第22話 この世界の成り立ち


「さて、レオルと小娘。それに小汚い坊主。尻尾から剣を取り出すがいい。我は、我が主アラタとここで見ている。」


尻尾から後ずさり、アラタの横に並んだリーズは居丈高に命令した。


「こ…小娘…。」

「小汚い…坊主…」


巴と弁慶はリーズの口の悪さに戸惑っている。


「はいはい、何が起こるか分からねーから俺が取りますよ。巴殿と弁慶殿はそこで見ていてくれ。」


レオルはリーズに慣れたもので、やれやれといった感じで、尻尾から ずるり と剣を取り出した。


禍々しい気を放ち、刀身にルーン文字を刻み込まれた漆黒の剣は、見るからに強い力をはらんでいた。


剣を見たアラタが呟く。


「ふむう…魔剣じゃの…。なぜこの世界にこんな魔剣があるかは分からんが、こんな物を体内に入れられたら、いくらヤマタノオロチといえど、狂うじゃろうな。」



「それは、魔剣レーヴァティンだよ。」


どこからか声が聞こえ、

辺りが重苦しいプレッシャーに包まれる。


これは……!!


アラタは強者の出現に瞬時に魔力を練り、威圧の中心から距離を取ると構える。


リーズはアラタと声の主の間で警戒態勢をとり、レオルと弁慶は巴を背にし、いつでも守れるようにしていた。


「そんなに、警戒しなくても大丈夫だよ。手を出すつもりないし。」


白髪で褐色の美しい青年はじゃらじゃらと身につけた宝飾を鳴らしながら語りかける。


「よく言うのう。そんなプレッシャーを出しておいて。お主は何者じゃ?」


「ああ、気付いた?問答無用で攻撃されないように一応動けないようにしたくて。君たち凄いね、僕の気にあてられず動けるんだ。」


褐色の青年は珍しい者でもみるように、ふうんと唸った。


「ああ、僕が誰かって話しか。その剣を作った者で、ロキって名前だよ。」


思いもよらず出た名前にアラタは驚愕する。


「ロキ…!北欧神話の神か!!実在したとはのう!!」


ロキと名乗った少年は続ける。


「うーん、人間が作った間違いが多い神話だけど、その神話の中に出てくるロキだね。一応神にあたるかな。」


「それで、その神とやらが我が主アラタに何のようだ?帝王アラタに殺気を飛ばすなど神とは言え許されんぞ。」


今にも元の姿に戻りそうなリーズが言う。


「怖いなぁ。その剣の持ち主として、手に入れた勇者に挨拶したかっただけだよ。君も神みたいなものだよね? 今はまだ争うつもりは無いってば。」


飄々ひょうひょうとリーズに答えたロキは続ける。


「この国の神は戦争に参加しといて出てこないし、見た事ないから、面白そうな魔物の魂を捕まえてイタズラ仕掛けたんだ。地上に出る前に君たちに潰されちゃったけど。

とりあえず、その剣はあげるよ。どんな神の兵士か知らないけど、これからも頑張ってね。」


ぱちぱち と拍手を鳴らしロキは微笑んでいる。


「戦争じゃと?お主が神と言うのは、その気配で頷けるが、何の話しか一向に見えてこんのう。」


魔力を解除せずに警戒していうアラタ。


「そうか、君たちの神はまだ姿を表してないのか。姿をあらわすつもりあるか知らないけど。

だから知らなかったんだね。」


「この世界は、君たちでいう所の『』だよ。宮殿じゃなくて招かれる場所は各神がつくった場所だけど。」


!!北欧神話にある死した戦士が集う場所! なるほどのう、なれば死んだはずの英雄やわしが送られてくるのか。


ロキは続ける。


「知ってたようだね。君たちの神話と違うのは色々な国の神が参加する事。戦士だけじゃなくて、民も選んで招き、スキルを授ける事。

そうやって現世に近い形にした後に、戦争するんだよ。 簡単にいうと国取りゲームだね。

ちなみに、直接介入して攻撃する神もいれば、間接的に介入する神も、逆に英雄にかしずく神もいるよ。」


淡々としたロキの説明に、この世界の成り立ちが、朧気ながら見えてきたアラタが口を開く。


「なるほどのう。何となく分かってきたわい。で、お主はどのタイプの神なんじゃ?」


にやり と笑いロキは


「僕は間接的かな。今はまだ…ね。じゃあ聞きたい事も終わった様だし、僕は行くね。剣大事にしてね。神も殺せる剣なんだから。

それと、これからは決められた建物以外にも色々な所に英雄が送られてくるよ。こういうダンジョンの中とかね。仲間探し頑張ってね。」


言うやいなや、ロキの姿が消え

辺りを覆っていたプレッシャーが消えた。


「あれは強いのう…とりあえず戦わなくてすんだ事に感謝じゃな。」


へたり込む巴に手を貸し、立たせながらアラタはつぶやいた。





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