第76話引っ越し準備
叔父の源一郎さんからリフォームが済んだと浩一郎さんに連絡があった。俊哉は少しづつ荷造りをしていたので問題無かった。俊哉は両親に同棲の事は話をしているし、許可も得ている。
「寂しくなるね」
妹の美紀が言った。
「家は広いから、遊びに来ると良いよ」
俊哉はそう言った。積み上げたダンボールには内容がマジックで書いてある。やっぱり服が多い。
「いつかは断捨離しないといけないな」
でも新居には広い収納スペースが有るので問題は無いだろう。浩一郎さんに電話をするとやはり荷物が多いと言っていた。
「運べるものは自分で運んで、家電だけは引っ越し業者に頼むよ」
浩一郎さんの引っ越し準備は着々と進んでいる。ただ、俊哉には心に引っ掛かる事が有った。幽霊が出る、その事だ。
「しかし私も霊感無いからねえ」
考えてばかりでも仕方が無い。それは浩一郎さんも言っていた。
「まあ出たらお供え物でもしてあげよう」
浩一郎さんもあまり深く考えていない。
「よし、引っ越し第1便隊出発だ」
浩一郎さんの荷物と俊哉の荷物、半分ずつトラックに載せてある。家に到着して2人は自分の部屋に荷物を運んだ。浩一郎さんは自分の部屋が2部屋は欲しいと言った。俊哉も2部屋欲しい。それでも部屋は余る。
「まあ残った部屋は自由に使えば良いじゃないか」
俊哉さんは和室を茶室にしたいと言う。それも良いな、と俊哉は思った。
「浩一郎さん、見てください、最新の洋式トイレですよ」
「ああ、家で1番お金が掛かったところだしな」
電気のアンペア増加や洋式トイレのための配線などはおじさんが費用を捻出してくれたと言う。
「流石に昭和の電気配線は怖いな」
結構手間が掛かったと浩一郎さんは言った。
「浩一郎さん、見てください。ここから庭に出れますよ」
「ああ、そこは俺も気になっていた所だ」
ガラス戸を開くと庭に面している。庭は雑草が生い茂っているが、浩一郎さんが手入れをすると言っていた。
「まあ、まずは家の中からだ」
丸1日をかけて荷物の運搬は済んだ。まだ住める状態ではないけれど、ワクワクする。
「駅からも近いし、治安もそんなに悪くなさそうだ。当たりだな」
浩一郎さんも満足している。
「よし、明日はホームセンターに行って買い物と掃除だな」
はい、と俊哉は答えた。
「帰って料理するのも面倒くさいな。外で食べよう」
「料理道具はどれくらい運んだんですか」
「大半は運んだよ。コンロはまだ有るし必要だからな」
電気、ガス、水道も叔父さんが手続きしてくれた。
「叔父さんには感謝するしかありませんね」
「でもなあ、なんか気になるんだよ」
浩一郎さんが気になる事を言ったので俊哉は聞いてみた。
「やっぱり出るのかね、幽霊が」
「俊哉さん、怖いんですか」
「怖くは無いが、気にはなるな」
俊哉は堂々と言った。
「幽霊なんて科学で解明されていませんし、幻覚ですよ」
「俊哉は冷静だな」
幽霊なんか怖くないですよ、と胸を張った。浩一郎さんは頼もしいな、と笑った。
「じゃあ今日はこれくらいにしておこうか」
「そうですね、きりの良い所で終わりにしましょう」
「缶コーヒーでも買って来るよ」
浩一郎さんは家を出た。見送って帰って来るまで拭き掃除をしようと振り返った時、驚くべき事が起こった。
私が私を見つめている
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