第20話 『町作り』

「いらっしゃいませ。『木組みの家』へようこそ。お二人様ですね? お部屋にご案内します」


 私は宿泊客の荷物を持って、部屋にお通しする。


 町長さんの家は娘さんが快復して、宿屋を再開出来た。私もお世話になりっ放しじゃ悪いから、お手伝いをしてる。


 宿屋は再開した当初こそ、あまりお客さんは来なかった。むしろこんな小さな町に、宿屋なんてあったのか? って驚かれたくらい。

 でも女将さんの手料理、私が薬草で『調合』したハーブティーなどが好評で、口コミで噂が広がり遠くから泊まりにくるお客さんもいた。


 主な利用者は、旅人に遠征中の冒険者や傭兵など。彼らによると、家に居るみたいな『安心感』があると言ってた。

 さらに私の薬草も好評で、飛ぶように売れた。再開一週間ほどで、順調な滑り出しだね^^



 ◇ ◇ ◇


「へぇ? じゃあ宿屋は好調なんだな?」

「うん。ロゼちゃんもお手伝いしてくれて、宿屋のマスコットになってるんだ」


 ジョッシュはいつも通り、鍛練に明け暮れてた。忙しい時は、たまに手伝ったりもしてくれる。力仕事とか、ホント助かるよぉ(´∀`)


「で? 肝心の『帰還方法』については、何か分かったのか?」

「それがねぇ……そもそも『異邦人』についての情報が、ほぼないんだよねぇ……」


 宿泊客の情報を小耳に挟んだけど、昔は異邦人ってそれなりにいたみたい。そのほとんどが『不慮の事故』などで、あまり長生きしなかった。


「フム? なら、情報網を『拡大』したらどうだ?」

「……というと?」


 ジョッシュによると、この町は今は小さいけど移住者が増えれば、発展する見込みがある。

 そうすれば色々な情報が入ってくるので、異邦人や帰還について分かるかもしれない、だって。


「成程ねぇ。確かに自然豊かだから、人が少ないのは寂しいよねぇ。ありがとジョッシュ、やってみるよ!」


 私はお礼を言って、早速何が出来るのか考えてみた。薬草は好評だから、鑑定スキルでなんか出来ないかなぁ?

 そうだ! 『特産品』とか作ってみよう。それなら遠くから来たお客さんが、お土産に買ってくれるかも(^ー°)


 私は早速、取り掛かった。善は急げだよ。



 ◇ ◇ ◇


 それから一週間が過ぎ、私が開発した特産品は大成功。お土産は飛ぶように売れて、中にはこの町が気に入って移住を考える人や、実際に越してきた人もいた。

 又、私が特産品の傍ら開発した『アイテム』もよく売れた。主に『護身用』の道具、武器などの『修復』キットだ。


 徐々に増え始めた人口。移住者の中には『専門家』も多数いて、農業や畜産を中心に町長らと町の発展を検討してた。

 そんな中、ついに『耳寄り』な情報が入ってきた。異邦人の中で、たった一人だけ帰還『直前』までいった人がいた。


 結局、その人は『諸事情』で還らなかったみたい。なんでも『任意』での帰還は膨大な『魔力』が必要で、なんと『地上』ではほぼ不可能。

 場所はかなり限られてる。この町から南に『歪み』の源泉があり、魔力が集中してる。


 そこなら、何か分かるかもしれない。でも懸念点もある。光の巫女ことはるかだ。噂によると前回の失敗で、王国内の支持率はかなり低迷してる。


 中には将来を悲観して、この町に移住する人もいるくらい。流石になり振り構わないでくるだろうねぇ(ーдー)

 もう一つは魔族だ。歪みの中心点は、魔族が活動するには都合がいいみたい。この前のヤツも、私たちを『探してた』って言ってし。


 幸い、ジョッシュも同行してくれる。今度こそ、ジョルジュを逃がさないと意気込んでた。


 私も『覚悟』を決めなきゃね。浄化の為に召還された私が、歪みを利用して帰還を目指すってのは、なんとも皮肉な話だけどね……。

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