王の宣言と義兄弟

目の前にはジパングの民が所狭しと並んでいる。

あれから、巴や半兵衛が動いてくれた。

リーズは派手にしたかったようだが、今はまだ城などは無い為、役所の前での囁かな宣言となった。


ざわつく民の前に半兵衛と巴が進む。


「さて、皆様お集まり頂き感謝します。」


半兵衛の言葉に、ざわつく民は静まり耳を立てる。


「ジパングは長きに渡り、新しい為政者は居ませんでした。アレキサンダー軍が来てから信長様や私、巴殿が為政者の代理として動いておりました。

この度、皆様既にご存知とは思いますが、このアラタ様が為政者代理の全ての承認を経て、新しい王となります。」


既に魔物退治や防衛戦などでアラタの事を知っている民はにこにこと拍手をする。


そんな民の前にアラタは進み出て口を開いた。


「皆の者。改めて、わしが今日よりジパングを統治する事となるアラタじゃ。この世界が、元いた日本の様に平和になるまで、力を尽くす事をここに誓おう。」


この世界の魔物や軍勢に不安を感じていた民達はアラタの宣言を聴き、歓声をあげる。


「アラタ王!万歳!」

「良かった、あのお方ならきっと守ってくださる」


口々に不安から解放された嬉しさを滲ませながら大きな歓声や拍手をする民達。


小さな通りの前での慎ましい王の宣言だが、確かにここより何かが変わる気がしているのだ。


リーズやベルガもにこにことアラタや民の姿を眺め、満足気に頷いていた。



新狼帝国を見下ろす様に、小高い山の中で二人の男が立っていた。


そのうちの一人、山嵐のような髭をした大男がもう一人に話しかけた。


「兄者、やっぱりあの国は俺らが居た国とは違うな。死んだ英雄がこの世界に送られてくるらしい。新狼帝国という国で治めているのはチンギスという男のようだ。そしてその男は人をんだとよ。」


兄者と呼ばれた男は呼んだ男と同じように大きな体躯を微動だにせず口を開く。


よ。死んだ時期もバラバラな我らがここに一緒にいる事が別世界だという何よりの証拠となろう。そしてやはりあの国は化け物の類いが統治者か。」


「ああ、捕縛されそうになったのを殴り倒して逃げて良かったぜ。それでこれからどうする?」


「幸いな事に長兄が現れたという噂は無い。ならば、あのような怪物が統治する国に恭順せずに他の義を持つ国へ行く事にしよう。」


雲長うんちょう兄、何処にいく?」


長い髭を触りながら雲長うんちょうと呼ばれた男は問いに答えた。


「北の方に一度チンギスの軍勢を退けた『ジパング』という国があるらしい。そこに行ってみよう。」


その言葉に納得したのか山嵐のような髭の大男は蛇のように曲がりくねった矛を肩にかつぎ、頷いた。


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