第4話 董卓と狼の王
ジパングに続くという道をいきながら、
醜く膨れた巨体を揺すり、その男は苛立ちを隠せずにいた
何故、何故こうなった!!何だあの小男は!
この董卓の完璧な栄華を…!
…
…
…
たかが女の事で憎き養子に裏切られ、栄華を誇った我が人生は終わりを迎えたかに見えた。
だが、やはり天は俺を望んでいたのか、気付くと見知らぬ土地で目が覚めた。
まずは建物を出て、案内されるまま街にいく。そこで何やら話をしている者から、この国は華国というらしく、ジパングという小国と同盟を組み、他の勢力や物の怪に怯えながら民は暮らしていると聞く。
今の国をまとめているのは政治家という
その男『
話しを聞き終え、街の広場に行き演説をはじめる。
幸いにもここ華国という国では、自分の事を知っている者も多く、英雄と呼ばれる者も今までは現れなかったらしい。
英雄として物の怪を討伐する、と言う建前で言葉巧みに100人ほどの若者を集める事ができた。
さあ、まずはこの若者達に悪徳の味を覚えさせるのだ。
馬に乗り、街から大きくはずれた村へいく。
董卓は大きく息を吸い、気勢を吐く。
「お前達は俺に選ばれた精兵である!!お前達は大国に産まれ、その誇りがあったはずだ!
だが今を見よ!!物の怪に怯え、聞いた事も無いような小国に媚び、貧しい暮らしをしている!
そのままで良いのか?俺は董卓だ!!
一度は天下に覇を唱えた男、責任は全て俺が取る! 奪え!犯せ!殺せ!!」
董卓の声を聞いた若者達は途端に凶暴な表情を見せる
董卓のスキル 【
この世界に来た時に手に入れた董卓の能力。
配下に置いた者の罪の意識を無くし欲を増大させるスキルである。
村人に襲いかかる兵士を横目に董卓は考える。
この村からも兵を徴収し、繰り返すのだ。
幸いな事にこの国は俺がいた世界と同じく民は腐るほどいるらしい。
繰り返せば充分な兵士が集まるだろう。
今度は邪魔をする馬鹿達はいない。
また昔のように栄華を誇る自分を想像し、董卓は下卑た笑顔を見せる。
幾度となく董卓にとっての単純作業を繰り返し兵の数が3万程になった所で、董卓は最初の街へと
平和な世なのか民と言う名の奴隷は充分すぎるほどいた。
もう少し欲しい所だが、最初の街にいた奴隷どもはどいつもこいつも戦った事が無い顔をしていた。
俺のスキルにより凶兵と化したこいつらならば、悠々と
全てを俺の足元にひれ伏させ、また栄華を極めてやる。
軍を編成した後は、俺が復活した建物を管理下に置かねばならんな。
あの憎き養子や前の世界で反董卓連合を組み、押し寄せた馬鹿共に、
天が微笑むとは思えんが、万が一がある。
もし奇跡が起きてもこちらに来た瞬間に捕縛し俺自ら殺してやろう。
これから起こる愉悦を想像し巨体を震わせ、街に向かい進軍する。
逸る気持ちが足を速めたのか一息で街まで駈けれる距離まできた。
董卓は叫ぶ
「者共!もう少しで楽しみが待っておるぞ!この董卓を帝王とする為に殺し奪い犯すのだ!」
狂兵達は雄叫びをあげ、半狂乱で走り出した。
その瞬間、先頭を走っていた1団が消失する。
先程まで2、300人がいた場所には何も無い。
地面が抉れ、文字通り消えたのだ。
「何が起きた!!!」
董卓の怒声が飛ぶ
兵達はうろたえ立ち止まっている。
「クチャクチャ…ボリッ」
どこからか不快な音が聞こえる。
兵の1人が叫ぶ。
「う、上だ!!上を見ろ!!」
そこには巨大な蒼い狼の顔がある。
先程聞こえた不快な音はこの化け物の咀嚼音で、消えたと思った兵たちはこの化け物に食われたのだ。
ふと馬に乗った子供のような男が、街より走ってくる。その周りには上空にいる化け物を小型化したようなたくさんの蒼い狼。
子供のような男は兵が消失した所の、えぐれた地面を飛び越え立ち止まると、口を開く。
「伝令も送らずに、儂がいる方向へ軍を走らせる馬鹿者がいると思ったが他国の者では無さそうだな。率いてる者よ、前へ出よ。」
董卓は大量の汗が吹き出るのを感じる。
馬鹿な、なんだあの化け物は。あんな物は現実では有り得ない。
男は再度口を開く
「聞こえぬか?二度は言わんぞ。率いてる者よ、前へでて下馬し
董卓は馬を降り、全速力で前にでる。
久しく走ってない体躯は全身で呼吸するかのように揺れ、倒れ込むように平伏する。
「お前が将か。良かったな、儂は今 機嫌が良い。全てを飲み込み版図を広げ、心の底から侵略を楽しんだ人生を終えたと思ったら、なんとまた生を受けた。更に若い身体に戻っておる。これからまた余す事なく他国を
それで、この兵どもは儂に献上する為の軍勢であろうな?」
平伏したままの董卓は答える。
「ははっ!その通りでございまする。」
逆らえない。対峙するだけで命の危機を感じる
男は満足そうに頷く
「馬と共に生きぬ民と言えど、その心構え
言うや否や、男は右手をあげる。
地面から瞬く間に蒼い狼や人型の狼が生まれ、恐怖に強ばった兵士の横に並ぶ。
「他部族と言えど結果を残せば取り立ててやる。昔からそうやってきたのでな。
これからは
理解したならば表をあげ、儂の顔を心に刻め。
儂こそが大ハーン、チンギスである。」
言われた通りに顔をあげた董卓はチンギスと名乗った男の顔を見る。
濡れたような長い黒髪と切れ長の黒い瞳をもつチンギスは端正な顔を歪ませ狼のような笑みを浮かべていた。
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