第2話「可能性」
私は今、暗闇の中にいる。死んでいるのだろう。何も感じられないから、何もできない。試しに私は、腕を動かしてみた。もちろん、腕は動かない。動いたという感覚がないのだ。
そしてその時、私の中に、あることが浮かんでしまった。それは、私にとって想像をしない方が良かった。
「もしかしたら私は、”永遠に”このままなのかもしれない」
生きているうちは、”死”という終わりがあった。だがしかし、死後、終わりはあるのだろうか。もし、魂が肉体とは別に存在するとしたら、肉体がなくなったら、魂だけが取り残されるのかもしれない。そうだとしたら、私は永遠に、このまま、この暗闇の中に閉じ込められているのだろうか。
私は、パニックになった。体の感覚がないながらも、手足を動かし、暴れた。もちろん、手足は動いていないだろう。だが、こうして暴れるだけでも、少しは落ち着く。
ただ、そんな時、あることを思い出した。それは、昨日見た夢だ。その夢では、私が床を転げまわっていた。動いていたのだ。
「もしかしたらあの夢は、今の私なのかもしれない・・・」
一瞬、そう思った。確かに、その可能性は十分にある。私は、ただ感覚器に何か異常が起きて、五感を封じられただけかもしれない。
私は今、世界を感じることができていないだけで、実際にはまだ生きていて、私の手は、私によって動かすことができてるかもしれないということだ。
・・・いずれにしても今、寮の起床時間を過ぎているだろう。そして、みんなは、いつも起きれている私が起きていなかったとしたら、心配するはずだ。つまり今、私はみんなに起こされてるのかもしれない。
だとしたら、みんなに心配をかけるわけにはいけない。私はそう思い、動いているかわからない口を動かし、必死に声を出した。
「大丈夫だよ。ただ、何にも感じられないんだ。できれば、病院に連れて行ってくれない。」
私は、何度も、何度も、そう言い続けた。もちろん、返事は帰ってこなかった。だが、もしかしたら今、みんなが、救急車を呼んでくれているかもしれない。この声が、届いているかもしれない。
そう思わなければ、私は”生きる意味”を失ってしまう。ここは、ポジティブに考えなければいけない。
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