第35.4話 『悪役令嬢物語』②

 星見 結愛が追放されてから、さらに一月ひとつきが過ぎた。最近の瑤の日課は、ひたすら浄化を繰り返す単調な日々だった。

 退屈を持て余して、少しでも紛らわす為にジョルジュに『面白い話』を求めた。結果、身の上話という最低限の話は聞けた。


 そんな中、瑤はある日大臣とその側近から、偶然にも『反乱』の話を耳にした。王国内でも現国王政権への不満は高く、機を見て内乱を起こそうとするものだ。


 確かに王国内は、“不穏な空気”が漂っていた。とはいえ、私には関係ないことねと瑤は思った。『この時』は。


 程なくジョルジュから、北の『小さな町』で歪みが増殖していると聞いた。向かってみると案の定、星見 結愛は生きていた。

 ここらで『実力の差』を見せて、黙らせようと思った。まさか、あんな結果になるなんて……!


 瑤は生まれて初めて、これ以上ない『屈辱』を骨の髄まで味わった。同時に、帰還以上に新たな『目標』が出来た。すなわち、星見 結愛への『完全勝利』だ。


 王国に帰る際、瑤はジョルジュに『計画』の第一段階を話した。『打倒』星見 結愛の為、本格的にトレーニングをすること。

 そして自ら『悪役令嬢』を自称し、秘密裏に『裏の計画』を推進することだ。



 ◇ ◇ ◇


「大臣、ちょっといいかしら?」

「……? 珍しいですな。巫女様が、私めに話し掛けてくるなど」


 私は大臣がフリーになった時、“例の件”について話した。糸目の大臣の眼が、一気に開いた。


「……っ! 何故それを……!? こちらへ……!」


 大臣は血相を変えて、慌てて私を執務室まで案内した。『極秘』だから当然だが。

 大臣によると、もう民衆の不満は限界突破している。そこで大臣が『反乱軍』をまとめ上げ、一気に国王の首を狙う算段だ。


 そこで瑤は、大臣にある『提案』を持ち掛けた。私と皇子が、いつも通り浄化に赴く。その際、国王直近の近衛兵を護衛に連れていく。

 まぁ反対されるだろうけど、そこは瑤が新たに得た能力の『カリスマ』で、強引に納得させる。


 瑤は『手っ取り早く』結愛らを片付けるので、隙を見て『一斉蜂起ほうき』してほしい。流石に一筋縄ではいかないので、瑤も速やかに合流して邪魔な国王には『退場』してもらう。


 ジョルジュはまぁ、上手く言いくるめれば問題ない。適当に話を作れば、あっさり信じるだろう。むしろ、やっと自分の時代がきたと喜ぶ。


 バ○とハサミは使いようだ。瑤は『見返り』として、国内が落ち着いたら民衆の膨大な魔力を徴収する。でもって、この世界とは「はいサヨナラ」という計画だった。


……穴など、どこにもなかった。何故こうも全てが『裏目』に出るのか。


 星見 結愛にまたも辛酸を舐めさせられたどころか、帰ってきたら王城は炎上。まさかとは思ったが、その『まさか』だった。

 瑤らが王国を離れていたのは、わずか『三日』程度。誰も『ここまでやれ』とは言ってない。


 要するにあの大臣は、瑤の予想以上に『有能』だった。この短期間に、反乱軍をまとめ上げるとは。ほぼニー○と変わらない皇子(笑)とは、大違いだ。


 使える駒を喪い、無用の長物が残るとはなんとも皮肉だ。計画も一から立て直し……もう『手段』は選んでられない。

 瑤は『一世一代』の勝負に出よう、と腹を決めた。 

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