第2話 適性検査

「それは悪かったな。残念ながら、諸君らはすぐに元の世界へ還れないのだ」


 え…………? なんか聞きたくないこと、聞いたんですけど><


「何それ……どういうこと? いくら何でも無責任じゃない?」


 瑤さんが皇子に詰め寄ろうとして、慌てて大臣が割って入る。見た目によらず、アグレッシブな娘だなぁ(汗)


「貴女らは、この世界の『浄化』の為に召還された。いわば、“選ばれし者”たちだ」


「……どういう意味ですか?」


 ジョルジュ皇子によると、この世界は少し前まで、人間と魔族と呼ばれる種族が争っていた。

 魔王が討たれ、一応決着はついた。今、皇子らは『戦後処理』に追われている。ここで『問題』が生じた。


 なんでも魔族が地上に侵攻する際、“ゲート”と呼ばれるものから通ったみたい。本来、地上にはない現象で、あちこちで『歪み』が発生した。


 で、肝心の私たちを召還した理由。歪みを『修正』して、この『世界の均衡』を保ってほしい、と皇子に頼まれた。


「……話は分かったけど、なんで私? 他にいなかったの?」


 瑤さんが腕組みをしながら、皇子を睨んだ。なんとなく分かったよ、この娘の性格。あと私じゃなくて、“私たち”ね。


「先程も申したが、貴女らは『選ばれし者』だ。歪みを『修正』する力に長けている。我が王国で随一ずいいち、魔術に長けている大臣が言うのだから間違いない」


挨拶あいさつが遅れました。大臣のベルナー・ドギと申します。身の回りのサポートは、私めにお任せくださいませ」


 人が良さそうな白髪の壮年男性が、慇懃いんぎんに頭を下げた。この人は、話が通じやすそうだね。


「ふぅん? で、すぐ還れないというのは?」


「日に日に『歪み』が拡大していてな。地上の魔力が吸収されているのだ。故に、貴女らの『送還』に充てる魔力が不足……」


「要するに」


 皇子がまだ言い終わってないのに、瑤さんが割り込む。せっかちな娘だなぁ。


「歪みってのを修正すれば、還れるのね? それを先に言いなさいよ。具体的に私は、何をすればいいのかしら?」


「ハルカよ、君のやる気は買おう。だが、今日のところはゆっくり休んだらどうだ? まずは、この世界に少しずつ慣れていこう。貴女らの世界とは、色々と常識も異なるしな」


「それに貴女がたには、“適性検査”を受けていただきたいのです」


「「適性検査……??」」


 大臣に私たちは、揃って首を傾げた。


「左様でございます。貴女がたは『素養』があって召還されたのですが、それをより『明確』にしたいのです。お二方はそれぞれ何が得意で、どんな能力を秘めているのか」


 なんかよく分からないけど、異世界って大体こんな感じなの? すると瑤さんが、皇子らにある提案を持ち掛けた。



「なら、その適性検査とやらをすぐに行いましょう。それくらいなら、一日待たずとも出来るでしょ?」

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