第21話 『闇の巫女』

「これって……」


 私は思わず絶句した。一面に広がる砂漠をじわじわと侵食する歪み。これじゃ乾いた大地どころか、死の砂漠だよ……(ノД`)


「……予想以上に酷いな。光の巫女サマは、何をしているのやら」

「でも……感じるよ。ここは『魔力』がみなぎってる」


 放置はよくないけど、この歪みを利用できればあるいは……


「……っ!? ユウナ、危ないっ!」


 ジョッシュが私を抱えて、大きく跳んだ! 直後、ドゴォ! と衝撃が走った。なになに、どうしたのっ!?


「ハズしたか、カンだけはいーな? こんなヘンピな場所までワザワザ来るとは、モノ好きなこった」


 見上げると、多数の魔族が翼を羽ばたかせていた。いつの間に……!?


「……随分、派手な歓迎だな? そもそもお前らの目的はなんだ?」

「ククッ、まーそう構えなさんな。オレらは、お前らを『スカウト』しに来たンだからヨ?」


 は……? いきなり何を言って??


「スカウト……だと?」


「オウよ! オレら魔族は魔王様を喪い、まとまらねーんだわ。イマ、新たな『指導者』を求めてる。お前らはソレに打ってつけ、つーワケよ」


「訳の分からんことを。他を当たれ」


「そーいうワケにもいかねーんだよ。お前らはオレらに近い。この場に居るのが、ナニよりの証拠だ。これだけの歪みで、正気を保っていられる方がどーかしてるゼ」


 魔族によると、普通の人間は歪みから発生する瘴気しょうきに耐えられないそう。え、ちょっと待って。それなら瑤やジョルジュはどうなの? 見たところ、なんともなかったけど。


「しかも我らの魔王様は、今際いまわに『魂の残滓ざんし』を遺した。その因子は、“どこぞの”ニンゲンの内に眠っている。その者の激しい『憎悪』が引き金トリガーとなり、魔王様の『生まれ変わり』は現世に再び降臨されるのダッ!」


 なんかいきなり、スケールが大きくなったよ((( ;゜Д゜))) 魔族は「さらにッ」と付け加える。


「その『魔王』様に、見初みそめられた者こそが『闇の巫女』ッ! このお二人方が並び立つ時、歪みは世界を覆い尽くし素晴らしき『闇の世界』となるのだッッ」


 魔王……それに闇の巫女。瑤が光の巫女なら……って、私は何を考えてるの!?



「盛り上がってるみたいね? けど、思い通りになると思ったら大間違いよ」

「その為に我々がいるのだ。『世界の均衡』を保ち、正しく導く為にな」


 この声は……! 振り向くと、いつの間にか瑤にジョルジュ、それに完全武装兵が多数いた。どうでもいいタイミングで出てくるよねぇ(-。-;)


「チッ! ただでさえ、ややこしいというのに……!」

愚弟ジョッシュよ、見下げ果てたぞ。まさかウラで、魔族と通じていたとはな」


 完全に誤解してるよ。ホント、濡れ衣を着せるのは得意だよね(`Δ´)


「おまけに『闇の巫女』ですって? これは聞き捨てならないわ。あなた達、アレは『世界の敵』よ。討ち取った者は、特別な報奨を与えるわ」


 瑤が武装兵に命じるも、魔族を見て戸惑っている。


「そ……そう申されましても。我々の任務は、殿下らの護衛です。まさか魔族と戦えと!?」

「駒が死を恐れてどうする? して下層兵が命令に背くのか? ポーンは突撃あるのみだ」


 ジョルジュが、冷酷な命令を下す。人の命をなんだと思ってるの……!?


「クソォ! だから俺は言ったんだ! こんなロクデナシどもの下にいても、なんもいいことはないってな! 皆で亡命……ぐわっ!?」


 言い終わる前に瑤の光の矢が、兵士の腹部を貫いた。アンタ、何したか分かってるの!?


「いちいち五月蝿うるさいわね。命令に背いたり無断離脱したら、“処刑”するって通達したハズだけど?」


「貴様ぁ! もう皇族だろうが関係ねぇ! 殺られる前に殺ってやるッ!」


 一斉に瑤らに襲い掛かる武装兵。だが、空から降る光の流星群に貫かれ、ものの数分で沈黙した。瑤は明らかに『強く』なってた。


「おバカさんね。一兵卒ポーン風情が、女王クイーンに敵うとでも? ジョルジュ、問題ないわよね?」

「無論だ。処刑の手間が省けて、丁度よい」



「ギャハハハハッ! なんだどーした!? 頼んでもねーのに、急に仲間割れおっ初めてよぉ!? 丁度イイのは、こっちのセリフよ。闇の巫女に相応しいかどうか、見定めてやっから存分にヤリ合ってクレや! ニンゲンってオモシロッッ」


 笑い転げる魔族ら。言われなくても、そうするよ。流石の私も、腹に据えかねてるしね!



 ◆ ◆ ◆


 NEXT……ざまぁ回 ②

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