第30話 あなたがいてくれてよかった

 はるかが『宣戦布告』した翌日。私はよく眠れず、翌日を迎えた。朝食もあまりノドが通らず、ロゼちゃんが心配した。


「お姉ちゃん……あんまり元気なさそうだけど、大丈夫?」

「あっ、ごめん。私は大丈夫だよ」


 みんなを不安にさせるわけにはいかない。私は『いつも通り』振る舞った。


「そういえば、お主ら付き合ってるそうじゃのぅ?」

「へ……?」


 急にお爺さんに話題を振られて、私はきょとんとした。


「あらあら、若いこと。こりゃ『将来』が楽しみだねぇ」

「もぅ、お婆さんったら」


 顔を赤くする私に、お爺さんは「わははっ」と笑った。


「ユウナよ、ワシらは気にせんでええぞ? 幸いワシの『一番弟子』が、将来有望でのぅ。安心して、農場を任せられるわい」


 そっか……何気ない日常だけど、少しずつ変化してるんだね。


 朝食を終えた私は、朝の散歩に出かけた。



 ◇ ◇ ◇


 街は朝から賑わってた。最近は、他の国から来る人も多い。私は道ゆく人と挨拶あいさつを交わしながら、石畳の階段を上っていく。

 頂上に着くと、見晴らしのいい展望台がある。私は考えて事をしたい場合、よくここに来る。眼下には、いつもと変わらない風景が広がった。


「ユウナ」


 振り向くと、ジョッシュがいた。私は少しだけ逡巡しゅんじゅんするも、彼に思いの丈を打ち明けた。


「ジョッシュ……やっぱり私、できないよ。この街を見捨てるなんて……」

「……………………」


 彼は何も言わず、黙って聞いてくれた。


「私は……良かれと思って、歪みをなくした。けど、それが『しっぺ返し』になるなんて……。ねぇジョッシュ、私はどうすればいいの!? もう分かんないよっ」


……彼に当たっても仕方ない。それでも私は、叫ばずにはいられなかった。


 彼はしばらく瞑目めいもくして……


「……じゃあ、俺と一緒に『逃げる』か?」

「……………………え?」


 彼の予想外の『答え』に、私は困惑した。


「少なくとも、連中の狙いは『俺たち』だ。逃げて逃げて、逃げまくればいい。ユウナとの『逃亡生活』なら、俺は耐えられる」


「そんな……!? 街を放ったらかしにして、私たちだけ逃げるなんて! 相手は世界の為なら『こんな街』なんて、どうでもいいって言い切ってるんだよっ!?」


……私、なに言ってるんだろ? 自分から、どうすればいいとか聞いたクセに。


 彼はそんな私を、優しく抱き寄せた。


 …………ぁ…………


「ユウナ、悪い。冗談でも、こんなことを言うべきじゃなかった。でも、ユウナの『本音』が聞けてよかった」


「………………え?」


「ユウナは、この街を『護りたい』んだろ? それは俺も同じだ。たとえユウナが『どうなろう』が、必ず俺がなんとかする」


「…………っっ!! ジョッシュ……!」


 それが私の『限界』だった。彼に必死に抱き着いて、ワンワンと子どものように泣いた。


「ユウナ、どうするか俺と『一緒に』悩もう。どんな『結論』を出しても、俺はユウナの意思を尊重する」


 ああ……ジョッシュ。あなたがいてくれて、本当によかった。



 ◇ ◇ ◇


――日が暮れて、私たちは『一晩を共に』した。


 『初めて』で緊張したけど、彼はすっごく『優しく』してくれた。


 私たちは『身も心も一つ』になって、指を絡めた。そして、静かに夜が明けた……。



 私と彼は『決断』した。『誰も』犠牲にしない……それで、彼とも『いつまでも』一緒にいようって……。 

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