第35.8話 『悪役令嬢物語』(終)

 いつも応援、ありがとうございます。あと『2話』で完結します(^-^ゞ


 ◆ ◆ ◆



――総本山。


 西蓮寺 瑤が、たどり着いた『最後の地』だ。王国は崩壊し、もう『帰る場所』はない。


 星見 結愛はあの『小さな町』を、今や王国を超える街に発展させたとか。衰弱どころか、崩壊させた瑤らとは『真逆』だ。

 同時に召還されたにも関わらず、何故にこうも『差が出た』のか? 慢心、環境の違いか? いずれにしろ、次で終わる。


 流石の瑤も『同じ相手』に三度、後塵こうじんを拝するつもりはなかった。


 まずは早急さっきゅうに、体制を立て直す必要がある。幸い王国の難民が多く流れてきたので、手間はかかったが地道に『カリスマ』でコントロールしつつ、魔力も徴収した。


 この魔力でまずはジョルジュに『光の加護』を付与し、通常ダメージが通らないようにした。

 無論、瑤を守る為の『無敵の盾』だ。それくらいは、役に立ってもらわなければ。


 星見 結愛も焚き付けておいた。街を攻め入ると言ったが、もちろん誇張してある。そもそも『信者』のほとんどは一般人だ。ああ言ったほうが、確実に来るだろう。



――そして、ついに迎えた『決戦』


 予想通り押されたが、まぁ想定内だ。ここで『盾の皇子サマ(笑)』を呼び出して、形勢逆転。が、いくら呼んでも出てこない。


……まさか私を『裏切った』!? 盾が逃げ出してどうするのよ!? 本当に使えないヤツね!


 とはいえ、今さら星見 結愛に隙を見せるわけにはいかない。あれほど煽ったのだから。どうせジョルジュも視ているだろう。

 瑤は奈落へ落下したと見せ掛けて、転移で頂上まで戻った。気配も『遮断』したので、ジョルジュも気づいてない。


 瑤は懐から、一本のナイフを取り出した。『緊急時』に温存してたが、まさかコレを使う羽目になるとは。

 とはいえ、加護の状態ではジョルジュに手出しできない。他力本願はしゃくだが、星見 結愛に期待するしかない。



 メシア(笑)と闇の巫女らの戦いは、熾烈しれつを極めた。なんせ『元が弱い』から、えらく苦戦している。


……私の提案通りにしていれば、もう終わっていたのに。本当に弱男は、頭まで弱いから始末に終えないわ。


 星見 結愛は、加護を『無効化』した。最大の障害はなくなった。瑤も「よくやったわ」と、初めて敵を称賛した。

 後は『最後の仕上げ』だけど、すぐに出ていってはつまらない。見たところ、星見 結愛にもう余力はない。相方ジョッシュもピンチだ。


「……何をまごついてるの? 星見 結愛、早く私に助けを求めなさいっ!」


 瑤は思わず声に出した。もうあの娘は、自分しか頼れない。さぁ媚びてみなさい!



「お願い……誰か助けて。誰でもいいから……!」



 瑤はニッコリと微笑んだ。やっと聞けた台詞だ。『悪役令嬢わたし』が『正ヒロインあの娘』に勝利した瞬間だった。

 よく出来ましたと、頭を撫でたいくらいだ。瑤はナイフを手に、颯爽さっそうと姿を現した。



「ならその役目、僭越せんえつながら私が引き受けるわ」



 ◇ ◇ ◇


「さて、ここまで話したら後は分かるわね。ジョルジュ、あなたは私を利用していたつもりだけど、完全に『逆』だったってワケ。まさかこうなるとは思わなかった? 私を『使い魔』程度に考えないでほしいわね」


 ジョルジュは反応が乏しいが、顔が引きっているのが面白い。


「私を召還したのが間違いだったって言ってたけど、ええその通りよ。そもそもこの手の話って、安易に『異邦人』に頼り過ぎね。あなた達の世界の問題なのだから自力で解決するか、完璧に飼い慣らすくらいしないとね」


 もうどれだけの時が過ぎたか。まぁ『肉体を棄てた』状態なら、それすらも些細なことだが。



「これにて『終劇』でございます。いかがだったかしら? 一世一代の『悪役令嬢わたしの物語』は? そうね……タイトルを付けるとすれば、“悪役令嬢だった『私』が幸せになるまで ~正ヒロインにざまぁ出来て幸せです。なんの役にも立たなかった王国は崩壊しましたが、どうぞ『私たち』にはお気遣いなく~”ってね。めでたしめでたし」

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