第27話 ありがとね、出逢ってくれて

「え…………」


 私は大きく目を見開いて、振り向いた。ジョッシュは真剣な眼差しで、私を見つめる。



 私…………今『告白』された……?



「ユウナ……俺、もうユウナが『いない世界』なんて考えられない。俺はユウナを離さねぇし、離したくもない」


……すごく嬉しかった。彼はずっと間近で、私を見守ってくれた。だから、彼には誠意を持って答えたい。


「ジョッシュ……ありがとね、私を好きになってくれて。私も……『好き』だよ、あなたのこと」


「ユウナ……」


「でも……あなたの言う通り、私は『迷ってる』んだ。私だって、出来ればずっとあなたと一緒にいたいよ……」


「それなら……ずっと居ればいい」


 え……彼は私の両手を握り、熱く訴えた。


「ユウナ……俺、この街の『代表』になろうと思う。君を『幸せ』にする為に」


「代表……? それって……」


「ああ。ホテルの元町長オーナーから、打診を受けた。町長との二足の草鞋わらじは無理だから、見込みがある俺に任せたい。俺なら上手くまとめられるって、太鼓判を押してた」


 ジョッシュが新しい町長……


「以前の俺ならこういうのは、わずらわしいって思ってた。けどユウナが居てくれるなら、いくらでも頑張れる。俺を支えてくれないか? その……『一生』だ。『俺だけ』のユウナになってくれ」


 いきなり求婚プロポーズ……!? 実に彼らしい。もちろん嬉しいよ。


「ジョッシュ……ありがとね。私の為にそこまで言ってくれて。でも、やっぱり『考える時間』が欲しいの。ちょっとだけ待ってくれる?」

「もちろんだ。答えを急かすつもりはない。返事はいつでもいいからな」


 そう言ってくれるだけで、すっごく気持ちが楽になった。私も『前向き』に考えたい。


「ユウナ。早速だが明日、時間あるか?」

「え……? 明日はお仕事もお休みだけど、またなんで?」


 きょとんとする私に、彼は少しだけおどけた。


「なんでって、“デート”だよ。俺たち、もう『付き合ってる』んだろ?」


 へ? そ……そうだった。私たち、もう『相思相愛』なんだよねρ(тωт`)イジイジ


「う……うん。もちろんOKだよ」

「そっか、よかった! とっておきの場所を案内するからな。楽しみにしててくれ!」


 その後、彼は私をホテルまで送ってくれた。あんなに嬉しそうなジョッシュは初めてだ。私も楽しみだよ^^



 ◇ ◇ ◇


「わぁ! すっごくキレイ!」


 翌朝……彼は約束通り、私を砂浜ビーチに連れていってくれた。ユウナタウンからちょっと離れた位置に、こんな穴場スポットがあったなんて。

 彼は私を丁寧に馬に乗せて、ここまで案内エスコートしてくれた。今まで以上に、彼との距離が近くて朝から胸が弾んだよ:*(〃∇〃)*:


「このビーチは、今まで歪みの影響で閉鎖されてた。今じゃ少しずつ人が戻ってる。まだ誰もいないから、朝一で来て正解だったな」


 ホントだねぇ。なんだか広いビーチを独占してるみたい。私と彼は、砂浜で追いかけっこした。


 こうしてると、改めて彼と付き合い始めたんだって実感する。私はヒールを脱いで、彼と波打ち際で戯れた。

 彼が悪戯で、私に水を掛けてきた。私もやり返し、なんだか二人で童心に戻ったみたい。


 その後も彼と、色んな場所を巡った。彼が武者修行してた頃、訪れた場所なんだって。自然豊かな山、荘厳な滝、静かな湖畔など、こんなに世界って広かったんだって思う。


 私が早起きして作ったお弁当も、彼はすごく喜んでくれた。



 楽しい時間はあっという間で、もう陽は海に沈み始めてた。私と彼は指を絡めながら、波打つ砂浜を歩いてた。


――ザザーン。


 波の音が響く……お互い無言だ。もう少しで、彼との時間も終わっちゃう。



――このまま時間が、停まっちゃえばいいのに……。



 そう思える日がくるなんて。最初は一方的に召還されて訳が分からなかったけど、いま私の隣には『最愛の彼ジョッシュ』がいる。


 私の気持ちは揺らぎ始めた。彼さえいてくれれば、もう他に何も要らないって……。


「ユウナ、今日はありがとな。俺に付き合ってくれて」

「え……? そんな、お礼を言うのは私の方だよ。すっごく楽しかった」


 私たちは向かい合い、また無言になった。そんな私の肩に、彼は優しく両手を置いた。



 ……………………ぁ……………………



「ユウナ……やっぱり、君がいない世界なんて考えられない。俺と一緒に『この世界』で生きてくれないか?」


「…………っ!」


 ジョッシュ……私ももう、あなたがいないなんて考えられないよ……。私は小さく頷いて、そっと目を閉じた。



 重なる唇……世界で一番短く、そして『長い』時間だ。



 私の瞳から、一筋の涙がこぼれた。嬉しくて愛おしくて……もう感情がこんがらがって、よくわかんない。けど、一つだけ言えるのは……



 ありがとねジョッシュ……私と出逢ってくれて。



 やがて、離れる唇。私たちは、ただただ見つめ合った。もう『離ればなれ』になることはない……そう信じて疑わなかった。



「そろそろ、お開きにしてもらっていいかしら? これでも大分待ったほうよ」


 聞きたくない声で、私たちは『現実』に強制送還された。振り向くと、案の定生きてた西蓮寺 瑤の姿が。もうこういうのは、ウンザリだ(=д=)


「あのさぁ……アンタ、なんなのマジで? 三流の悪役だって、もう少し空気は読むよ?」

「そもそも出てくる場所が違うだろ? 日陰者らしく、下水道でネズミと戯れてろ」


 ジョッシュが悪態を吐くも、瑤はせせら笑っている。もう小悪党じゃなくて、外道だね。



「安い挑発は結構よ。私たちは、“世界を救う”という崇高な理念がある。星見 結愛は歪みを『吸収』しただけで、消滅させた訳じゃない。分かるかしら? 貴女の存在が、この世界に『災い』を撒くのよ!」

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