第17話6月のセレナーデ
日差しが強くなったかと思えば直ぐに梅雨空になり、雨が降る。土曜日、俊哉は先輩の家でお泊りだ。今日は運が良いのか晴れている。日差しが夏を含んでいる。
「オウ俊哉。さあ中に入って」
ドライブにも飽きて最近はずっと俊哉が先輩の家に押しかけている。先輩は嫌な顔をせずに迎えてくれる。先輩の家が好きなのだ。それに俊哉には先輩の本棚で読み続けている本がある。リチャード・ブローティガンの『芝生の復讐』だ。先輩が言うには詩だそうだが、俊哉には短編集に思える。お気に入りだ。ソファで2人、座っているが好きな事をしている。先輩はうつらうつらして今にも寝てしまいそうだ。
「先輩、眠そうですね」
「ああ、やることが無いしな。ボーっとしていると眠くなる」
先輩のコーヒーはアイスコーヒーになって、もうどれくらいになるだろう。5月も暑かったから冷たいコーヒーになってしまったのだ。部屋に流れている音楽はジャズになっている。
「俊哉は良い香りがするな」
俊哉は先輩に田宮と呼んでくれるな、俊哉と呼んでほしいと言った。よしわかった、と先輩は俊哉と呼ぶようになったが何故か俊哉は先輩のままだ。
「それで綺麗な黒髪だ」
「褒めても何も出ませんよ」
出なくて良いよ、と先輩の手は俊哉のうなじへ差し込まれた。あっと俊哉が声を出した。
「うなじが弱いんだよな、俊哉は」
俊哉は本を置いて先輩の首に手を回した。
「先輩はエッチですよね」
「普通だと思うけどな」
2人は抱擁した。
「俊哉、好きだ」
「先輩、私もです」
「でも今はここまでです」
俊哉は先輩を押した。
「この先は夜で」
なんだ、良いムードだったのに、と先輩は不満気だった。
「今日は私が晩御飯作りますから、先輩はゆっくりしてくださいね」
「うん、楽しみにしている。で、何を作るんだ」
「和風ハンバーグです」
良いじゃないか、と先輩は喜んだ。よし、楽しみに待つか、とアイスコーヒーを飲み干した。おかわりを作るのだろう、準備を始めた。
「料理の腕は先輩に負けませんよ」
「ほう、強気だな」
俊哉は子供の頃から母親の料理を手伝って来た。料理も好きなのである。
「もうしばらくしたら夏だなぁ」
先輩はソファに寝転びながらそう呟いた。
キッチンから良い匂いがしてきた。
「良い匂いがしてきたよ」
「お手伝いは無用ですよ」
てきぱきと俊哉は動く。それを先輩は見ている。
「いただきます」
食事の時間になった。俊哉はハンバーグに大根おろしを乗せてポン酢で食べるようにした。先輩は食べながら
「うん。美味しいぞ」
「サラダもちゃんと食べてくださいね」
キャベツの千切りとトマトとキュウリのごく普通のサラダだ。
「野菜も夏野菜になったな」
先輩は良く食べる。ご飯は4合も炊く。美味しい、美味しいと嬉しそうに食べる。俊哉はそんな先輩が好きだ。
「ご馳走様でした」
後片付けは2人でやった。
「俊哉、先にお風呂へ入りなよ」
うん、と俊哉は答えた。着替えの入っているバッグをお風呂場に持ち込んだ。今日は勝負下着を用意した。黒の総レースのブラとパンツ。お風呂から上がるとそれを装着してTシャツとホットパンツを履いた。いつもの部屋着だ。
「よし、俺も入ろう」
入れ替わりに先輩が風呂に入った。しばらくすると先輩はパンツのみで出て来た。
「先輩、ほとんど裸じゃないですか」
「気持ちが良いんだ、問題無い」
先輩はソファに座っている俊哉をひょいとお姫様抱っこをした。
「何するんですか」
「もう我慢できない」
もう、先輩っていう人は子供みたいだな、と俊哉は思った。そのまま寝室まで2人は行った。優しくベッドに降ろされて、あっという間にTシャツとホットパンツを脱がされた。
「すごい、黒の総レース。勝負下着だな」
「先輩、部屋が明る過ぎます」
「それは悪かった」
ルームライトを消してサイドランプに切り替わった。と同時に先輩は俊哉に何をしたのか、あっと声を出したそれからはもう、2人は激しく求めあった。
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