第29話 『計画通り』【瑤視点】

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 ◆ ◆ ◆



「ジョルジュ、戻ったわ」

「……ここでは、救世主メシアと呼べと言ったハズだ」


 総本山に構えた神殿にて、メシアははるかたしなめた。


「はいはい。ちゃんと『宣告』はしてきたわ。あの娘らは、確実に来るでしょう。って、聞いてるの?」


「クク……これだけの信者がいれば、得られる『魔力』も膨大となろう。余は『救世主』として、未来永劫に君臨する!」


 『信者』を前に両手を広げ、悦に浸るメシア。瑤は小さく一つ、咳払いをした。


「救世主サマ?(笑)その信者を集めたのは、“私だと”いうことをお忘れなく」


 光の巫女には、洗脳に近い『カリスマ』の能力があった。瑤はこれで『世界の危難』を訴え、民衆の『恐怖』につけ込んだ。


「無論だ。ハルカよ、余と共にこの世界のゆく末を見届けようぞ」


「別にこの世界がどうなろうが、知ったことではないわ。それにあなたには、まだ『利用価値』があるから協力してるまでよ」


「それは結構。……時にハルカよ。もし『全て』が終わったら、貴女はどうするつもりだ?」


 瑤はいぶかしげに、メシアを見つめた。


「……いまいち質問の意図が読めないけど、もうこの世界にも『飽きて』きたわ。『休暇バカンス』はこれくらいにして、そろそろ元の世界に還りたいわね。その時は『約束』通り、今度はあなたに協力してもらうわ」


「君らしい回答だな、よかろう。貴女の働きには期待しておるぞ、ハルカ」


……相変わらず、掴みどころのない男ね。ハルカはそう思いながら、釘を刺しておく。


「念の為に言っておくけど、私を『裏切ろう』なんて思わないことね。私は同情されるのと、裏切りは許さないわ」


「肝に命じておこう。闇の巫女とその『付録』さえ始末すれば、もう我らに仇なす者はいない。クク……世界の『夜明け』は近いぞ!」


 瑤にとっては至極どうでもよかったが、まぁ『今のうち』にいい夢を見させておこう。どの道、“終わり”は近いのだから。



 ◇ ◇ ◇


 瑤は神殿の自室に戻り、やっと一息ついた。『カリスマ』には常時、魔力を垂れ流しているようなもの。

 巫女だから耐えられるが、常人ならとうに『廃人』となっている。


「さてと、ここまでは『計画通り』ね」


 瑤はそう呟きながら、テーブルを目を向けた。その上には、一振りのナイフがあった。ジョルジュが、実父じっぷを手に掛けた『あのナイフ』だ。こっそりと回収していた。


 瑤はおもむろにそのナイフを手に取り、ほくそ笑んだ。


「どう転ぶかは『状況次第』だけど、いずれにしろ私の『勝利・・』は揺るがないわ」


 今回の作戦は『完璧』だ。『穴』などどこにもないし、破れるものなら破ってみろと言いたい。



「さぁ星見 結愛、早く来なさい。『悪役令嬢わたし』が、盛大に持て成してあげるわ。貴女は私に『完全敗北』するのよ。その時の貴女の表情カオが見物ね。ウフフフフフフ」

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