6.決着〈最終話〉
「使用人達の証言が山ほどあるよ。君達が使用人達に温情の有る態度だったら、少しはかばってくれたのにね」
リカルドは薄く笑いながら続けた。
「君達が侯爵家に入れたのは家族としてじゃないんだよ」
リカルドはエズメとヴァネッサを連れて、サンデール侯爵家へと帰った。
そこでミンナも呼び出して、ミンナとヴァネッサの二人を父のアンドレアが帰って来るまで屋根裏の物置に閉じ込めた。
そしてエズメとマキシンに事の経緯を説明した。
ミンナは侯爵夫人レナーテが亡くなると、自分の娘がサンデール侯爵の娘だと吹聴し始め、それを聞き及んだアンドレア・サンデール侯爵が醜聞を避けるために"囲った"形をとった。
確かに昔、ミンナと関係を持ったことがある。しかし時期が合わないのだ。
その上、サンデール侯爵家特有の強い風と雷の魔法の特性どころか、魔力もない。
アンドレア・サンデール侯爵はヴァネッサが自分の娘でないことを確信した。
"囲った"ことではミンナの気がおさまらず、サンデール侯爵家に入れるよう、やいのやいのせっつかれた。
アンドレアは手元に置いた方が醜聞を避けられると判断し、屋敷に部屋を与えた。それだけだった。
ミンナは自分が後妻としてサンデール侯爵夫人になったと思いこんだが、籍は入っていなかった。
その後、事実関係を調べるために"商談"と称して息子のリカルドと調査に出た。
手始めに神殿で親子関係を調べた。案の定、ヴァネッサとアンドレアには親子関係はなかった。
そこでヴァネッサの父親を捜し始めたのだ。
しかしそこへ、エズメや家令や執事からの手紙が届いた。
エズメの父は、送られてくる手紙でのミンナとシャルロットことヴァネッサの行状に、怒り心頭していた。
エズメとマキシンの部屋を取り上げ、納戸に住まわせたこと。
ほぼ全ての持ち物を取り上げたこと。
自分がいない席では食事をほとんど食べさせないように謀ろうととしたこと。
エズメに下働きの仕事をさせていたこと。
アーネストと別れさせようとしたこと。
しかしアンドレア・サンデール侯爵は、エズメの聡明さを信じていた。自力で抵抗してマキシンを守るだろうと。
リカルドに三日遅れて帰ってきた父アンドレアは、ミンナとヴァネッサを糾弾した。
詐欺罪で役人に突き出そうとしたが、幸い全ての権限は家に残されたエズメと家令に託されていたので被害はなかった。
結果、ミンナとヴァネッサは幾ばくかの手切れ金と共に、サンデール侯爵家を追い出された。
アンドレアはエズメトマキシンを抱きしめて謝罪した。
そして使用人達に感謝した。
アーネストはエズメの元に駆け付けて、異変に気付きながらも何もできなかったことを謝罪した。
「いいのです。わたくしが全てを隠していたのですもの」
「だって信じていましたもの。お父様もお兄様も、アーネスト様も」
エズメはマキシンを抱き寄せたまま言った。
「それに」
にっこり笑って続けた。
「ここはわたくしの家ですわ!!」
ここはわたくしの家ですわ!! チャイムン @iafia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます