第2話 終末機構に惚れた理由
「はっはっは! シン! それで無念の敗北ってわけかい!」
俺の腐れ縁であるブロックは、俺ことシンとソリアの勝負の話を聞いて馬鹿にしたように笑った。
「そんなに笑わないでやってくださいよ。ブロック」
ブロックの弟シンドリは奴をなだめた。
この二人は一年前から、ソリアと戦う決めた時からの付き合いだ。二人は、依頼によって剣や鎧などを作る鍛冶師だ。俺の持つ氷剣シンモラもこいつらが作ってくれたものだ。——もっと言えばソリアの持つ火剣スルトもこいつらが作ったものだが。
「まあ、我々からしたら私達が作った武器同士の一騎打ちがみれてありがたいですがね」
シンドリめ、こいつも鍛冶師だな……。
「それにしても、なぜあなたはソリアさんのことが好きになったのですか?」
シンドリが俺に尋ねる。
俺がソリアを好きになった理由。
今となってはたくさんあるが、最初は――。
「実は、あいつが神と契約して最初に殺そうとした相手は俺なんだ」
「へぇ、そうなのか」
「あぁ。あの時はとても怖かったな。殺されると思って、絶望した。これで終わるんだと思って、あの日ほど死を実感した日はなかった。だけど、ふとあいつの顔を見たんだ。あいつは体を震わせて、泣いていた」
それで思った。
あいつは人殺しなんて望んでないと。
「何か理由がある、そう思った。だから、知りたいと思った。それで言ったんだ。
俺のそばにいろって」
「はあ? 何でそんなこと言ったんだよ」
「それは……。あいつが何か抱えているなら、支えなりたいって思ったんだよ」
「自分を殺そうとした相手に? お人好しもいいところですね」
「うるせぇな。俺は殺されそうになったからって理由も問わずに責めるような真似はしたくないんだよ。怒るなら、ちゃんと相手を知って怒りたいんだ」
「……そうですか。素晴らしい思想だと思いますよ」
「ありがとな」
俺はシンドリの優しさに礼をする。
「そんで、"俺のそばにいろ"って言ったら、あいつはどういう反応したと思う?」
「さあ?」
「めちゃくちゃデレたんだよ……」
「ああ……。それであの時ソリアはこいつを殺せなかったのか……」
「それで確信したんだ! あいつは終末機構なんかじゃない。人間なんだって。何でこうなったのか、知りたいと思った。そして何度もあいつの前に立ち上がった。そしていつの間にか——」
「惚れてしまったと」
「あぁ。だから俺はソリアを手に入れる。そしてあいつを救い出す。それが俺のやりたいことだ」
そうだ。
俺はあいつを救いたい。
自由にしてやりたい。
そして、恋人になりたい——。
最後のは完全に俺の欲望だが。
あいつを俺の側で幸せにしてやりたい——。
「はっはっは!」
「何がおかしいんだよ。ブロック」
「いやぁここまで熱いガッツがあんなら、こっちもお前らの武器を作った甲斐があるってもんだ」
「どういう意味だ?」
「あるぜ、一つだけソリアを救う方法が。こいつは神すら知らないちょっとした仕掛けさ」
「はあ!? あるんならもっと早く言えよ!」
「言ったところで実現できるか不明瞭だったからな」
「何だよそれ……」
全く、俺もまだまだということか。
「で? その方法は?」
「おう、それはな——」
俺はソリアを救う方法を一通り聞いた。
「はあ!? そんな方法で!?」
「いいじゃねぇか! 誓いのやつだと思えば ばよ!」
「ええ。ロマンチックじゃないですか」
こいつら……! 他人事だと思って……!
やれやれ。
方法はあれだが、あいつを解放する方法はわかった。
後は、あいつの気持ち。
大丈夫。
きっと伝わるはず。
「……決めた」
俺はこの機会をくれた二人の鍛治師に決意を告げる。
「俺は明日、あいつと付き合う。絶対に」
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