第30話 拠点と兆し

「魔物が使えなくなった組織は烏合の衆だろうから、あとは役所にまかせて。」


役所から人を呼び、腕が折れ目が見えず、うずくまっていた悪漢達を引渡し、

ベルガや子供達を連れて街に戻ったアラタ達に巴が言う。


「それで、今後どうするか話し合うんだけど、役所としては多分、新しい孤児院にって話しになると思うんだよね。どう思う?」


何かを期待してるのかアラタに問いかける巴


「まあ、役所としてはそれぐらいしか出来んじゃろうのう。」


考え込むアラタを見て、嫌な予感がしたのかリーズがベルガの背中を押しながら言う。


「ベルガよ。とても強くなったな。では行け!解散!!」


考えがまとまりアラタは手を叩き、告げる。


「よし、どうせ拠点も欲しかったしのう。巴お嬢ちゃん、大きめの家など用意できるかのう?こやつらはこっちで面倒を見よう。」


嫌な予感が的中し、顔面蒼白のリーズ。


待ってました!とばかりに顔を綻ばせた巴が返す。


「アラタならそう言ってくれると思ってたよ!丁度あるわよ!逃げ出した政治家の家が!あそこならみんなで暮らせるわ!逃げ出して間もないから綺麗だしね。今からでも行けるわよ!」


「わっはっは!子供達と共に勇者アラタと暮らせるとは!」


嬉しそうなベルガ、固まったままのリーズ。


対象的な二人を横目に、未だ脅えている子供達にアラタは語りかける。


「と、いう事でわしと一緒に暮らさんかのう。討伐者として生活する予定のわしは家をあける事も多い。お主らの仕事は家の掃除や管理、それと勉強じゃな。あとは良く食べて良く寝る事じゃ。」



「ご飯たべれるの?」「もう魔物の世話しなくていいの?」「ベルガお姉ちゃんも一緒?」


口々に返ってくる全てに頷きながら、アラタは子供達を抱きしめた。


その姿を見て、観念したのかリーズも何も言わない。


「では腹ごしらえをしたら鍵を貰って行くかのう。」


賑やかになった一行は歩き出した。


子供達にご飯を食べさせ、巴の先導で街の中心部にある大きな邸へと着いた。


「ほー、立派じゃな。これなら充分じゃが報奨金の余りぐらいしか手持ちはないが大丈夫かのう?」


少し前に逃げ出した政治家が住んでいた邸は異世界だと貴族が住むような、広い洋館で手入れも行き届いていた。


「家のお金は必要ないわ。食べ物も優先的に回すわ。役所としては、次々に問題を解決してくれるアラタをつなぎ止めたいみたい。私自身もずっと居てくれたら嬉しいしね。」


はにかみながら言う巴に、礼を言うと

アラタは好きな部屋を選んでおいで、と子供達を促した。


「勇者アラタ、巴、そして龍王リーズよ。

本当に感謝しておる。妾に出来る事があればいつでも言ってくれ。」


走り出す子供達を眺めながら、嬉しそうに感謝するベルガ。


「とりあえず、討伐者として活動しながら暮らして行くかのう。さてリーズよ、そろそろスキルの効果が切れる時間じゃて。」


「我もここに住む。」


わがままを言い始めた龍の王にアラタは頭を抑える。


「我が主、アラタよ。なにも今では無い。スキルで呼ばれただけと分かっている。だが我は魔力の扱いに長けている。このスキルの謎をすぐにでも解き明かし、永遠に留まれるようにしてみせる!!では解析で忙しいのでさらばだ!」


恐ろしい宣言と共にリーズは光と共に帰還していった。


「わっはっは!龍王リーズなら本当に何とかしそうだな!」


ベルガの言葉に同意のアラタは黙るしか無い。



「まあよい、所で巴お嬢ちゃん。北の戦況はどうじゃ?ここに留まる事にしたから気になってのう。」


「今はまだ膠着状態、と言うかアレキサンダー軍が不気味なぐらい静かみたい。」


「嫌な予感がするのう。」


どこかで宝飾のじゃらじゃら とした音が聞こえた気がした。

















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