第13話 後片付け
「華麗な広域殲滅魔法のう…」
アラタは呆れながらリーズを見つめる。
「申し訳ない…我が主…ネズミが帝王を詐称するから…つい…」
このドラゴンの王はアラタの事になると、たまにこういう事が起こる。
「まあ良い、いきなり呼んだわしも悪かったし、一応目的だった チンギス・ハーンの分身の排除も出来た。 ご苦労さんじゃの。リーズ。」
アラタの労いの言葉にリーズの表情が、ぱあっと明るくなる。
「そうであろう!我が主!!やはりこのリーズがアラタの1番の相棒だな!それで?これからどうする?久しぶりに我の背に乗り空をかけるか?」
わくわくと提案するリーズを手で制しアラタは告げる。
「そうしたいのはやまやまじゃが、リーズをこちらの世界に呼んだスキルの効果も、あと少しで切れそうじゃのう。
それにわしは向こうに見える関所に報告しにいかねばならん。まあ、全て壁上で見てたじゃろうが。」
「我が主、では我もお供しよう!!この世界の住人に我が主アラタの、相棒であるこの我を見せねばならんからな!!」
「片付けじゃ。」
「え?」
思ってもいない言葉が出た事に固まるリーズを気にもかけず、続ける。
「リーズはひとまず、ここの片付けじゃ。魔力を散らし、地面を冷やして固めんと、ここら一帯は永遠に草木も生えんし、どんな影響があるか分からんじゃろ? この世界の人間に紹介するのはまた今度じゃな。」
「そんな!我が主!それでは残りの時間が片付けで終わってしまうじゃないか!!」
「仕方ないじゃろう。お主の黒炎の後処理なぞお主かベルゼぐらいしか無理なんじゃから。」
「ぐぬぬ…」
「その代わりと言ってはなんだが、また呼ぶことを約束するから頑張って片付けるんじゃぞ。」
リーズはしぶしぶ、という感じで頷き了承した。
…
…
…
…
…
「終わったぞい! 」
笑顔で帰ってきた少年に、守備兵は神でも見るかのように怯えた目をしていた。
それもそのはず、人に話しても誰も信じないだろう神話の戦いのような事が、今しがた目の前で繰り広げられたのである。
「何よ、あれ…何が起きたか全然理解出来ない…あなた何者なのよ…」
城壁の上から守備兵と一緒に戦いを見守っていた巴が、恐る恐る口を開く
「そう言われると、困るのう…討伐者登録も人別帳すら、まだ登録出来ておらんからのう…今のわしは無戸籍者かのう…」
巴や、守備兵の緊張を解すかのように、アラタは答える。
「そういう意味じゃなくて……戦いが凄まじすぎて身構えたけど、やっぱりアラタね。
それより聞きたい事がありすぎて、何から聞けば良いか分からないわ…
敵の化け物にも驚いたけど、あの龍は何なのよ…あんなの神様じゃない…」
「あやつはリーズと言って、ドラゴンの王じゃよ。もと居た世界の相棒のようなもんじゃな。
ジパングに来た時に貰った【異界召喚】というスキルで来てもらったんじゃよ。あやつと知り合ったのは60年程前じゃから、その前はもしかしたら神として崇められてた時期もあったかもしれんのう」
巴はその説明を聞き驚きを隠せない。
「60年前ってあなた一体、実年齢いくつなのよ…それに【全能力向上】に【異界召喚】あと多分いくつかスキル使ってたよね? スキル2個持ちがごく稀に現れるらしい、とは聞いた事あったけど複数持ちなんて。
はじめて聞いたわよ…本当にデタラメな人ね…」
理解するのを諦めたのか巴は続ける
「聞けば聞くほど混乱するからもうやめる。
とにかく!あなたのおかげで私も守備兵も、残った民も全てこれからも生きる事ができるわ…。本当に本当にありがとう。」
「「アラタ様、ありがとうございます!!」」
「「ありがとう!アラタ様!!」」
守備兵や民の感謝の合唱にアラタは頭をかく。
合唱が終わると共に、遠くから冷却魔法で作業中のリーズの声がとどろく。
ふははは! そうだ!我が主 救世帝アラタはすごいだろう! 感謝の気持ちを忘れないようにな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます