルで帝国のドワーフ達を連れてくるとは。」



そのドワーフ達の中から、角が生えた兜を被った一人が前に進み出た。


「陛下!久しぶりだな!呼んでくれて嬉しいぜ!」


「ドワルよ、久しぶりじゃな。良く来てくれた。向こうは大丈夫か?」


ドワルと呼ばれた男はにやりと笑い応えた。


「大丈夫だ!陛下のおかげでドワーフもずいぶん増えた。今回来たやつらは俺も含めて若いもの達に任せて引退した職人達だ!だが腕は錆び付いてないから安心してくれよ。」


アラタが考えた手とはスキル【異界顕現】で異世界の帝国から必要な物を造ってくれる人間を連れてくるという、単純なものだった。


「有難いのう、ではすまんが防壁や城などこのジパングに必要な物をわしや半兵衛の指示の元造ってくれんか?南と北に防壁を造り、あそこに見える街を城壁で囲まれた国にしたいんじゃ。」


「おおおお!陛下!めちゃくちゃ嬉しいぜ!帝国はもうほとんど修理ぐらいしかする事無いんだよ! お前ら!そうと決まればすぐに動くぞ!」


喜びにうち震えながらドワルは振り返りドワーフの群れ目掛けて叫んだ。


「「おう!!!」」


同じく喜びで気合いが入ったドワーフ達が手をあげて返事をした。


ドワーフを街に連れて行こうとするアラタ。だがその時、通信が入った。


「これは…【長距離通信】か。紫殿からじゃな。」


『アラタ様。紫です。南の関所に二人の男が現れました。アラタ様と話しがしたいとの事です。チンギスの様な嫌な感じはしませんが、如何しましょう?』


ふむ、とアラタは一呼吸置き返事をする。


『分かった。今から向かう。ところでその二人は何者じゃ?名は名乗ったのか?』


『はい、関羽雲長かんううんちょう様と張飛益徳ちょうひえきとく様と仰っております。』

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