第25話 赤髪の少女

アラタは巴が用意してくれた宿所でベッドに寝転がりながら頭を悩ませていた。


ロキと地下遺跡ーダンジョンで対面し、この世界の成り立ちをわずかばかり理解出来た。


弁慶を正気に戻し魔剣レーヴァティンを手に入れ、ダンジョンから出て街に帰還した。


街に帰ると弁慶は斬りつけた守備兵に謝罪し、さらに聖天堂の守備を買って出て、街や民を守る事を誓った。


巴は弁慶の人別帳の登録や怪我をした守備兵の治療などに動いている。


獣人の王レオルは、労うアラタにまたいつでも呼んでくれ と朗らかに笑いながら異世界に帰っていった。


リーズもしぶしぶながら帰還してくれた。


だが、


ー【異界召喚】で繋がった対象がアクセス許可を求めています。ー


リーズが帰還した後、10分置きに頭の中に鳴り響く。


スキルを詳しく検証してなかったが、こんな機能があったとは…。


ー【異界召喚】で繋がった対象がアクセス許可を求めています。ー


アラタを少しも休ませるつもりもない、悩みの原因にため息をつきながらアクセスを許可した。


眩い光と共に、ドラゴンの王リーズが現れる。


「我が主アラタよ、なぜすぐ応じない。街を回る約束をしただろう。」


「約束は守るがのう。少しは休みたかったんじゃよ。それよりどうやってこちらにアクセス出来たんじゃ?」


リーズは得意気に答える。


「我が主アラタよ、知っていると思うが我は魔力の扱いが得意なのだ。帰還した後、我が主と我に魔力の繋がりが出来た事に気付いた。後は簡単だ。その辿。」


「余計な機能じゃのう…」


心の底からアラタは思う。


「分かった、諦めて街に行くとするかのう。だが今後は緊急時以外はアクセスは禁止じゃ。」


一瞬、嫌そうな顔をしたリーズだが街をまわる嬉しさが勝ったのか、笑顔でうんうん と頷いた。


「ついでに、巴お嬢ちゃんが言うには最近何故か街中で魔物の目撃情報があるらしくてのう。もし、出くわしたら駆除して欲しいとの事じゃ。一応リーズも警戒しておいてくれ。」


幼い少女は、市場を歩く2人組を見て息をのんだ。


「なぜ、あやつらがここにいる??」


日本人しかいない街では目立つはずの、赤髪と金色の瞳をした、将来の美貌が約束されたような10歳程度の少女は、その外見とはうらはらに街の民から注目を集めない。


それもそのはず、少女はこの街に1年は暮らしている。


少女がジパングに送られてきたのは1年ほど前で、2回目の人生の時の魔力やスキルは失われ、残っていたのは髪の色と目だけ、さらには何故か幼い身体に戻っていたが、日本人に戻れた事に歓喜した。


英雄としてではなく、民として送られて来た何の力も無い少女は、国が用意した孤児院に送られた。

辛い事ばかりだったが

人を傷つけずに、食料のみで生きていける事だけでも、今の生活に納得していた。




それから1年、何の力も無い孤児の少女を奇異の目で見る人は居なくなった。

少女はいつものように、食料品の買い付けを命じられ市場に来る。そして偶然にも良く知っている2人を見かけたのである。


「勇者アラタに龍王リーズめ…!!約束も守らずにこの街で何をしておる…!」


少女は物陰に隠れながら二人の後をつける。





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