第12話 『後継者』【瑤視点】
今日も浄化を終え、王城に帰る馬車に揺られていた。彼女には、常に皇子のジョルジュが付き添っていた。
「今日の浄化には、時間を要したな。ん? どうしたハルカ、浮かぬ顔をして」
「別に? いつまでこんな日が続くのかって、考えてたのよ。本当に私は、元の世界へ還れるのかしら?」
ジョルジュの役目は、主に瑤の愚痴を聞くことだ。また始まったなと思ったが、まぁ『いつものこと』だ。流石にもう慣れた。
「ハルカよ、すまぬ。なるべく貴女が速やかに還れるよう、我々も準備を怠っていない。この世界に貴女は必要不可欠なのだ。もう少し耐えてくれぬか?」
瑤は小さく嘆息した。『いつも』と変わらないやり取り。ジョルジュの言い分は抽象的で、具体性に欠けている。
「それはもう何回も聞いたわ。たまには『面白い』話でもして、私を楽しませてよ」
「そうだな……面白いかどうかは分からぬが、我が王国の『継承者問題』について話そうと思う。ハルカにも知ってもらいたいと思ってな」
別にそんな話は興味がないが、まぁ『退屈しのぎ』にはなると瑤は判断した。ジョルジュに「いいわ。聞かせて頂戴」と促す。
「私には『双子』の弟が
「双子の弟? そういえば、王城にはいなかったわね」
「ああ……ある『事件』が起きてな。皇族内の次期継承者を決める席で、
よくある『お家騒動』ね……と瑤は思った。
「幸い私が早く勘づき、大事には至らなかった。ジョッシュめは以前から計画を企て、父上を『事故死』に見せ掛け、亡き者にしようとしていた……」
「一応訊くけど、なぜ弟ぎみは『
「……恐らく私への
「ふぅん? でも大丈夫なの、そんな人物を野放しにして。報復の恐れもなくはないわよ?」
「ハルカよ、その点は心配ない。既に国内外に『手配』を施している。ジョッシュよ、なんて馬鹿なマネを……兄は悲しいぞ」
目頭を押さえるジョルジュ。今の話の『収穫』は、せいぜいジョルジュに弟がいると分かったくらいだ。
まぁ退屈しのぎにはなったけど、瑤のやることは変わらない。また明日から、単調な日々が続くと思うと憂鬱だ。
翌日、瑤は「気分が乗らない」と浄化をサボり、集落の一つがまた地図から消えた……。
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