第87話涼子とゴルフ教室
涼子はゴルフの打ちっぱなしの施設に来ている。ネットでゴルフ教室を調べたらここが1番近かった。時間が近づくと人が集まって来た。
「お客様、大崎涼子様でしょうか」
はいと答えるとこちらへどうぞと案内された。涼子は左利きである事を伝えた。
「もちろん、左利きの方のクラブもございます」
涼子は両利きである。ペンや箸は右で、スポーツは左でする。体験教室には何人か参加者が居た。
「それでは体験教室を始めさせてもらいます」
女性のインストラクターだ。体験教室の参加者は男性、女性半々だ。まずは準備運動をして、さっそくドライバーを持たされる。何回か素振りをすると、さっそくボールを打たされた。
「なんでも実践です。どんどん打ってみましょう」
涼子はドライバーを握った。緊張感が出てくる。深呼吸をする。スイングする。初の打席で少し飛んだ。あんな小さなボールなのに打ち応えがある。もう1球打ってみた。最初よりはかなり飛んだ。
「大崎さん、ナイスショットですよ」
あれだけしか飛んでいないのになぜナイスショットなのかわからない。理由を聞いてみると
「ただ単に距離を稼ぐのではなく、癖の無い、まっすぐに打てることが大切なんですよ」
そうなのか、と涼子は思ったドライバーの他にアイアン、パターもやってみた。案外楽しい。楽しかった時間はあっという間に過ぎて、終了の時間になった。
「皆様、体験教室をご参加して頂き、ありがとうございました。いかがでしたでしょうか?教室入会もできます。本日はありがとうございました」
他の生徒が帰っても涼子は帰らなかった。他の客のボールを打つ音が心地よく響く。
「あの、教室に参加したいのですが道具はどうしたら良いですか」
「最初はレンタルで、慣れてきたらご自分の道具を買い揃えるので良いと思いますよ」
「では教室へ入会します」
涼子は入会を即決した。最近運動不足だしちょうど良い。家からも近いし問題ない。趣味らしい趣味も無かった涼子である。手続きを済ませてパンフレットを貰い、ゴルフ雑誌を買った。家に帰ってぱらぱらと雑誌をめくった。スイングの技術論や雑学が乗っていて意外と面白い。ゴルフウエアもお洒落だ。
「ゴルフは面白いかもしれない」
月曜日のお昼。4人は集合している。
「そうか、涼子ゴルフするんだ」
加奈子が言った。
「うん、私の性格的に向いているのかもしれない」
涼子は正直に言った。
「じゃあ三洋商事のゴルフ大会にも出れるかもしれないわね」
三洋商事では毎年、秋になるとゴルフ大会がある。景品も豪華で評判だ。部外との交流も有るので社員に人気のレクリエーションである。
「新しい出会いもあるかもしれないね。頑張りなよ」
みんなが賛成して応援してくれる。涼子は良い友人に恵まれていると思っている。
「みんな、ありがとう。いつまで続くかわからないけどやってみるよ」
お昼の休憩も終わって4人は解散した。
「浩一郎さんはゴルフしないんですか」
帰宅した俊哉は浩一郎さんに聞いてみた。管理職にはゴルフはつきものだ。しかし浩一郎さんは言った。
「俺は球技がダメなんだ。だってゴルフってあんなに小さなボールを打つんだよ。俺にはできないよ」
浩一郎さんにも苦手なものがあるんだな、と俊哉は思った。
涼子は本屋に居る。ゴルフコーナーに居る。初心者向きの本から専門的な本まで手当たり次第に買い漁った。しばらくしてゴルフ大会で大暴れする涼子を見られるのはもう少し先の話だ。
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