二章
第23話 もう1人の日本人
転生者 上村 裕介<かみむら ゆうすけ> は10日間も続く高熱にうなされていた。
あの日、会社の退勤時に交通事故にあい、何故か古代マケドニアの王子に転生した裕介は、覚えてた知識と転生時に手に入れたスキルで、他国との戦争に連戦連勝した。
結果マケドニアの王、ギリシアを含む連合国の盟主、さらにはエジプトのファラオにもなり大帝国を築いていった。
元日本人の裕介は多神教に理解を示し、支配した国の宗教や信望する神々を受け入れ統治も上手くこなしていた。
さらにこの時代、王を
「こんなに頑張ってたのに…前と同じぐらいの年齢で死んじゃうんだなぁ…」
裕介は目をつむり暗闇の中でつぶやいた。
毒を盛られたのか病なのか自分自身、皆目見当もつかない中
上村 裕介の2度目の人生は終わりを迎えようとしていた。
「日本人に…あの時の日本に戻りたいなぁ…」
意識が途切れるその瞬間、上村 裕介の身体は淡く光り消えていった。
裕介が目をあけると石造りの台座の上にいる。
「熱が…下がっている?何が起こった??」
さっきまで高熱により震えてた手をじっと見つめ、不思議な現象に混乱する。
「やあ!久しぶりだね!」
聞き覚えのある声が聞こえる。顔をあげると、そこにはマケドニアに転生した時に、スキルをくれた白髪で褐色の神様がいた。
あれから30余年経っているが何ひとつ変わらない、美しい姿をしていた。
「久しぶりだね、神様。また会えたって事はやっぱり死んじゃったのかな。」
神と呼ばれた青年、ロキは首をふる。
「死んじゃいないよ。死んじゃったら転生しちゃうからね。君は『転移』したんだよ。こっちに呼ぶついでに身体の熱は下げといたから。」
「はは…次は異世界転移か…」
力なくつぶやく裕介にロキは答える。
「察しがいいね。ここはヴァルハラさ。神々が戦う場所。君には僕の尖兵になってもらいたくて来てもらったよ。
もし僕の言うように戦ってくれたら、日本人に戻してあげるよ。」
ロキが告げた言葉は、上村裕介には喉から手が出るぐらい欲する褒美だった。
「本当に!?やっと、やっと日本に帰れるかもしれない…!! 俺は何すればいいの?何でもするよ!!」
その言葉にロキはにやりと笑い、告げる。
「そう言ってくれると思ってたよ。まずはジパングって国を攻めてくれる?あ、安心してよジパングって名前だけど他の神が作った国で、日本じゃないからさ。」
「日本じゃないなら、どんな名前だろうと関係ないよ。俺はどうしても元の時代の日本に戻りたいんだ。」
決意を秘めていう裕介に、ロキは続けた。
「期待してるよ。上村裕介。」
「 いや、戦争の天才 アレキサンダー大王。」
アラタが異世界に来る4ヶ月前の出来事だった。
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