第20話「自覚」
初めてのキスでは呪いは解けなかった。
何度もあの柔らかい感触を思い出すかのように自分の唇に指先を添え、溜息を吐くようになった。
ディランに言われた言葉が忘れられない。
「ライアン・ブルックスがいるじゃないか。彼はどう見ても貴女に溺れているのに」
何度も思い出しては、それは駄目だと首を振る。自室で一人きりなのを良い事に、エレノアは何度も同じ事を繰り返す。
ライアンが帰ってくるまであと三日。何度か教会には行っているが、そこに現れるディランは今まで通り紳士らしく振舞い、エレノアや子供たちへの態度も変わらない。
送って行きますよとエヴァンズ邸まで送り届けてくれる時は素を出す様になったが、不思議と居心地は悪くない。
面倒だと言いながらも街の住民たちを気にしているエレノアの為に筆談にも付き合ってくれるし、無理に話せとも言わない。
少々口は悪いが、悪い人ではないのだ。
このまま仲の良い友人として付き合ってくれたら嬉しいなと思う程度には、エレノアはディランに心を赦していた。
ふと、部屋に飾った絵を見た。
いつも通り仲睦まじく寄り添う二羽の金糸雀。番なのだろうかと思いながら、右側の一羽に指を添えた。
此方の鳥が自分ならば、もう一羽は誰になるだろう。
呪いを解いてくれる相手なのか、いつか嫁ぐことになったら、その相手なのか。それともライアンなのか。
「何考えてるんだか」
ぽつりと零した声は、やはり酷い声だ。
金糸雀なんて呼べない酷い声で、美しい鳥に自分を重ねるなんて馬鹿馬鹿しい。
十八歳の誕生日まであと半年程。大好きな従姉の結婚式は更にその後だが、望んでいる通り結婚式で賛美歌を歌えるだろうか。
喜んで欲しい。笑って欲しい。優しくて大好きで憧れのサンドラの為に歌いたい。
姉になってほしいと駄々を捏ねた事がある。遊びに来たサンドラにしがみ付き、帰らないでと大泣きして困らせたこともあった。
遊んでくれる女の子が周りにいなかったのだ。優しく微笑み、絵本を読み、でたらめな歌詞の歌を歌うエレノアに「上手ね」と手を叩いてくれたのが嬉しかった。
歌うのが好きになったのはサンドラが沢山褒めてくれたからだ。
綺麗な声をしているから、教会で賛美歌を歌ったらきっと素敵。そう言われただけで、幼いエレノアは父に連れられて教会に通うようになった。
幼い子供には難しかったが、歌詞もきちんと憶えたし、シスターたちに付き合ってもらいながらメロディーも覚えた。
幼い頃は可愛らしいと褒められるばかりだったが、成長していくにつれ「美しい」「まるで金糸雀だ」と褒められるようになった。
それを手紙で報告する度、サンドラは便箋一杯に褒めてくれた。時折顔を合わせると歌って欲しいと言ってくれたし、言われた通りに歌えば素晴らしいと拍手をして褒めてくれた。
自慢の従妹、可愛い金糸雀。そう褒めてくれるのが嬉しかったのだ。
たったそれだけと言われるかもしれない。だがエレノアにとって、声と歌を一番に褒めてくれたのはサンドラだったのだ。歌よりも勉強を、淑女になる為に学ぶ事が最優先と言った親よりも、手放しで褒めてくれるサンドラに懐いた。
大好きな従姉が喜んでくれるのなら、望んでくれるのなら、忌々しい呪いを解く為に何でもするつもりだったのに。
ディランからのキスでは呪いは解けない。あと残り半年で一からやりなおすのは恐らく無理だ。何度考えても可能性が低すぎる。
なにより、ライアンを思い出す事が増えた。
部屋に飾られた絵を見る度に、贈り物の山を片付けた後にも届く手紙を読む度に、彼の声を思い出す。
低い声が、エリーと優しく呼んでくれる。
他に思い出せる話はいくらでもしてきた筈なのに、思い出すのはいつだって「エリー」と呼ぶ声ばかりだった。
今頃何処にいるだろう。あと三日程で帰ると手紙には書かれていたし、恐らくもう近くまで戻って来ているだろう。
戻って来てすぐに来てくれるだろうか。普段なら、長旅をしたからと風呂に入ってから現れる。きっと今回も同じだろう。
ひらりと手を上げながら現れて、「ただいま」と笑ってくれるのが好きだ。恋人でも作って、幼馴染よりも先に其方に行けば良いものを、ライアンはいつまでも恋人の一人も作らずエレノアの元に顔を出しに来る。
それを今か今かと心待ちにしている事を自覚しているのに、他の男に愛されたいと思えなくなっている事に気付いている。
気付いていて知らぬ振りをするのは難しい。自分の心を見て見ぬ振りをするのは無理な話だ。
魔女は言った。
愛されるという事は、貴女も相手を愛さなければならない。
その言葉に従うのなら、ライアンを思い浮かべてしまう自分が他の男に愛されるなんて無理なのかもしれない。
ふうと小さく溜息を吐き、エレノアは金糸雀の絵から視線を逸らす。
もう一度自分の唇に指先を添え、目を閉じた。
もしもあの時唇を重ねた相手がライアンだったなら?呪いは解けたのだろうか。
いつだったか声を漏らさぬよう口を塞いだ手の甲に、ライアンにキスをされた事を思い出す。
もしもあの時使用人が来なかったなら、あの時ライアンとキスしていたのだろうか。
目を閉じたまま、もしも使用人が来なかったらを考えた。
ライアンの唇は柔らかいのだろうか。かさついているのか、それともよく手入れをされているのだろうか。
そっと唇を重ねられたところを想像して、エレノアは声にならない声を漏らしながらその場に蹲る。
ライアンにキスをされたい。
そう思ってしまったのだ。ライアンが良い、呪いが解けなくても良いから、彼と一緒に居たい、隣に居たいと思ってしまっている事に気が付いたのだ。
いや、きっとずっと前から思っていたのだ。それを認めないように目を逸らし、ディランという男に目を向けていた。
なんて嫌な女なのだろう。浅ましくて愚かな女だ。恥ずかしくて堪らない。この羞恥心がありもしない妄想をしてしまったせいなのか、ディランに対する申し訳なさからくるものなのか分からないが、じんわりと熱くなった耳を押さえながらエレノアは呻く。
ライアンが帰ってきたら、どんな顔をして会えば良いのだろう。というか、自分は彼に会うつもりでいるのか。
自分で自分の考えている事が分からない。
会いたい気持ちは確かにあるのだが、この声を聞かれてしまった以上もう会いたくないという気持ちもある。
でも贈り物のお礼をしなければならないし、たった一度顔を見せてそれで終わりで良いだろうか。
いや、きっと一度会ってしまえば、もう一度会いたい声を聞きたい、名前を呼んでほしいと願ってしまうかもしれない。
ずるずると「あと一度、これで御終い」と引き延ばし、期限が来るのを待つだけになるかもしれない。
何度考えても堂々巡りだ。
それならいっそ、とびきりお洒落をして見た目だけでも美しく取り繕って彼の記憶に残ろう。
絶対に声を漏らさず、今まで通り彼から贈られたペンを声として、美しい姿だけを記憶に残して貰って消えるのだ。
そうだそうしよう。そうなれば準備をしなくては。
チリチリとベルを鳴らしながら、エレノアは自分の考えている事が支離滅裂で意味不明である事にも気が付かずに、衣裳部屋に仕舞ってあるであろうドレスを思い浮かべた。
◆◆◆
空に浮かぶ真っ白な雲。あの雲の上には天国があるのだろうか。
ぼんやりと空を見上げながら、エレノアは風に髪を躍らせる。
真新しい水色のドレスを着て、くるくると日傘を弄びながら、庭に置かれたベンチに腰かけて空を見上げてどれだけの時間が経っただろう。
今は時期では無い為緑色だが、春には真っ白な花を咲かせるユキヤナギをぼうっと見つめる。
あの向こうにはライアンが入り込んでくる塀の隙間があるのだ。ここで待っていれば、入ってくる所を見られるだろう。
ライアンよりも細身である筈のエレノアが詰まったあの隙間から、ライアンがどうやって滑り込んでくるのかを見たかったのだ。
帰ってくると手紙に書かれていた日は今日だ。ソフィーから朝方ライアンが帰ってきたらしいと聞いているし、風呂と朝食を済ませてすぐに来るのならそろそろ来ても良い頃だ。
仮眠を取ってから来る可能性に今更気付いたが、一度屋敷に入るのは何だか面倒だった。
くるくると回される小ぶりな日傘。
ドレスに合わせているのか、白地に水色のフリルで縁取られたそれは、長時間持っていると流石に重たい。
肩に長棒を預け、くるくると回す。あまり行儀は良くないだろうが暇なのだ。
ベンチの傍らに置いたポシェットには紙とペンが入っているが、何か書く気にもならない。絵を描くのも苦手だし、何か詩を書くにしても思い付かない。
まだかなと溜息を吐き、視線を真直ぐ前に向けた。ユキヤナギの向こうに何かの気配がしたのだ。
じっと其方を見つめていると、それがライアンである事はすぐに分かる。
一瞬動きを止めていたが、さっさと隙間に体を捻じ込んだライアンはあっという間にエヴァンズ家の敷地に入り込んできた。
それなりに鍛えていて、体の大きなライアンがあれだけすんなり隙間を抜けられるのは何故なのだろう。嬉しそうな顔をして駆け寄ってくるライアンにひらりと手を振りながら、エレノアはそっとその場に立ち上がる。
「ただいま、エリー」
『おかえり』
日傘を肩に預けたまま、エレノアは器用に文字を綴る。
それを読んだライアンは、やはり嬉しそうに顔を綻ばせて笑った。
「やっぱり似合ってる。俺の見立てに間違いは無かったな」
ふふんと上機嫌で鼻を鳴らし、ライアンは両腕を腰に当ててみせる。
少しおどけているのは、夜の海での出来事を忘れているとでも思わせたいのだろう。残念ながらあの出来事は忘れる事など出来ないし、ライアンに顔を見せるのはこれが最後のつもりだ。
「折角可愛い恰好してるし、これから街に行くか?」
その問いに首を横に振ると、エレノアはじっとライアンを見つめた。
幼い頃から何度も見ている顔。この先本当に会わなくなるのなら、この顔を目に焼き付けておきたかった。
これで最後だ。もう二度とライアンには会わない。そう決めて庭で待っていたつもりだった。
だが顔を見てしまえばそれは無理だ。
胸が苦しい。触れたい、話したいと思ってしまう。
苦しくなった胸をぎゅうと押さえつけ、エレノアは唇を噛み締めた。
「エリー、どうした?」
心配そうに顔を覗き込むライアンに、この気持ちをどう説明しよう。
自分でもよく分かっていないのに、どう説明すれば良いのか分からない。
どうしたいのか、どうしたら良いのかも分からないのだ。
「…エリー?」
泣きそうな顔をしているエレノアの頬に、ライアンはそっと手を添える。俯いていた顔をそっと上げさせ自分に向けると、にっこりと悪戯っぽく笑った。
「俺がいなくて寂しかったか?」
普段なら「馬鹿」と返すその言葉に、今日のエレノアはこくりと頷いて返す。
会いたかった。恋しかった。もう会わないと決めた筈なのに、寂しくてたまらなかったのだ。
「やけに素直だな」
想定外の反応だったのか、ライアンはぱちぱちと目を瞬かせる。
ほんのりと頬が染まっているのを誤魔化すように、自分の頬を指先で掻いた。
「あー…そう、呪いが解ける算段は?どうせ相変わらずバーンズの坊ちゃんと仲良くやってるんだろ?」
何でも良いから話題をと考えたのだろう。だが今その話はされたくなかった。
好きだと自覚してしまった今、心を寄せる相手から他の男の名前を出されたのだ。
他の男に愛してもらえそうかと問われているこの質問が、エレノアの胸を更に締め付ける。
ふるふると首を横に振り、「解けなかった」とだけ紙に書く。
書くだけ書いてはたと気付いた。
これを見せたら、エレノアがディランとキスをした事を知られる事になる。ディランからライアンには話すなと言われているし、好きな男に他の男とキスをした事を知られるのも何だか嫌だ。
ぐしゃりと手の中で握り潰したが、眉間に皺を寄せたライアンは少々乱暴にそれを奪い取った。
「…なあエリー、解けなかったって事は、試したんだよな」
じとりと睨みつけてくるライアンの目は冷たい。こくりと喉が鳴った。どう答えるのが正解なのか分からない。
首を横に振っても、ライアンは納得しないだろう。
首を縦に振っても、ライアンは幻滅するだろう。
嫁入り前の女が、好きでもない男と唇を重ねたのだから。
「答えろよ」
地を這うような声とはきっとこの事だ。
思わずびくりと肩が揺れた。睨まれているのが、見られているのが怖くて、エレノアは日傘に隠れるように体を縮こまらせる。
「エリー!」
握りしめていた筈の日傘が払いのけられる。地面に転がっていく日傘に視線を向けるが、それはすぐにライアンの手によって向きを変えられた。
両頬を挟まれ、怒りに満ちた顔のライアンを見つめ続ける事しか出来ない。
怖い。怒っているのが分かる。眉間に深く刻み込まれた皺なんて見たくない。笑ってほしかったのに、その笑顔を消し去ったのは自分だ。
「答えてくれよ」
ライアンの声は震えていた。悲しそうにも、苦しそうにも聞こえる声だった。
こくりと小さく首を縦に振った。そうするしかなかった。頭が真っ白で、誤魔化す事なんて考えられなかったのだ。
「何で…」
愕然とした表情で、ライアンは小さく言葉を落とす。
エレノアの頬に添えられたままの両手が震えているような気がした。
「何で…何で俺を頼ってくれないんだよ」
頬に添えられた手をゆっくりと降ろし、そっとエレノアを抱きしめるライアンが、耳元で低く掠れた声で囁く。
「俺じゃ駄目なのか」
耳朶に僅かに触れる唇がくすぐったい。何より抱きしめられているのが恥ずかしい。だが、居心地が良いと思うこの腕の中から出たくない。
「心から愛してくれる男からのキスで、呪いは解けるんだろ?」
その問いに、エレノアはこくりと小さく頷く。そっとライアンの腰に腕を回し、抱き返すような恰好になりながらの返事だった。
「エリー、試すだけでも良い。俺からのキスも受け入れてくれないか」
頼むよ。
懇願するような切なげな声で囁かれてしまえば、エレノアは何かを考える事もせずに頷いてしまった。
されたい、彼が良い。そう思っているのだから、断る理由も無い。屋敷の中から誰かが見ているかもしれないなんて小さな心配はしていたが、既に抱き合っているのだから今更だろう。
ゆっくりと離れた体。ライアンの左腕はしっかりろエレノアの腰を抱き、右手は愛おし気に頬を撫でる。
うっとりと愛おし気に見つめてくる目は、見慣れた紅茶のような色だった。
「目、閉じなくて良いのか?」
いつまでも見つめてくるエレノアに、ライアンはふっと笑う。
慌てて目を閉じたが、改めて言われると恥ずかしさが増した。
小さくライアンが笑った声が聞こえた。
「愛してるよ」
耳元で囁かれた声。びくりと肩を揺らすエレノアの唇に、温かくしっとりとした何かが触れた。
ドキドキと心臓が跳ねた。顔どころか全身が熱い。すぐに離れていこうとする唇が名残惜しくて、でも追いかける勇気などある筈もなく、エレノアはじっとライアンの目を見つめるだけだった。
「…何か、照れるなこれ」
そうだね。
そう答えたかった。
ひくりと喉が引き攣る。
熱い、熱くて堪らない。苦しい。喉元を押さえ、ヒューヒューと細い呼吸を繰り返すエレノアに、ライアンが慌てて体を支えた。
「エリー?どうした、エリー!」
何度も名前を呼び、誰か人を呼ばなければと慌てるライアンの腕の中で、エレノアはぎゅっと目を閉じた。
「落ち着きなさいよ」
耳に届く甘ったるい声。大嫌いな声がどうして今聞こえるのだろう。
腕の中にエレノアを閉じ込め、声の主から守ろうとするライアンに、主である魔女はにんまりと笑う。
「続きは後で幾らでも出来るわよ」
「魔女か!」
「はあいブルックスのお坊ちゃま、お元気かしら?」
ひらひらと手を振り、魔女はゆったりと二人の元へ歩み寄る。
来るなと威嚇されても怯むことなく、それどころか指をパチンとならして煙を生み出した。
細く伸びた煙は、ライアンの腕の中に収まるエレノアに絡みつく。
ずるりと腕の中から引き摺り出されるエレノアは、呼吸が苦しいせいでぐったりとしていた。
「おめでとうお嬢ちゃん。約束を果たしてあげる」
煙に捕らえられたエレノアの喉元を、魔女が掴む。ぐっと力を籠められ余計に苦しいが、それよりも更に熱くなった喉の方が不快だった。
「エリーを離せ」
魔女に殴り掛からんとするライアンだったが、面倒くさそうな顔をした魔女はあっさりとそれをいなす。魔法というのは便利なものだ。ちょっと指を動かしただけで、ライアンは見えない壁に阻まれたかのように近付けないのだから。
「だから、約束を果たしに来たって言ってるのよ」
「約束?」
「そうよ。十八歳の誕生日までに、心の底から愛してくれる男からキスをされる。呪いを解く為の条件はたった今満たされた」
パッと魔女の手がエレノアの喉元から離される。徐々に落ち着く呼吸と、体温が徐々に元に戻ってくれたおかげで、エレノアも落ち着きを取り戻した。
「一言目はよく考えなさい。私への恨み言は、また今度聞いてあげるから」
にっこりと微笑んだ魔女は、いつも通り煙と共に消えていく。
エレノアを捕らえていた煙も同時に消え、倒れ込みそうになった体はライアンがしっかりと支えてくれた。
「大丈夫かエリー?どこか痛むとか無いか?」
怪我はしていないか、何か異常は無いか。焦りながらも手早く確認するライアンに、エレノアはぼうっと視線を向けた。
そっと自分の喉元に手を添えた。言いたい事はもう決まった。
「ライアン」
目の前で心配そうな顔をしている、幼馴染の名前だ。
やっと呼べた。ずっと呼びたかったのだ。いつも呼んでいた彼の名前を。
「エリー…声、が」
目を見開き、声を震わせるライアンが、そっとエレノアの頬に手を添える。
その手に触れようとしたのだが、すぐさま腕の中に閉じ込められてしまえば、エレノアは大人しく捕まるしかない。
「良かった、本当に、良かった」
「泣かないでよ」
「泣いてない。もう一回呼んでくれよ、俺の事」
「いくらでも呼ぶわよ、ライアン」
「はは、エリーだ!俺の金糸雀が戻ってきた!」
「ちょ、やだ!」
大喜びしているのは分かった。分かったから抱き上げてぐるぐると回らないで欲しい。今にも落ちそうで怖いせいで、しっかりとライアンにしがみ付くしかないのだから。
やめろ止まれと叫ぶ声に、屋敷の中から使用人が顔を覗かせる。
誰もが皆、驚きと歓喜に打ち震えていた。
「旦那様と奥様をお呼びしろ!今すぐに!」
執事が叫んだ。何時までも離してもらえないエレノアだったが、流石に両親にこれを見られるのはご勘弁願いたい。
「ライアンいい加減にして!怒るわよ!」
「エリーは怒っても可愛いから」
「黙りなさい!」
ぎゃあぎゃあと大騒ぎになっている庭に両親が現れるまで、そう時間は掛からなかった。
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