第11話 ドラゴンの王

光の世界で、アラタは立っている。

周りの時が止まったのか、チンギスもアラタも動けない。


「ふむ、発動時に時が止まるタイプのスキルか。だいたいこのタイプは何か選択をする傾向があるが、どうじゃろな。」


はじめて使うスキルをいつものように冷静に分析するアラタの頭の中に、声が響く。


異界から召喚する対象を選んでください。貴方が出会った全ての人が対象です。対象を頭の中に浮かべ 【異界召喚】と唱えて下さい。


「ほう、これは面白いスキルじゃな。ちょうど良い、わしの変わりに広域殲滅魔法が得意なリーズに来てもらうとするか。」


別れて少ししか時間が経ってないはずだが妙に懐かしい気持ちになる。


頭の中で龍の王であり、かつての異世界での相棒、リーズを思い浮かべる。


まるで目の前にいるかのように鮮明にイメージしアラタは唱える


【異界召喚】



アラタの目の前にいつもの白いドレスを着たリーズが現れる。


リーズは、出会った時から人間の服に興味を持ち、自分の生体衣装も人間の服に寄せている。


本当はちゃんと人間の服を着たいのだが、元の姿に戻ると破れるから仕方なく生体衣装を人間の服に似せて我慢している、と言っておった。


着飾らなくても、その真っ白の髪や赤い瞳は人型でもドラゴンでも美しい、と言ったら顔を真っ赤にして照れておったのう。


アラタが懐かしみながらリーズを見ていると、

ゆっくりと目を開けたリーズがアラタを認識する。

「我が主?生きていたのか!?何故連絡を寄越さん!!」


「すまんすまん、リーズよ。わしもこの通り転生してな。新しいスキルを手にいれたのだが、バタバタして確認が遅れてのう。今、使ってみた所なんじゃよ。それよりもよく わしが分かったのう、随分若返ったはずじゃが。」


「我が主、アラタよ。事情は分からんが確かにこの世界は魔力量からして別の世界のようだ。事情は理解した。さらにあの魔族の娘より先に我を1番に呼んだ事で許そう。

それと、確かに我と出会った時と同じぐらいの年齢になっているな。だが我が主の姿形がどうかわろうと、その素晴らしい魂は変わらぬ。我からしたらどんな外見でも我が主、アラタだ。」


アラタは照れくさそうに頭をかき、

ふむ…そんなもんかのう と得心する。


チンギスは突如の光に眉をひそめる。

時間にして1秒にも満たず光は収束していく。


まさか、目くらましを行い逃げるつもりか…?


光が消えた中からさっきの童と白いドレスに身を包んだ女が現れた事により、チンギスの考えは杞憂きゆうに終わる。


「なんだ、お前は?儂の蒼狼のような、あの童の能力か?」


チンギスが投げかけた質問を無視し、女は、チンギスに背を向けたままチンギスを見もせずに小僧と話している。


偉大なる大ハーンを無視するだと…??


額に血があつまり、あまりの怒りにチンギスは二つのゴミを処分する事を誓った。

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