第36話 『星見 結愛』
応援、☆評価など誠にありがとうございます(^-^ゞ 次回はいよいよ『最終話』です!
◆ ◆ ◆
「はて? なんで俺たちは、“こんな所”に居るんだ?」
首を傾げるジョッシュに、私は何も言えなかった。どこかの山の跡地だろうか? きれいに平らになっていた。
私たちはここで、“何かしたの”だろう。けど、その『何か』が思い出せなかった。
全体像がぼんやりしていて、“誰か”と戦ってたような……(´・ω・`)? 断片的なピースが欠けてて、なんだか気味が悪いね。
「巫女様……」
「へ…………?」
振り向いてびっくり(; ゜ ロ゜) 数え切れないほどの人たちが、私を必死に拝んでいた。
「ユウナ……!」
「大丈夫だよ、ジョッシュ。この人たちに『悪意』はない。えっと……皆さんは、こちらで何を?」
私が何気なく訊いてみると、驚くべき答えが返ってきた。とある『邪悪なる者』が歪みと集まった魔力を吸収し、崩壊した王国に取って代わりこの大陸の支配を目論んだ。
で、私とジョッシュがその野望を打ち砕いて、みんなを解放したみたい。その『邪悪なる者』の正体は分からないけど、今となっては確認しようがないもんねぇ。
「私たちは王国を失い、弱みにつけ込まれてしまいました。巫女様、本当にありがとうございます」
住んでたみんなに罪はないよ。私はユウナタウンの場所を案内した。街の人たちなら、きっと受け入れてくれるだろう。
――ゴゴゴゴ……!
皆が去った後、突如激しい地鳴りがした!
「きゃ……!」
「ユウナ……!」
ジョッシュが、私を庇ってくれた。しばらくして、地鳴りは収まった。
「大丈夫か?」
「……ジョッシュ。何……アレ……?」
私が指差す方には、巨大な穴がぽっかりと口を空けていた。奥には『あの場所』……学校の帰り道の交差点が見えた。
「ユウナ、ついに『この時』が来たんだな」
「……………………」
ジョッシュの一言に、私は何も答えられなかった。いつかは来る……分かってはいた。
歪みと『邪悪なる者』から吸収した膨大な魔力は“私という殻”を破り、今まさに溢れ出ようとしていた!
もう私に『アレ』を吸収する力は残されてない。放置すればどんどん肥大化して、手に負えなくなく。
止める方法は唯一つ。私がこの世界から
私とジョッシュの『答え』は決まってる……なのに。私の脳裏に彼との出会いからこれまでが、走馬灯のように流れた。
彼とは森の中で出会い、一緒に歪みの問題や町の発展、さらに私が還る方法まで、本当に色々と尽くしてくれた。
共に喜び、共に悩み、ここまで二人で来た。ジョッシュがいなかったら、私はどうなってたか分からない。
それこそ人知れず、破滅を迎えてたかもしれない。彼がいれくれたから、私は様々な困難を乗り越えられた。
そして、二人で『ある決断』を出した。もし『この日』を迎えたら、私は『元の世界へ還る』んだって。
「………………………………」
分かってたハズだ。これが『ベスト』だって。私がこの世界に留まる限り、歪みは決して
いつこの世界に『災い』をもたらすのか、全く予測できない。だから、私は還らなきゃならない……。
分かってるのに…………なんで、涙が止まらないんだろう。
嗚咽する私を彼は、そっと抱き締めた。
………………ぁ…………………
「ユウナ、俺は君が出した結論を尊重する。ユウナが護ろうとした世界は、誰にも否定できない」
「ジョッシュ……」
「だから、自分が出した『答え』に誇りを持て。俺は胸を張って、君を見送ることができる」
そう言ってくれるのは嬉しい。嬉しいけど……
「ジョッシュは……寂しくないの? 私と会えなくなるのが……!」
「そりゃ寂しいに決まってる! 本当なら、片時だって離したくない! でも……『ちょっとの間』だけ待っててくれ。ワガママなのは分かってる」
彼の抱く力が強くなった。ジョッシュ……あなたは、なんでそんなに優しいの? ワガママなのは、私のほうなのに……。
「必ず逢いにいくから……! ユウナがどこにいても、必ず見つけ出す! 俺を信じてくれ!」
信じてくれ……その一言で、やっと私も踏ん切りがついた。これ以上、彼を困らせるわけにはいかない。
「うん……うん! 待ってるよ、たとえ私がお婆ちゃんになっても!」
「そんなに待たせるつもりはないけどな」
お互いおでこをくっつけ合い、指切りげんまんする。見つめ合い、どちらからでもなくキスをする。
一瞬にして、永遠の時間。
ジョッシュ……本当にありがとうね。
神様、彼と出逢わせてくれてありがとう。
私は『世界一』幸せです…………。
私の体は、ゆっくりと吸い寄せられていく。彼はいつまでも、私を見送っていた。まるで、デートの帰りみたいに一言だけ呟いた。
「
私も「またね」とだけ返す。必ず、また会うんだ。最愛の彼と。それまで、
私は元の世界へと『還って』いく。異邦人の帰還者『第一号』として……。
◇ ◇ ◇
…………
……………………
…………………………………………
どこからともなく、私を呼ぶ声が聞こえる。とても『懐かしい』声だ。あれは確か……
次第に私の意識は、ハッキリしていく。なんだか夢から覚めるような感覚だ。そして……
「ん……」
私はぼんやりと目を開けた。『見知らぬ天井』が見えた。ここって……
「「結愛……!!」
私が上体を起こすと、両親が泣きながら私に抱き着いた。お父さんにお母さん……?
「よく目を覚ましてくれた! 医師はもう二度と、“目を覚まさない”かもしれないって言ってたのに……!」
…………? 一体、なんのこと……?
「本当によかったわ……! もうダメなんじゃないかって思ってたの! あなたは学校の帰り道、交差点で『
…………………………………………え?
私は頭が真っ白になった。交通事故……半年間、意識不明……私の身に一体、何が……?
私は懸命に、起こったことを思い出そうとする。けれども……
何も
思い出せないまま、私の『停まってた時間』は静かに動き出した……。
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