第22話 どうぞお気遣いなく (ざまぁ回 ②)

「星見 結愛。少し見ない間に増長しているみたいだけど、そろそろ『超えられない壁』というものを教えてあげるわ」


 よくも、しゃあしゃあと言えたもんだね。日頃の行いを省みた方がいいよ(-。-;)


「自意識過剰なのはいいけどさぁ。この前、いの一番に逃げ出した人に言われたくないかなぁ?」

「アレは『戦略的撤退』だって言ったでしょ!? いちいちカンに障る娘ね!!」


 はるかが、私に矢の雨を降らせてきた! わわっ、なんか明らかに『短気』になってないっ!?


――キュポーン!!


 ほとんど無効化したけど、瑤は特段慌てた様子はなかった。


「想定済みよ。相変わらず、芸がないわね」


 瑤が私に向かって、はしってくる! え、速くないっ!? 一瞬で間合いを詰められ、私の両手を乱暴につかむ! ちょ……!?


「終わりよ、星見 結愛! 浄化っ!」


――カッ!


 私たちは、目も眩む光に包まれた! けど、それ以上は特に何も起こらなかった。あのさぁ……私じゃなくて、歪みを浄化しなよ(ノд`;)


「……っ!? どうしたハルカっ、三分で片をつけるんじゃなかったのかっ!?」


 防戦一方のジョルジュが叫んだ。向こうは、以前とあまり変わってないね。ジョッシュが『強く』なっただけかな? ていうか、いい加減手を離してね(-_-;)


「こんなハズじゃ……もう許さないわ! 星見 結愛っ、貴女を『絶望』させてあげるっ!」


 瑤は私から離れ、何やら早口で唱える。ヴォン! 光の弓矢が現れ、瑤の手元に収まった。その才能、もっと有効に使えないかなぁ?


「さぁ後悔なさいっ! 星をも砕く一撃……光の螺旋オーロラっっ!!」


 命名ネーミングセンスはよく分からないけど、これってシャレにならないでしょ!? 光の矢の集束版みたいで、膨大な光の渦が螺旋状で放たれた!


 私じゃなくて、ジョッシュ・・・・・に。


 え…………? 一瞬、私の思考は氷結フリーズした。瑤はわらっていた。交戦中のジョッシュは反応が遅れ、振り向いた時には眼前に来光が迫っていた!



…………やめてっっ!!



 私は咄嗟に、そう『願う』しか出来なかった。光の奔流は僅かに……本当にスレスレでジョッシュをかすめ、後方の魔族らを呑み込み消滅した! ジョッシュは衝撃で岩にぶつかり、意識を失った……。


 あんなのを人間相手に……ジョッシュに向けるなんて……! ザワ……私の中で、“黒い衝動”が渦巻いた。


「……えぇい! 先ほどから、何をしておるのだハルカっ! フリーの状態で外すとか、無能の極みぞっ!」

「ちゃんと狙ったわ! 直前で、軌道が逸れる・・・・・・なんてあり得ないっ!」


 連中は何やら喚いているけど、もう知ったことじゃない。私は……アイツらを破滅おわらせたい!


 ズズズ……!


 歪みが動き出す。湖畔の時みたいに意思・・を持ってるみたい。歪みはそのまま、私を頭から呑み込んだ!

 目を見張る瑤ら。『変化』は、それだけではなかった。歪みの中心に『空白』ができ、私を中心に渦巻いた!


「な……何が?」


「何してるの? 早く浄化しなよ? それとも『出来ない』の?」

「アンタこそ……何してるのよぉ!? まさか歪みを全て・・『吸収』したっっ!?!?」


 私の意思・・・・とは無関係に、言葉が口を出た。瑤は顔面蒼白となり、震えあがった。そんな瑤らに、私は手を前に出した。


「消えちゃえ。終焉の焔・極アルティメット・メガフラッシャー


――ヴォンッッ!!


 形容できない衝撃が疾り、ずっと後方の山が消し飛んだ! ここが荒野でよかった。瑤はその場にへたり込み、スカートを濡らした。


「これが『最終警告』だよ? ていうか、取るに足らない小物は大人しくしてなよ。私たちは『平穏』に暮らしたいだけだから、どうぞ『お気遣い』なく」


 瑤は腰を抜かしていて、聞いてるかも定かじゃない。ん……?


 ゴゴゴゴ……!


 私の一撃で、空間にポッカリと『一人分』入れる穴が口を開けた。穴の『向こう側』には、私たちが召還される前の光景が見えた。『元の世界』の交差点がね。


 私は『穴』を指差しながら、瑤を促した。



「どうしたの? 早く飛び込みなよ。可及的速やかに還りたいんでしょ?」 

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