第107話俊哉、疲れる

「俊哉、裸になれ」


日曜日の午後、浩一郎は俊哉に突然言った。


「突然なんですか」


「俊哉、お前は疲れている。見ただけでわかる」


俊哉は大丈夫ですと強がっていたが主任になって緊張で疲労しているのは自覚している。


「マッサージですか」


そうだ、と浩一郎さんはベッドに俊哉を横たわらせた。


「俊哉。お前の事は俺が理解している」


足裏からのマッサージだ。浩一郎さんが足裏を揉むと俊哉が悲鳴をあげた。


「やっぱり疲れているじゃないか」


足の裏を丁寧に指圧をされる。徐々に痛みは少なくなった。痛みに耐えていた俊哉だったがいつからか心地よくなっていた。足裏のマッサージだけでどれだけ時間を使ったのだろうか。


「よし、ここから足のマッサージに移る」


ふくらはぎから丁寧に揉む。浩一郎さんの大きな手がゆっくりと俊哉の身体をほぐしてくれる。


「マッサージで開業できるんじゃないですか」


「歳を取ったらそれも良いかもな」


俊哉は身体がゆっくりとリラックスをし始めているのを感じている。ゆっくり、ゆっくりと浩一郎さんはマッサージを続ける。


「浩一郎さん、気持ち良いです」


「その気持ち良い感覚に集中しろ」


俊哉は話す事もせずにゆっくりと目を閉じた。リラックスしていく自分の身体を感じている。


「やはり慢性的な疲労を感じているな」


浩一郎さんはそう言った。俊哉をうつ伏せにさせてお尻から背中へとマッサージを続ける。


「やはり硬い。以前の俊哉ならここまで硬くなかったはずだ」


浩一郎さんの手が腰から背中に移った。


「腰は丁寧にやらないんですか」


「腰は難しいんだ。だから背中に移る」


男とは思えない線の細さだな、と浩一郎は思っている。背中の経絡を丹念に指圧していく。


「浩一郎さん、気持ち良いです」


溜息と共に俊哉は言った。背中の指圧を終えると浩一郎さんはお灸の準備をした。


「今度はお灸ですか」


「ああ、背中の経絡にお灸をする心配するな、市販のものだから火傷はしない」


背中にお灸が置かれて行く。俊哉は数を数えてみたがあまりの多さに数える事を止めた。そうすると背中が温かくなりはじめた。


「浩一郎さん、背中が温かくなってきました」


「そうだろう、25か所もお灸をしているからな」


少し熱いかなと俊哉は思ったがその後心地よくなってきた。浩一郎さんはお灸を首までしようとしている。


「特に疲れているのは肩とクビだ。人間の頭部は3キロある。だから疲れが溜まりやすいんだ」


俊哉は身体が温まるのを心地よく味わっていた。お灸が冷えると浩一郎さんは取り除き、俊哉を座らせ、肩と首のマッサージを始める。


「お灸をするとある程度はほぐれるんだがまだ硬いな」


痛みを感じるほどの指圧は浩一郎さんはしない。むしろもっと強くしてほしいくらいだ。俊哉がもっと強くしてほしいと言ったが強い指圧はかえって悪いと強くしない。

マッサージが終わった。


「浩一郎さん、ありがとうございます。大分楽になりました」


「そうか、良かったな」


「あの、ちょっと言いにくいんですが」


「なんだ、俊哉」


「マッサージを受けているとエッチな気分になってきました。私を抱いてください」


よしわかった、と浩一郎さんは俊哉を抱きしめた。浩一郎さんは俊哉のうなじに優しく触れる。あっと俊哉は声を出して浩一郎さんの厚い胸板を抱きしめた。それからはもう互いに求めあい、我を忘れた。全てが終わった後、俊哉は言った。


「浩一郎さん、エッチが上手ですね。どこで学んだんですか」


「それは秘密だ」


俊哉は浩一郎さんが悦ぶところを知っている。


「浩一郎さん、こうして欲しいんでしょ」


「ああ、気持ち良いな」


浩一郎さんは素直だなと思った。俊哉は浩一郎さんをいじめた。快楽を伴ういじめ合いを夕方まで2人は楽しんだ。

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