第27話 孤児院の仕組み
「調べてきたわ。」
宿所で待っていた、アラタとリーズの元に巴がきた。
「早かったのう、あれから数時間しか経っておらん。急いでくれたんじゃな。助かるよお嬢ちゃん。」
「いいえ、アラタ。本当なら私たちの仕事なの。お礼をいうのはこちらの方よ。」
巴は真剣な面持ちで言った。
「で、どうだったんだ?小娘よ。」
ベルガの姿を見た後、ベルガとふざけ合う時以外ずっと不機嫌なリーズは尋ねる。
「結論からいうと、立花ベルガが送られた孤児院。上手く隠していたけど黒ね。前の統治者、あのアレキサンダーが来た時に逃げ出した政治家から特別認可を貰ってるわ。その後一般人として送られてきた子供を100人近く引き取ってるわ。
で、今は10人。表向きは事故や病気での死亡届けだけど、あからさまに死にすぎね。」
その話しを聞いたアラタに疑問が沸く。
「ここはヴァルハラじゃろ?病気や事故で死人が出るのか?」
「死ぬわ。普通に飢えて死ぬ事もあるし。その証拠にあの南の関所の防衛戦で戦った、新狼帝国の兵士もジパングの兵士も、民も死んだでしょ?あのロキって神様が北欧神話とは違うって言ってたよね?ここは神が存在する世界だけど、死と隣り合わせなのは変わらないみたい。」
アラタはふむ、と納得した。
「確かに、神々の勝ち負けがあるならば、死は一番明確じゃな。余計な事を言ってすまんかった。続けてくれ。」
無言で
「話しを戻すわね。この世界はヴァルハラらしいけど一般人も招かれる。老若男女ね。
そして人が集まれば娯楽も発展する。」
「
「そう。良い人ばかりじゃなくチンギスや董卓のような人間も送られてくる。そして花街みたいな悪所があれば、裏の組織もできあがる。そしてそんな組織に例の孤児院は、送られてきた子供を引き取り、成長すれば花街に売る。」
やれやれ、とアラタはぼやく。
「で、政治家に賄賂を渡すのか。良く出来た構図じゃのう。正直、花街などはどこの国にもある。そしてそれに付随する組織もな。だが抵抗できない子供を囲い込み、成長すれば拒否も出来ないまま売られる。そんなルール違反をする組織はいらんのう。」
「同意よ。さらに最近の魔物の目撃情報、その組織が関わってるみたい。
調べるまで気付かなかった役所の非を謝罪します。
その上で今晩、役所の人間で突入、壊滅させようと考えてるの。もう少しだけ待ってくれる?」
頭を下げた巴にアラタは答える
「アレキサンダー軍が来て政治家は逃げ出した。
今はいわゆる無政府状態みたいなもんじゃ。だから役所やお嬢ちゃんの怠慢とは思わんよ。ただ突入と壊滅についてはわしが行く。ここは譲れんのう。」
巴は少し考え、頷いた。
「分かったわ。実はかなり大きな組織で魔物も関わっている、
となると弁慶さんに頼むとしてもその間、聖天堂の守りが薄くなるからどうするのが一番良いか悩んでたの。アラタなら大丈夫だと思うし、正直言うと助かる。」
「何、わしらからすると昔の友人の為でもある。気にしないでおくれ。」
アラタの返事に安心した巴が告げる。
「アラタが言ったように今は無政府状態。なので組織の危険性も考え、相手の生死は問われないわ。自分達や子供の身を守る事に集中して。念の為、私も行くね。」
「安心しろ小娘。お前は見ているだけでいい。今日で全て終わる。」
変わらず不機嫌なリーゼがぼそり とつぶやいた
「では、また夜に集まるかのう。召喚の滞在時間がだんだん長くなってはおるが、一応リーゼは帰還後、夜までに再召喚しておく。」
アラタの言葉に二人はうなずいた。
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