幕間 蒼き狼の王③

何かが爆発した様な音が轟き、蚩尤のほこから発生した雷がチンギスに落ちる。


チンギスが居た場所が焼け焦げているが、チンギス自体のダメージは見て取れない。


「ほう、雷か。伝承通り雷雨を起こせるようだな。だが儂には効かん。他の技を見せよ。」


にやにやとチンギスがまるで次の余興を期待するかのように言う。


蚩尤は矛とは別の手にもつ黒い剣をかざし、チンギスに向ける。


次の瞬間、黒い球体がチンギスの右半身を削りとった。


ばたり、と倒れたチンギスを見つめ蚩尤が勝利を確信し、にたりと笑う。


「空間を削り取る能力か。他にはないのか?」


いきなり真横に現れたチンギスに蚩尤は驚愕する。右半身を削り取られた身体は今までチンギスが居た場所に、確かに倒れ込んでいる。


「何を驚く。儂は全てで全ては儂だ。儂を殺し尽くす何かが無いと意味が無い。どれ、お前はどうだ?」


言いながら手に禍々しい蒼い弓を出現させ蚩尤に向けてチンギスは矢を放つ。


夏侯淵とやらから奪ったスキルと蒼狼で創られた矢は凄まじい勢いで蚩尤の腕に刺さり、肉を爆散させちりぢりになった肉を喰う。


「ぐぅぅ!」


苦しそうな蚩尤を横目にくちゃくちゃと咀嚼するチンギス。


「おぉ…曲がりなりにも神よ。今まで喰ったどんなものより力に溢れている。だが、まだ足りぬ。全て寄越せ。」


チンギスの獰猛な肉食獣の様な笑顔を見て、忌々しげに蚩尤は、手にもつかなえを掲げた。


鼎から液体が溢れ、蚩尤の腕を修復する。


「流石に回復は出来るな。他には無いのか?無いならば儂の力とする為その身を献上せよ。」


捕食者としての目的をさらけ出したチンギスに、蚩尤は黄色に光り輝く宝玉を取り出し高く掲げた。


「小さき者、いやチンギス・ハーンよ。まさかここまで力があるとは思わなかったぞ。この宝玉を出させるとは。だがもう終わりだ!死ぬがよい!!」


言うなり蚩尤が掲げた宝玉から光が漏れだし、辺りを照らしだした。


まるで太陽が身近に出現したかのような、圧倒的な熱量に蒼狼やまわりの全てが焼き尽くされていく。


その熱は石でつくられた神殿の床や柱までどろりと溶けださせ、光が収まる頃には焼け焦げ、炭化したチンギスと蚩尤のみが立っていた。


「チンギス・ハーン。この蚩尤に楯突いた愚か者め。また兵士を集めねば。」


【龍王の黒炎】


目の前の炭化した物体からぶすぶすとした声が聞こえ、黒い炎が蚩尤を襲う。


「ぐわあぁ、何だこれは!?」


のたうち回る蚩尤。だがその黒い炎は消えずごうごうと燃え盛る。


「これは、以前龍の神と戦った時に儂の分体が消える前に喰い取った技よ。」


身体が炭化したまま、目だけがぎらぎらと輝くチンギスが告げ、のたうち回る蚩尤が叫ぶ。


「ばかな、何故死んでおらぬ!」


「その黒炎に対抗する為、【蒼喰狼王】を纏った防御法をつくってなければ危なかったな。」


チンギスはしゅうしゅうと焼け焦げた身体を引きずりながら蚩尤に近づく。


「やめろ!来るな!!」


消えない炎の対応の為、力を注ぎ込んでいるのか力を使えず五本の腕を振り回しながら、抵抗する蚩尤。


「これであの二人を超える事ができる。感謝するぞ、神よ。」


神なぞ信じた事も無いチンギスが初めて神に祈る。


ずるずると蚩尤に近づいたチンギスはその身体をアメーバのように変えながらゆっくりと口を開いた。


 ※当作品を読んでいただき誠にありがとうございます。

 もし当作品を面白い!続き見たいと思って頂けましたら♡で応援、レビュー、ブクマ、★をいただけますと作者が泣いて喜び、励みになりますのでよろしくお願い致します。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る