第81話川端さんに見られてる?
「ねえ、浩一郎さん」
俊哉は眠りにつこうとしている浩一郎さんに話しかけた。
「やっぱり全部川端さんに見られているのかな」
「なんだ、そんな事を気にしているのか」
俊哉は浩一郎さんの胸板に顔を
「やっぱりエッチな事している時も見られてるのかな」
「いや、案外見ていないと思うぞ」
どうしてそんな事が言えるんですか、と俊哉がたずねると浩一郎さんは
「寝室で川端さんの気配を感じた事が無い」
ああ、そう言えばそうだ川端さんは2人の前に現れる時、なんとなくそこに居る気配がする。
「じゃあ見てもらえるような事をしようか」
「浩一郎さんの馬鹿」
2人はぐっすりと眠りについた。リビングのテーブルにお茶とお菓子が置いてある。2人が欠かさない川端さんへのお供え物だ。
「あのお2人は優しい」
川端さんは
「年度末明けの休日は
「ようやく落ち着いて仕事ができますね」
今日の朝食はご飯だ。卵焼きにネギと豆腐の味噌汁、海苔とシンプルな朝食。
「そうだ、俊哉。そろそろブラックバスのシーズンだぞ」
「釣り、行きたいですね」
「よし行こうか」
2人で話をしていると川端さんが現れた。
「川端さん、おはよう。お茶を淹れますね」
浩一郎さんが椅子を引いてあげて川端さんはそこに座った。
「昨日は何も無かったのですね」
「川端さん、見てましたか」
「はい」
ほらもう浩一郎さん、と俊哉は浩一郎さんに抗議した。
「全部見られてるじゃないですか」
「まあ良いじゃないか。見られて困るわけでも無し」
俊哉と浩一郎の口喧嘩が始まった。川端さんは交互に2人を見て言った。
「それではお2人の夜の営みの時は見ないようにします」
「それはありがたい」
浩一郎は礼を言った。
「もう、浩一郎さんは調子が良いなあ」
俊哉はふくれた。
「よし、じゃあ釣りに行こうぜ」
2人は道具を持って出掛けた。川端さんは見送った。すうっと庭に面する縁台に座った。庭は俊哉と浩一郎が苦心して雑草を抜いて綺麗にしている。浩一郎さんがバラを植えたいと言っていた。川端さんは庭に咲くバラを想像した。2人が仲良く手入れをしているのが想像できる。
「面白い2人」
川端さんは消えた。
2人は釣りから帰って来た。俊哉は3匹釣って浩一郎さんは1匹も釣れなかった。
「俊哉は釣りが上手くなったな」
「浩一郎さんが釣れないのは珍しいですね」
「まあ、そんな時もあるさ」
道具の手入れをして2人が落ち着いた頃には午後2時を過ぎていた。休日は時間が過ぎるのが早い。
「休日もあっという間に終わりますね」
「それだけ充実した1日だったという事だよ」
晩御飯の準備は浩一郎さんだ。食事作りは交代でしている。俊哉はテーブルで簿記の勉強をしている。すると隣の席に川端さんが来た。俊哉は椅子を引いてあげて、熱いお茶を淹れて川端さんの前に出した。
「いま夕食前なのでお供え物が無いんです。すみません」
俊哉がそう伝えると川端さんは言った。
「夕食まで居ても良いですか」
もちろん、良いですよ、と俊哉は言った。何より驚いた。いつもなら短時間で居なくなってしまう川端さんが長居したいと言う。
「今日は手抜き晩御飯だよ」
ソバメシを浩一郎さんが運んで来た。小ぶりなお皿にも盛りつけられている。
「はいこれは川端さんの分」
3人で楽しい晩御飯となった。浩一郎さんがくだらない事を言うと俊哉は笑った。
川端さんはそれを静かに聞いている。
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