第30話 あなたがいてくれてよかった
「お姉ちゃん……あんまり元気なさそうだけど、大丈夫?」
「あっ、ごめん。私は大丈夫だよ」
みんなを不安にさせるわけにはいかない。私は『いつも通り』振る舞った。
「そういえば、お主ら付き合ってるそうじゃのぅ?」
「へ……?」
急にお爺さんに話題を振られて、私はきょとんとした。
「あらあら、若いこと。こりゃ『将来』が楽しみだねぇ」
「もぅ、お婆さんったら」
顔を赤くする私に、お爺さんは「わははっ」と笑った。
「ユウナよ、ワシらは気にせんでええぞ? 幸いワシの『一番弟子』が、将来有望でのぅ。安心して、農場を任せられるわい」
そっか……何気ない日常だけど、少しずつ変化してるんだね。
朝食を終えた私は、朝の散歩に出かけた。
◇ ◇ ◇
街は朝から賑わってた。最近は、他の国から来る人も多い。私は道ゆく人と
頂上に着くと、見晴らしのいい展望台がある。私は考えて事をしたい場合、よくここに来る。眼下には、いつもと変わらない風景が広がった。
「ユウナ」
振り向くと、ジョッシュがいた。私は少しだけ
「ジョッシュ……やっぱり私、できないよ。この街を見捨てるなんて……」
「……………………」
彼は何も言わず、黙って聞いてくれた。
「私は……良かれと思って、歪みをなくした。けど、それが『しっぺ返し』になるなんて……。ねぇジョッシュ、私はどうすればいいの!? もう分かんないよっ」
……彼に当たっても仕方ない。それでも私は、叫ばずにはいられなかった。
彼はしばらく
「……じゃあ、俺と一緒に『逃げる』か?」
「……………………え?」
彼の予想外の『答え』に、私は困惑した。
「少なくとも、連中の狙いは『俺たち』だ。逃げて逃げて、逃げまくればいい。ユウナとの『逃亡生活』なら、俺は耐えられる」
「そんな……!? 街を放ったらかしにして、私たちだけ逃げるなんて! 相手は世界の為なら『こんな街』なんて、どうでもいいって言い切ってるんだよっ!?」
……私、なに言ってるんだろ? 自分から、どうすればいいとか聞いたクセに。
彼はそんな私を、優しく抱き寄せた。
…………ぁ…………
「ユウナ、悪い。冗談でも、こんなことを言うべきじゃなかった。でも、ユウナの『本音』が聞けてよかった」
「………………え?」
「ユウナは、この街を『護りたい』んだろ? それは俺も同じだ。たとえユウナが『どうなろう』が、必ず俺がなんとかする」
「…………っっ!! ジョッシュ……!」
それが私の『限界』だった。彼に必死に抱き着いて、ワンワンと子どものように泣いた。
「ユウナ、どうするか俺と『一緒に』悩もう。どんな『結論』を出しても、俺はユウナの意思を尊重する」
ああ……ジョッシュ。あなたがいてくれて、本当によかった。
◇ ◇ ◇
――日が暮れて、私たちは『一晩を共に』した。
『初めて』で緊張したけど、彼はすっごく『優しく』してくれた。
私たちは『身も心も一つ』になって、指を絡めた。そして、静かに夜が明けた……。
私と彼は『決断』した。『誰も』犠牲にしない……それで、彼とも『いつまでも』一緒にいようって……。
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