第8話 『追放』

「え…………?」


 私は一瞬、何を言われたのか理解わからなかった。追放……それに『テロリスト』って何っ!?


「あらあら……まさかたった一月ひとつきで、問題を起こして追い出されるなんて。貴女の態度次第では、許してあげなくもなかったけど?」


 ハァ? それ『何も出来なかった』人が、言うことじゃないよね?


「己の罪と、向き合うことも出来ぬ戯者おどけものだったか。父上、英断に感謝します。このような『疫病神』がいると、我が王国は『破滅』驀地まっしぐらです」


 この……! 前から言いたい放題言って!


「ユウナよ。本来であれば刎頚ふんけいに値するが、大事には至らなかったので追放に留めておく」


「父上の温情に感謝せよ。自らの浅慮せんりょを恥じるのだな」


「私と皇子を始末すれば、“成り代われる”とでも思っていたのかしら? 貴女には、“安分守己あんぶんしゅき”という言葉がピッタリね」


 私は『理解』した。王国ここで私の味方など、一人もいないという事実ことに。メイド長はもちろん、大臣でさえ日に日に余所よそしくなった。



……結局、私はほとんど言い分を聞いてもらえず、その日のうちに荷物と共に放り出された。



 ◇ ◇ ◇


「お腹空いたぁ……それにすっごく寒い……」


 私はどことも分からない山の中で、かじかむ両手を擦りながら呟いた。『回想』を終えて、私は『現実』に引き戻された。


 会議の直後、着の身着のままで馬車に押し込められた。着替えは元より、食べ物だってロクにない。そもそも王国を追い出されて、どれくらいの時間が経ったのかもよく分からない。


 それほど私は生きるのに必死で、王国に居た頃とは別の意味で毎日が過酷だった。

 どうやって生き延びたかと言うと、私が唯一使える能力の『鑑定』をフル活用した。


 鑑定は手をかざし(直接、触れなくてOK)意識を集中するだけで、物の『特性』がスグに分かる能力だ。

 私は食べられる野草や茸などをつまみながら、なんとか生き永らえた。このままじゃ死んでも死に切れないよ。


 絶対に元の世界に還ってやる! それもはるかより先にね! あんなにコケにされたんだ。これくらいやり返さないと、私の気が済まないよ(`・ω・´)



……とはいえ、現実は厳しかった。


 いよいよ食べられそうな物は、採取しづらくなってきた。なんだか山全体も寂しいし、これも『歪み』の影響なの……?


……もしかしてこの世界って、私が思ってる以上に『深刻』かもね。そりゃ『異なる世界』の人に助けを求めるくらいだもの。


 その割には、私の扱いは『最低』だったけどね。要するに『危機感』がないんだな……って、改めて思った。


――キュルルルル。


 いけない……お腹が空くからなるべく思い出さないようにしてるんだけど、一歩歩く度にお腹が鳴る(/-\*)

 おまけにお風呂にも入ってない(川で水浴びくらいはしてるよ)から、髪の毛がベタベタで最悪だよぉ(ーдー)


「ん……?」


 私は何日かぶりに声を出した。遠くから、煙が昇っているのが見えた。もしかしたら、誰かいるかもしれない。

 私は疲労困憊こんぱいの体にむちを打ち、煙の方向に向かって歩き出した。

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