第97話デート

俊哉は朝から機嫌がいい。今日は浩一郎さんとデートだ。お気に入りのコーデで気合を入れる。浩一郎さんはいつも通りA2の革ジャンだ。


「そういや毎日忙しくてこうして2人デートする時間が無かったな」


日々の仕事に追われて忙殺されていた2人である。


「浩一郎さん、お昼はどうします?」


「久しぶりに人が作るパスタが食べたい」


日頃料理をすると、作ってもらえるという事がとてもありがたい。例えお金を払ってもだ。


「じゃあお昼はパスタで。浩一郎さん、私見たい映画があるんですが観ませんか」


「オウ、久し振りの映画だな。良いよ、観よう」


2人はシネコンを目指した。道中の他愛も無いおしゃべりは楽しい。シネコンに着いた。時間はまだ余裕がある。チケットを買って、飲み物を買う。浩一郎はポップコーンを買った。


「浩一郎さん、そんな量のポップコーン食べれるんですか」


「俊哉も食べて良いぞ」


浩一郎さんは何時もビッグサイズを選ぶ。体型にも似て、大食漢である。座席を探して座った。休日でもあり、結構混んでいる。暗くなり、映画が始まった。ラブコメの作品で面白い。俊哉はふと浩一郎さんを見る。ポップコーンを食べながら映画に集中している所を見ると楽しんでいそうだ。映画が終わり、エンドロールが流れ始めると席を離れる客が増えて来る。


「浩一郎さん、映画、終わりましたよ」


「いや、まだ終わっていない」


浩一郎さんは残りのコーラを飲み干した。


「エンドロールが終わるまでまだ作品は終わらない」


俊哉もその言葉に従った。客は半分くらい減っていた。エンドロールが終わると突然終わっていたはずのシーンの続きが始まった。とんでもない大どんでん返しだ。


「わ、すごい終わり」


俊哉は席を立たないで良かったと思った。


「だろ?映画は最後までわからないんだ」


館内が明るくなり、2人は席を立った。


「よし、次はお昼ご飯だな」


2人はパスタ専門店へ行った。ちょうど店が混み始める寸前の時間帯だったので無事並ばず席につけた。


「浩一郎さんは何にします?」


「俺はこのタコのゴロゴロペペロンチーノだな」


「私はクリームパスタにします」


コーヒーのセットを頼んで2人はお喋りをした。浩一郎さんが言った。


「この後服屋に行きたいんだが」


「いつものお店ですね」


「ああ、欲しいものがあるんだ」


料理が運ばれてきた。


「おお、タコがたくさん入ってる」


浩一郎さん、大喜びである。


「大盛りにしておけばよかった」


バゲットも添えられている。2人は食事を楽しんだ。


「美味しかったな」


「はい、大満足です」


コーヒーを飲みながら2人はお喋りをした。店を出て浩一郎さんのお目当ての服屋に向かった。バーンストーマ―と言う。店は子供はお断りの硬派なお店だ。店内に入ると革の香りがする。浩一郎さんの誕生日プレゼントもここで買った。


「高坂さん、いらっしゃいませ。ゆっくりしていってくださいね」


店員から声を掛けられた。相当な常連客だ。


「ブログで半袖のスェットが入荷したと書いていたが有りますか」


「はい、こちらです」


リアルマッコイズの半袖スェットを買った浩一郎さんは上機嫌だ。


「良かったですね、浩一郎さん」


「俺の身勝手に付き合ってくれてありがとう」


2人はあてもなく歩いた。時計は4時を指していた。


「そろそろ帰ろうか」


「そうですね」


2人は帰路に着いた。スーパーに立ち寄って晩御飯の買い物をした。献立は鮭の塩焼きにスナップエンドウを茹でたもの、ネギと豆腐の味噌汁、生卵と納豆だ。




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