第4話 『豹変』

「あら? 私とは随分、差があるのね。彼女は本当に『選ばれし者』なの?」


 自分が『光の巫女』だと分かった瞬間、はるかさんは明らかに態度が変わった。


「ん? 二人は『友人』ではないのか?」


「冗談。知人どころか、私から見れば路傍ろぼうの石となんら変わらないわ」


……それ、思ってても普通口に出す?


「フム? 妙だな。では何故、ユウナはハルカと『同時』に召還されたのだ?」


「殿下……申し上げにくいのですが、ユウナ様は召還に『巻き込まれた』のではないのでしょうか?」


 え……? 何それ……要するに『手違い』だったってこと??


「巻き込まれた……そんな事がありるのだな。これは『汚点』だぞ、大臣」

「も……申し訳ございませぬ、殿下。召還には、万全を期したのですが……」


 あのさぁ……まず先に言うことないかなぁ?


「まぁいいんじゃない? 私の『付属品』になれたのだから。で? 具体的に私は、これから何をすればいいのかしら?」


「それもそうだな。何事も『失敗』はある。ハルカよ、今後のことだが……」


「……ちょっと待ってくださいっ」


 私が声を上げると、ジョルジュ皇子はムッとしながら振り向いた。


「ユウナよ、まだ何かあるのか? 我々は忙しくなるから、今後は極力関わるな」


「……何ですか、その言い方。私はどうなるんですか? すぐには還れないみたいだし、ちゃんと責任を取ってくださいっ」


 私が食い下がると、皇子は顔をしかめながら手を払った。まるで虫を追い払う仕草じゃん(=д= )


「分かった分かった。其方そなたの身の振り方は、大臣に一任しよう。それで異存はあるまいな?」


「異存はないって、納得できるわけないじゃないですか! そもそも瑤さんと、扱いに差があり過ぎます!」



「口を慎め、異邦人」


 ゾッとするほど、低い声を出す皇子。急な『豹変』に、私は背筋が凍った。


「本来、私は貴女が『対等』に話せる身分ではないのだぞ? 『選ばれし者』だと思っていたから、召還に立ち会ったのだ」


「皇子、こんな自分の立場すら弁えない者の相手をするだけムダよ」


 瑤(もう『さん』付けはいいよね、流石に)は腕組みをしながら、皇子と共に段上から私を見下ろした。


「扱いに差がある? 当然でしょ。貴女は『これまで』何かを成し遂げてきて? 私は文武両道で、常にトップをひた走ってきた。その『対価』を得られるのは、当然というより必然よ」


 瑤はこの上なく嫌味を込めて、畳み掛けにきた。


「だから、貴女は『分相応』の道を歩みなさいな。貴女がどこで何をしようが、露ほども興味がないわ。私の邪魔さえしなければね」


「己を『特別』だと思い込んでいたか。哀れな道化よ」


……何なのこれ。私が『何をした』っていうの!?


「皇子、もういいから行きましょう。ここまで懇切丁寧に説明して、理解できないようなら飼い犬以下ね。『無能』はやる事為す事、筆舌ひつぜつに尽くしがたいものがあるから、相手にしていたら切りがないわ」


 これ以上ないほど、ボロカス言いながら去っていく二人。私はしばらく、その場に立ち尽くすしか出来なかった……。

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